人事や労務担当の方は、入社手続きに必要な「内定通知書」について、正しく理解していますでしょうか。

内定通知書は求職者に対して採用の旨を伝える書類であり、記載すべき必須項目もあります。もし記載項目に不備があれば、内定者に不安を与えかねません。

また、同じ入社書類の中で混同しがちな「採用通知書」「内定承諾書」「労働条件通知書」などとの違いについても、正しく理解しておく必要があります。

そこで今回は「内定通知書」について、記載項目と書き方、法的効力の有無や混同しがちな入社書類との違いなどを解説します。

内定通知書の不備で内定者や会社に迷惑をかけないためにも、内定通知書について理解を深めていきましょう。

内定通知書とは

内定通知書とは、企業が求職者に対し内定の意思を伝える書類のことです。

求職者に対して電話やメールだけではなく、正式に書面にて内定を伝えるのが目的で交付されます。

内定通知書の発行は義務ではありませんが、求職者とのトラブルを防ぐためにも書面での発行が望ましいと言えるでしょう。

また内定通知書の他にも、企業が求職者を採用する際にはさまざまな入社書類が必要です。

中でも内定通知書と混同しやすい「採用通知書」「内定承諾書」「労働条件通知書」については、明確に違いを理解しておく必要があります。

内定通知書と主な入社書類との違いについて、次項で詳しく解説します。

内定通知書と主な入社書類との違い

内定通知書と以下3つの書類は、求職者に交付するタイミングや名称が似ていることもあり混同しやすい書類ですが、いずれも目的や役割が異なる書類です。

  • 採用通知書
  • 内定承諾書
  • 労働条件通知書

内定通知書と上記3つの書類の違いについて、詳しく解説します。

採用通知書との違い

採用通知書は内定通知書とは違い、求職者に対して採用が決定した旨を伝えるための書類です。

採用通知書は求職者に対し、企業側が一方的に採用を伝えるための書類です。したがって、求職者の入社意思に関係なく交付します。

一方、内定通知書は正式な内定を伝える書類のため、入社後の労働条件に求職者が合意した上で、交付します。

採用通知書を交付した段階では、まだ求職者と企業の労働条件の合意はありません。採用通知書の交付=入社内定とはならないため注意しましょう。

内定承諾書との違い

内定承諾書は、企業が採用を決定した求職者に対し、入社の意思を確かめるために発行する書類です。

採用通知書と似ているようですが、内定承諾書は入社誓約書と同様に、求職者の署名と捺印が必要です。

新卒採用などで多くの人材を採用する場合、企業は複数の求職者に対し、入社の意思を確かめる必要があります。

内定承諾書にて入社意思のある求職者を絞り出すことで、採用数の見込みが立つため採用活動をスムーズに終えられます。

特に新卒採用の場合、求職者は複数の企業から内定をもらっているケースも珍しくありません。

内定辞退を防ぎ、入社の意思を確認するためにも、内定承諾書を活用する企業は多くあります。

ただし、内定承諾書には法的拘束力やペナルティはありません。内定承諾書の受領後であっても、求職者が労働契約の解除として内定辞退することは可能です。

労働条件通知書との違い

労働条件通知書は、内定者に対して企業が労働条件を伝えるための書類です。就業時間や場所、賃金や休日などの労働条件を記載した書類を、内定者に交付します。

労働条件通知書は採用通知書や内定承諾書と違い、労働基準法にて交付が定められている書類です。

正社員やアルバイトといった雇用形態に関係なく、事業主が労働者を雇用する場合には、労働条件通知書の交付が義務付けられています。

また、労働条件通知書については、以下の記事でも詳しく解説しています。

内定通知書の法的効力

内定通知書と主な入社書類との違いについて解説してきました。ここで気になるのが、内定通知書に法的効力があるのかどうか、ということです。

結論から言えば、内定通知書には法的効力が発生します。内定通知書は、企業と労働者が内定に合意した上で、交付する書類です。

内定通知書そのものに法的効力はありませんが、企業と労働者との間で成立した労働契約に対し、法的効力が発生します。

上記を踏まえた上で、以下のような場合、企業側と内定者側でそれぞれどういったペナルティが考えられるのか、具体的に解説します。

  • 【企業側】内定の取り消しはできる?
  • 【内定者側】内定の辞退はできる?

