雇用契約書は電子化できる?注目される背景や効果、懸念点などを徹底解説!

雇用契約書を電子化することで、採用業務の効率化やコスト削減、コンプライアンス強化につながります。
しかし「電子帳簿保存法への対応は?」「新しいシステム導入に不安がある」など不明点や懸念点をもつ企業も多く、完全電子化に対応している企業は多くはありません。
この記事では、雇用契約書の電子化が注目される背景や効果、懸念点について解説します。電子化する流れも紹介していますので、ぜひ参考になさってください。

そもそも雇用契約書は電子化できるのか

2019年4月から労働条件通知書の電子化が解禁されたことで、雇用契約書の電子化が可能になりました。労働条件通知書は、雇用する企業側が入社者へ労働条件の明示に用いられる書類です。電子化によりFAX・電子メール・SNSのDMで明示できます。
しかし、雇用契約書の電子化には入社者の合意が必要です。また、印刷が可能な状態で作成・送付しなければならないため、現状は電子メールによる送付に限られています。
要件はありますが、電子化によって雇用契約をオンラインでできるようになったため、格段に入社手続きがしやすくなっています。

雇用契約書電子化が注目される背景と現状

雇用契約書の電子化が注目される背景には、リモートワークの普及や電子帳簿保存法が影響しています。それぞれくわしく解説しましょう。

リモートワークの普及が影響している

新型コロナウイルス感染症の流行拡大の影響もあり、リモートワークが普及したことで雇用契約書の電子化が注目を浴びています。
従来の雇用契約書は印刷をして郵送するといった工程があり、遠方に住む入社者の手続きには書類の郵送から返送まで時間を要していました。書類が返送されるまで企業側は手続きを進められないうえに、入社者数が多いと負担も大きいものです。
電子化することで、企業側は負担を大きく削減できるうえに、ペーパーレスなので書類を管理する必要もありません。雇用契約書の電子化は業務のDX化にもつながることから、多くの企業から注目を浴びています。

雇用契約を完全に電子化している企業は少ない

ペーパーロジック株式会社が実施した「『雇用契約の電子化』に関するアンケート調査」では、国内企業で雇用契約の完全電子化に対応している企業は約20.8%と少ないことがわかりました。すべてのプロセスを電子化せずに、一部を電子化している企業は36.8%と半数もありません。
雇用契約書の電子化は従業員数が多いと手間がかかるものです。従業員1,000人以上の大企業のみ対象とした調査※2でも、雇用契約書の電子化導入率は約44.6%と半数以下となっています。
これらのリサーチ結果からもわかるように、現状は完全電子化に対応している企業は少ないですが、今後は電子帳簿保存法への対応も含めて電子化が進んでいくと思われます。

※2 ペーパーロジック株式会社「有償電子契約利用の課題に関する実態調査

雇用契約書を電子化して得られる効果

雇用契約書を電子化することで、契約業務の効率化やリモートワーカーへの対応、コンプライアンス強化、コスト削減などの効果を得られます。それぞれくわしく解説します。

契約処理の手間や負担を減らせる

雇用契約書の電子化により、紙の書類を郵送しなくてもよいため、雇用契約に関する業務の効率化を図ることができます。
紙の雇用契約書を用いて契約を結ぶ場合、印刷をして郵送するなど手間がかかります。電子化をして、すべてオンラインで完結できるようになると、雇用契約に関する業務の効率化を実現できます。
また、企業によっては郵送ではなく、採用者に来社をお願いする企業もあるでしょう。
電子化に対応できれば、出社してもらわなくても、スマートフォンでも契約を結ぶことが可能です。契約締結のために日程を調整しなくてもよいため、人事担当者はもちろん入社者の負担を大きく削減できます。

スピーディな採用が可能になる

雇用契約書を電子化することで、採用業務そのものを効率化できます。
紙の書類だと契約書の作成から印刷、郵送、押印された書類の返送などタイムロスが発生します。
入社者が書類の押印や返送に遅れたり、スムーズに郵送できなかったりすると数ヶ月かかることもあります。契約を結ぶまでの時間がかかるのは大きな問題です。
電子化に対応すると、最短即日で契約を結ぶことができます。採用人数が多い場合、データベースで契約を一元管理できるのでおすすめです。採用活動だけでなく、契約更新をするときもスピーディーに対応できます。

