労務の仕事内容

労務担当者は、勤怠管理や給与計算、年末調整など、労働に関連する業務を従業員の代わりに行います。従業員が安心して働ける環境を整備することが役割です。

しかし、人的リソースに余裕がない場合、総務や人事と兼任しているケースが少なくありません。今回は、労務担当者が抱えている課題や効率化する方法について解説します。

労務とは

労務担当者

労務とは、勤怠管理や給与計算など、労働に付随する業務全般を指します。企業経営に重要な4つの経営資源のうち、「ヒト」に関する業務です。

各種手続きに必要な書類作成や計算業務、情報管理を代行します。従業員が働きやすい職場環境を整備することが労務の役割です。

労務の仕事内容とは

労務が担当する仕事内容は、次の7つの領域になります。

労務の仕事内容

・勤怠管理
・給与計算
・福利厚生の整備
・社会保険の加入手続き
・年末調整
・就業規則の作成と変更
・安全衛生管理

勤怠管理

勤怠管理は、労働時間や時間外労働、休日労働の時間数などを算出する業務です。

法定労働時間を超える時間外労働に対して、企業は割増賃金を支払わなければなりません。時間外労働や深夜残業、休日労働は割増率が異なるため、正確な時間数を把握する必要があります。

また、2019年4月に施行された働き方改革関連法によって、残業時間の上限が規制されました。36協定の上限時間を超える労働は、原則的として禁止されています。

長時間労働に伴う労働者の過労死が散見されており、残業時間削減に向けた取り組みが各企業に求められています。コンプライアンス遵守や過重労働防止のためにも、正確な勤怠管理が重要です。

給与計算

給与計算は、従業員に支払う給与を正確に算出する業務です。所得税や社会保険料、雇用保険料を控除した形で従業員に支給するため、期日までに正確な額を算出しなければなりません。

仮に計算ミスや支給遅れが発生した場合は、従業員との信頼関係を失うことになってしまうため注意が必要です。特に残業代や各種手当の支給額は従業員によって異なるため、細心の注意を払う必要があります。

福利厚生の整備

福利厚生は給与や賞与とは別に、企業から従業員へ提供する報酬のことを指します。報酬には金銭面だけでなく、特別休暇の導入や教育機会の提供も含まれます。

福利厚生の整備は、従業員のモチベーションアップや採用力強化に欠かせない業務です。福利厚生の内容が充実していると従業員のエンゲージメントも高まり、生産性向上や離職率低下が期待できます。また、他社との差別化によって、優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。

社会保険の加入手続き

所定労働時間や労働日数など、一定の要件を満たす従業員は雇用形態を問わず、社会保険に加入させる義務があります。健康保険や厚生年金、雇用保険など、各種保険は従業員の生活を守る上でも大切な役割を担っています。

社会保険の加入手続きは提出期限までに、必要な書類を提出しなければなりません。スピードと正確性が求められます。

年末調整

年末調整は所得税の過不足額を明確化する業務です。給与所得者が納める1年間の源泉徴収額を算出し、徴収した合計額と比較することで過不足額を算出します。手続きには、扶養控除等申告書や保険料控除申告書、源泉徴収票など、さまざまな書類の提出が必要です。

近年は国側が電子申請を推進しており、電子データとして提出できる書類も増えています。電子申請を行うには、給与計算システムや年末調整ソフトの導入が必要です。

就業規則の作成と変更

就業規則は、労働者と企業側が守るべき内容をまとめた職場に関するルールブックです。労働条件や賃金規定、退職など、さまざまな内容を明記します。

就業規則を作成する目的は職場内の規律を保ち、トラブルを防ぐためです。従業員を常時10人以上雇用する企業には、就業規則の作成が義務付けられています。

法改正が起きた際や就業形態を変更する際には、就業規則の変更が必要です。就業規則を変更する場合は、労働組合の意見を伺い、意見書と共に労働基準監督署へ提出します。

安全衛生管理

安全衛生管理は、長く仕事を続けてもらえるよう、従業員の心身の健康を管理する業務です。労働安全衛生法に基づき、毎年1回以上は健康診断を受診させなければなりません。

健康診断の記録は本人に通知され、結果次第では保健指導や労働基準監督署長への報告が必要になります。また、常時従業員を50人以上雇用している企業では、2015年からストレスチェックが義務付けられています。

職場の人間関係や長時間労働が原因で、精神的な不調に悩まされる労働者は少なくありません。従業員の健康を守るためには、タレントマネジメントシステムの導入や産業医との定期的な面談など、メンタルケアが重要になります。

労務と人事の違い

労務は社会保険の手続きや給与計算などを代行し、従業員が安心して働ける環境を整備することが求められています。一方、人事は採用活動や人事評価制度の整備など、組織力強化や人材育成を目的としています。労務と人事の違いは次のとおりです。

表:労務と人事の違い

労務人事
目的・従業員が働きやすい環境の整備
・生産性向上
・組織力強化
・個々の能力を最大限発揮できる業務体制の確立
・人材育成
担当する業務内容・勤怠管理
・給与計算
・入退社の手続き
・年末調整
・就業規則の整備
・福利厚生の整備
・採用活動
・人材管理
・人事評価
・社内研修の企画と運営

労務における課題

労務担当者が直面している課題は、次の4点です。

課題

・人事の仕事も兼任している
・多様化した雇用形態への対応が求められる
・働き方改革への対応が求められる
・テレワークへ移行が難しい

人事の仕事も兼任している

労働力や資金力に制限がある企業の場合、一人の担当者が労務と人事の仕事を兼任することは少なくありません。2つの業務を兼任しているのは、決して好ましい状況ではありません。限られた時間で多くの仕事を処理しなければならず、業務の正確性が低下しやすくなります。

また、人事評価制度や給与体系の見直しなど、時間を掛けて取り組むべき業務は後回しになりやすくなります。現状把握や課題解決のための時間を確保できず、機能不全の状態が続おいてしまうでしょう。

そして、労務担当者は慢性的な長時間労働によって、心身を休める時間を十分に確保できません。ストレスが蓄積されると自律神経のバランスが乱れ、頭痛や吐き気などに悩まされることもあります。

体調不良の状態が続くと判断力や注意力、記憶力が低下し、業務上のトラブルが発生する可能性が高くなるでしょう。

多様化した雇用形態への対応が求められる

パートやアルバイト、契約社員など、有期雇用契約者への対応が求められます。正社員と異なるフォーマットの雇用契約書の作成や就業規則の規定が必要です。

2021年4月からは、同一労働同一賃金の概念が適用されました。正社員と同じ仕事をしている場合は、合理的な理由がない限り、雇用形態を理由にした理不尽な格差を設けることは禁止されています。格差是正は賃金だけでなく、福利厚生や教育機会なども含まれています。

また、近年はフリーランスを活用する企業も増えてきました。即戦力の人材を低コストで活用できることがフリーランスの魅力です。一方で、業務委託契約書の作成や就業規則の項目追加など、管理すべき内容は増えることでしょう。

働き方改革への対応が求められる

2019年4月に施行された働き方改革関連法によって、さまざまな点が改正されました。残業時間の上限規制や労働時間の客観的な把握、有給休暇の取得義務化など、ワークライフバランス改善に向けての取り組みが求められています。

要件を満たせなければ罰則が科せられるため、これまで以上に正確な勤怠管理が必要です。

テレワークへ移行が難しい

テレワークは従業員と企業双方にとって、メリットの大きい働き方ですが、導入するためには職場環境の整備が必要です。たとえば、タイムカードやExcel(エクセル)での勤怠管理は、テレワークでは利用できません。

PCログの取得や勤怠管理システムの導入など、就業場所を問わずに出退勤時刻を記録できる体制が必要です。また、テレワークでは勤務態度や仕事へ取り組む姿勢を直接確認できません。

従来の人事評価では従業員の貢献度を正しく反映できないため、評価基準や評価手法を見直す必要があります。そして、グループウェアやWeb会議ツール、オンラインストレージなど、オンライン上で業務を進められる体制を確立しなければなりません。

労務の仕事を効率化する方法

労務担当者の業務負担を軽減する方法は、次の5つです。

効率化方法

・労務管理システムの導入
・給与計算システムの導入
・勤怠管理システムの導入
・BPOサービスの利用
・人事コンサルティング会社の利用

労務管理システムの導入

労務全般の業務を効率化する方法は、労務管理システムの導入です。

労務管理システムは、書類作成や各種手続きを代行する機能を搭載しています。個人情報収集や雇用契約締結、社会保険への加入手続きなど、さまざまな業務を効率化できます。

提出が必要な書類のテンプレートも搭載されており、一からフォーマットを作成する必要はありません。書類の作成〜役所への提出まで、システム上で完結する体制が整い、ペーパーレス化を促進できます。