完全リモートワークに対応できる

紙の雇用契約書で入社手続きをする場合、入社日より前に出社を依頼して書類の提出を求めたり、郵送したりなど入社者や担当者ともに負担が大きいものでした。
とくにリモートワークを導入している企業では、契約のためだけに出社を依頼するのは両者にとっても負担になります。 電子化に対応することで、書類の印刷や郵送しなくても契約を結ぶことが可能です。また、雇用契約書だけではなく、これから業務で使用するさまざまな書類もオンラインでやり取りできるようになるため、完全にリモートワークができる環境を構築できます。

コンプライアンス強化に繋がる

雇用契約書の電子化は、コンプライアンス強化につながるメリットがあります。
紙の雇用契約書は紛失や更新忘れなどのリスクがあるため、管理にも気を遣うものです。電子化だとデータベースで管理できるため、紛失や更新忘れを防止できるうえに物理的な盗難のリスクもありません。
データベースへ不正アクセスされるおそれがありますが、電子契約システムの多くは電子データへのアクセス権限やパスワードの設定などセキュリティ面の対策が可能です。
そもそも電子契約システムはこうしたリスクを防ぐために厳正な基準をクリアしているため、コンプライアンスの強化につなげることが可能です。

コストを削減できる

紙の雇用契約書を使用する場合、印刷や郵送などの費用がかかりますが、電子化すればそのような費用はかかりません。また、契約書類の保管には鍵のかかるキャビネットなどが必要です。従業員数が多いとそれだけキャビネットも大きくなりスペースが必要ですが、電子化ならデータベースに保管されるためオフィスも広く使えます。
また、雇用契約書では採用する従業員ごとに異なる労働条件の記載が必要です。電子化することでこうした人件費も削減できます。

雇用契約書を電子化する際の懸念点

雇用契約書の電子化を進めるときは、現行の法律を確認しておく必要があります。また、電子契約サービスの導入費用や毎月かかる利用料、サポート体制などスムーズに導入するには、こうした懸念点を払拭しておくことが大切です。雇用契約書を電子化するときの懸念点について解説します。

法改正に対応する必要がある

雇用契約書の電子化にあたって気を付けてほしいのが、2023年12月31日に猶予期間が終了する改正電子帳簿保存法です。2022年法改正で電子取引による電子データ保存が義務化されました。
2024年1月以降の電子取引はすべて電子データでの保存が義務付けられています。電子帳簿保存法はこれまで複数回改正が行われているため、今後も法改正によってルールが変更される可能性も考えられます。
雇用契約書は労働基準法とも関係があるため、今後あらゆる法改正にも対応できる電子契約サービスを選ぶことがポイントです。

電子契約サービスの利用料がかかる

電子化するにあたって導入する電子契約サービスは利用料がかかります。
電子契約サービスは、おもにインターネット上のサーバーにデータを保存するクラウド型として提供されています。そのため、初期費用とあわせてサーバーを維持するための月額利用料がかかることが一般的です。
また、従業員数が多い企業や長期間利用すると保存が必要なデータも増えるものです。課金制でデータ保存料が必要なケースもあります。予算にあわせた電子契約サービスを選んでください。

新たな業務を覚える必要がある

雇用契約書の電子化など新しいサービスを導入するときは、操作方法など新たに学ぶ必要があります。
基本的に複雑な操作を必要とするサービスはほとんどないため、これまで業務をこなしていた人ならすぐに操作に慣れるでしょう。
しかし、導入直後は操作以外にも操作以外のトラブルが考えられます。サポートが充実したサービスを選ぶことで、導入後の懸念点を解消できます。

入社者や従業員への説明が必要になる

電子化を導入することで体制に変更があるときは、在籍する従業員に説明が必要です。
電子帳簿保存法では従業員が経費申請をする際の領収書も対応となります。領収書の原本があるときは、スキャンした電子データ以外にも領収書の原本の保存が必要です。
電子化による対応の説明は入社者にも行います。入社者によっては雇用契約書の電子契約に対応する端末をもっていないケースも考えられるためです。
所有する端末を事前に確認して、電子契約に対応が可能か確認しておきましょう。