また、紙書類と異なり、保管スペースの確保や定期的な整理整頓をする必要はありません。

給与計算システムの導入

給与計算システムは、従業員に毎月支払う給与額を正確かつスピーディーに算出できるシステムです。所得税や社会保険料、雇用保険料など、煩雑な計算はシステムへ一任できます。

税率や保険料率が改定されても、クラウド型であればベンダーが自動アップデートで対応します。計算ミスやコンプライアンス違反が起きる心配は要りません。

また、賃金台帳や算定基礎届、賞与支払届など、各種帳票作成も自動化できます。作成した書類はシステム上で提出できるため、税務署や年金事務所に赴く手間を省けます。

勤怠管理システムの導入

勤怠管理システムは、従業員の勤怠データを正確かつスピーディーに集計できるシステムです。従業員の労働時間や残業時間、有給休暇の取得状況など、勤怠データの集計〜反映まで、システムへ一任できます。

システム上には常に最新の勤怠データが反映されるため、従業員の勤怠状況に関して管理職とやりとりを重ねる必要はありません。残業過多に陥っている従業員がいた場合はアラートを発し、過重労働を未然に防げます。

また、WebブラウザやGPS、チャットなど多彩な打刻方法を搭載しており、自社の就業形態に合った方法を選択できます。生体認証を活用すれば、紛失や盗難の心配も要りません。

勤怠管理システムの導入によって、スマートフォンやノートPCから手軽に出退勤時刻を打刻でき、テレワークもスムーズに導入できます。そして、残業や有給休暇の申請〜承認は、システム上で完結するため、隙間時間を有効に活用できるでしょう。

BPOサービスの利用

BPOサービスは業務プロセスの企画〜実施まで、一連の業務代行を依頼できるサービスです。経理や人事、給与計算など、バックオフィス業務を中心に作業を依頼できます。

BPOサービスを利用するメリットは、労務担当者の業務負担を軽減できる点です。勤怠管理や年末調整など、工数が掛かる業務を中心に外部企業へ委託することで、労務担当者は別の作業にリソースを割くことが可能です。

BPOサービスを提供する企業には、実務経験豊富なスタッフが多数在籍しています。業務の進捗状況や法律への対応に関して、過度に心配する必要はありません。

また、業務量の増減に応じてサービスを利用できるため、新たに人材を雇うよりもコストを抑えられます。ただし、依頼する業務量が増えると必然的にコストも高くなるため、委託する業務の絞り込みが重要です。

人事コンサルティング会社の利用

人事コンサルティング会社は、採用や人事制度の整備、人材育成など、3つの領域のいずれかに特化した企業です。労務担当者が人事の仕事を兼任している場合、選ぶ選択肢になります。

人事コンサルティング会社を利用するメリットは、自社の課題を正確に反映したアドバイスをもらえる点です。コンサルタントは多くの企業に携わり、ノウハウや知識を蓄積しています。

課題に対する解決策を提示してもらえるため、次に取るべき行動を明確化できます。また、専門的なスキルを活かし、採用戦略の立案や人事評価の再設計を依頼することも可能です。

自社が抱えている課題を把握した後、人事コンサルティング会社を選定しましょう。ホームページから得意分野や実績を確認してみてください。

おすすめの労務管理システム

最後に、ユーザーから支持を集めている労務管理システムを6つ紹介しましょう。

  • 人事労務コボット
  • SmartHR
  • ジョブカン労務HR
  • オフィスステーション 労務
  • freee人事労務
  • ジンジャー人事労務

人事労務コボット

人事労務コボット

人事労務コボットは、当社ディップ株式会社が提供する労務管理システムです。

人事労務コボットは、入退社の手続きに掛かる時間を大幅に削減できることが特徴です。雇用契約書や内定承諾書、身元保証書など、従業員からの署名が必要な書類の作成〜締結まで、オンライン上で完結できます。給与の振込先や緊急連絡先など、個人情報はWebフォームから収集するため、書類を作成する必要はありません。

また、従業員はスマートフォン上で書類への署名やWebフォームへの入力を行えることで、手続きをスムーズに進められます。専任のチームが導入〜運用まで継続的にサポートする体制を整えており、コボットシリーズを初めて導入する場合も安心して利用できます。

料金プラン:

  • 問合せ

公式サイト

SmartHR

SmartHR

SmartHRは、株式会社SmartHRが提供する労務管理システムです。ユーザーからの評価が高く、導入企業数は50,000社を突破しています。

SmartHRの特徴は、優れたユーザーインターフェースです。情報が整理されたシンプルな画面設計によって、ITリテラシーの高さを問わず直感的な操作が行えます。

入社手続きや雇用契約締結、年末調整など、各種手続きはシステム上で行えます。書類の作成や配布は必要ありません。また、人事評価やタレントマネジメントを行える点も、SmartHRの魅力です。

料金プラン

  • HRストラテジープラン:問合せ
  • 人事・労務エッセンシャルプラン:問合せ
  • 人材マネジメントプラン:問合せ

公式サイト

ジョブカン労務HR

ジョブカン労務HR

ジョブカン労務HRは、株式会社Donutsが提供する労務管理システムです。

ジョブカン労務HRの特徴は、汎用性の高さです。入退社の手続きや各種帳票作成、年末調整など、さまざまな手続きをシステム上で行えます。また、ジョブカンシリーズと連携すると、勤怠管理や給与計算、採用管理など、多くの業務を効率化できます。

料金プラン

  • 無料プラン:0円
  • 有料プラン:月額400円/1ユーザー

公式サイト

オフィスステーション 労務

オフィスステーション 労務

オフィスステーション 労務は、株式会社エフアンドエムが提供する労務管理システムです。多くのユーザーから支持を集めており、リピート率は99.3%を誇ります。

オフィスステーション 労務は、利便性と安全性を兼備したシステムです。100種類以上の帳票に対応しており、入退社の手続きや年末調整業務を効率的に進められます。書類作成〜役所への提出まで、オンライン上で完結できるため、紙書類を扱う必要はありません。

また、機密情報の暗号化や脆弱性診断、WAFの搭載などによって、金融機関と同等のセキュリティレベルを実現しています。データの自動バックアップによって、仮にサイバー攻撃を受けても、最短での事業復旧が可能です。

料金プラン

  • 月額440円/ユーザー+初期費用110,000円

公式サイト

freee人事労務

freee人事労務

freee人事労務は、freee株式会社が提供する労務管理システムです。

freee人事労務の特徴は、多機能性です。1つのシステムで労務管理や勤怠管理、給与計算など、さまざまな業務を効率化できます。

料金プラン

  • ミニマムプラン:月額1,980円
  • ベーシックプラン:月額3,980円
  • プロフェッショナルプラン:月額8,080円
  • エンタープライズプラン:問合せ

公式サイト

ジンジャー人事労務

ジンジャー人事労務

ジンジャー人事労務は、jinjer株式会社が提供する労務管理システムです。従業員データを一括管理でき、入社手続きや人員配置を効率的に進められます。

複数のデータを1つのシステムに集約できるため、管理コストを削減できる点も魅力です。また、ジンジャーシリーズとの連携によって、勤怠管理や給与計算、経費精算など、バックオフィス業務全般を効率化できます。

料金プラン

  • 月額400円/ユーザー

公式サイト

まとめ

労務担当者は、勤怠管理や給与計算、福利厚生の整備など、多くの業務を抱えています。業務過多に陥ると、ケアレスミスや健康リスクが増大します。また、働き方改革関連法の施行に伴い、各企業は残業時間削減に向けての取り組みを強化しなければなりません。

労務担当者の負担を減らすには、労務管理システムや勤怠管理システムなど、各種システムの導入が必要です。当社ディップ株式会社が提供する「人事労務コボット」を導入すれば、入退社に掛かる工数を大幅に削減できます。

従業員からの署名が必要な書類の作成や個人情報の収集は、システム上で完結できます。紙書類の作成や配布は必要ありません。また、従業員はスマートフォン上で署名や入力作業を行えるため、最短即日で入社手続きを終えられます。

労務担当者の工数増大にお悩みの方は、ディップ株式会社が提供する「人事労務コボット」導入を検討してみてください。少しでもご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。