雇用契約書電子化にあたって企業が用意すべきもの

雇用契約書の電子化にあたって必要なものは以下の3つです。

  • 電子証明書
  • 電子署名が付与可能なシステム
  • 認定タイムスタンプ

電子証明書は、本人であることを電子的に証明するもので書面取引の印鑑証明書のようなものです。併せて電子署名は電子化された書類に付与される電子的な署名です。電子証明書と電子署名はどちらも、文書の改ざん防止のために必要なものです。
また、改ざん防止の面から認定タイムスタンプもあったほうがよいでしょう。認定タイムスタンプは文書作成時に「誰が・何を・いつ」作成したのがタイムスタンプを付与するものです。

国税関係の書類でスキャン保存が必要なものは認定タイムスタンプの使用が必須ですが、改ざん防止の面から雇用契約書の電子化において、電子証明書と電子署名とセットで用意しておいたほうがいいでしょう。

雇用契約書を電子化する流れ

雇用契約書の電子化をスムーズに進めるには、自社の業務フローにあわせた電子契約システムを選ぶことがポイントです。雇用契約書を電子化する流れについて解説します。

雇用契約書に関する自社の現状を把握する

まずは、入社手続き業務を担う人事や総務などの業務フローを把握します。雇用契約書の作成から契約締結まで、どのように取り組んでいるのか確認してください。現在、どれくらい時間とコストがかかっているのか、可視化することがポイントです。
現状を把握できることで、すべての業務を電子化しなくても効率化を図れる方法があるかもしれません。
自社の現状を把握したうえで、どのように対応するかを決めることができます。

電子化による効果を予測する

つぎに雇用契約書の電子化によって、どのような効果やメリットが得られるのか効果をシミュレーションします。可視化した業務フローで、各工程の作業時間が明確になっているはずです。電子化により対応が不要と判断した工程は丸ごと削減できます。
雇用契約書の電子化には、PDFデータをメールで送付する方法とデジタル署名サービスの利用、電子契約サービスの導入などがあります。どのようなシステムを導入するとよいのかも、このときに検討するとよいでしょう。

無料トライアルを試してみる

気になる電子契約サービスをいくつか選んだら、無料トライアルで試運転して使い勝手を確認しましょう。
本格的に導入する前に、どのくらい作業工数がかかるのか、スムーズに操作できるかなど実際に使用することで、導入後の効果を予測しやすくなります。
削減できる工数が明確に数値で提示できるため、決裁者に対して導入に向けた理解を得られる稟議書の作成が可能です。
電子契約サービスの無料プランには、一部の機能や契約書の送信件数が制限されているものもあります。自社が使用したい機能が使えるかどうか確認してください。

導入するシステムを決めたら社内周知・説明を行う

導入したいシステムが決まったら、社内稟議の承認を得て、雇用契約書の電子化を本格的に進めていきます。導入にあたって影響を与えそうな社内規定などがないかも確認が必要です。
システムを利用する全従業員に対して周知し、システムの操作方法や変更となる業務フローについて事前説明会を開催してください。
社内のサポート体制の整備やFAQの作成なども導入後のトラブルにも備えておくと安心です。

改善すべき点を解消しながら実用を続ける

電子契約システムは導入後、実際に使い始めるとつまずきやすい操作やよく寄せられる質問など改善すべき点が見つかります。
また、予測よりもうまく工数が削減できていないなど、新たな課題も出てきます。
サービスのサポートもうまく活用して課題を解消しながら、運用を続けましょう。

まとめ:雇用契約書の電子化で採用業務を効率化させよう

雇用契約書を電子化することで、書類の作成や郵送、返送まちなどのコストを削減することで採用業務を効率的にまわすことが可能です。ただし、電子化には電子証明書や電子署名、認定タイムスタンプなど用意しなければならないものもあり、セキュリティ面でも不安が多いと思います。
『人事労務コボット』は契約書への電子サインやマイナンバー管理など、人事労務業務の電子化に対応できる機能を備えています。雇用契約書の電子化にも対応しているため、入社手続き業務の効率化や雇用側、雇用される側の作業時間の削減が可能です。