【企業側】内定の取り消しはできる?

労働契約の成立後は、よほど合理的な理由が無い限りは、企業側の都合で内定を取り消すことはできません。

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

引用元:労働契約法 | e-Gov法令検索

上記のように、労働契約法第16条にて「社会通念上相当であると認められない場合」は、労働契約の解除は無効になると規定されています。

ただし、以下のようなケースは「社会通念上相当である」といえるため、内定取消が有効となる可能性があります。

  • 内定者による経歴詐称
  • 内定者による犯罪行為
  • 内定者が就業できる健康状態ではないこと
  • 内定後、業績悪化による人員整理が必要になった

また上記のケースが発覚したとしても、程度によっては契約を取り消せないこともあります。

不用意な内定取消は損害賠償請求といったケースに発展する可能性もあるため、企業側には慎重な判断が求められます。

【内定者側】内定の辞退はできる?

入社日の2週間前までなら、内定者は申し出による契約解除が可能です。

これは民法第627条により、期間の定めのない雇用の解約の申し入れについて、いつでも解除できると規定されているためです。

第627条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。

引用元:民法第627条 - Wikibooks

上記の条文では、「解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了」と記載されています。

つまり、内定者は入社2週間前までならペナルティなしで辞退でき、企業も内定者が辞退できる権利を守る必要があるのです。

内定通知書の記載項目

内定通知書の法的効力について解説してきました。では、実際に内定通知書を作成する上で、どのような項目を記載する必要があるのでしょうか。

内定通知書に必須な記載項目は、主に8つです。それぞれの記載項目について、詳しく解説します。

記載項目

・採用決定の通知
・応募に対するお礼
・入社年月日と入社までのスケジュール
・同封書類の提出
・人事担当の連絡先
・内定の取消事由
・内定承諾の期限
・会社名と代表者名

採用決定の通知

採用が内定した旨を記載します。内定が決定したことが分かれば、特に書式に決まりはありません。

「厳正な選考の結果、貴殿を採用内定といたしました」と端的に通知文を記載し、受領側が一目で内定だと分かるようにしておきましょう。

応募に対するお礼

採用決定とともに記載すべきなのが、応募に対するお礼です。書式に決まりはないため、時候の挨拶とともにお礼を記載しましょう。

文書作成ソフトなどに搭載されたテンプレートを使い、ビジネス文書の挨拶文として違和感がなければ問題ありません。

入社年月日と入社までのスケジュール

具体的な入社年月日と、入社までのスケジュールを記載します。入社日やスケジュールが未定の場合は、その旨を記載しておきましょう。

また、入社日までのスケジュールについて、別途案内を送付しても問題ありません。もし別途案内を送付する場合は、送付する日付の目安を記載しておきましょう。

同封書類の提出

企業によっては、内定通知書とともに以下の資料を同封するケースもあります。

  • 内定(入社)承諾書
  • 労働条件通知書
  • 雇用契約書
  • 身元保証書
  • 入社誓約書 など

上記のような書類を同封する際は、一覧に記載し返送期限を設定します。また、内定者が記入に困らないよう、書類の問い合わせ先も記載しておきましょう。

人事担当の連絡先

書類の問い合わせ窓口となる人事担当の連絡先も、忘れずに記載しておきましょう。会社の代表番号だけの記載では、内定者が誰に相談すれば良いか分からないため不十分です。

「部署名+担当者名」をセットにして、内定者が困らないように連絡先を記載しましょう。

内定の取消事由

内定が取消となる事由についても、必ず記載しておきます。

繰り返しになりますが、内定通知書には法的効力が発生します。内定通知書を交付した時点で、企業の都合による一方的な内定取消はできません。

また内定の取消事由を記載する際は、前述した労働契約法の第16条にて規定された「社会通念上相当である」に該当する内容を記載しましょう。

内定承諾の期限

内定通知書や採用通知書、内定承諾書を一緒に同封する場合は、内定承諾についての期限を設定しておきます。

内定承諾書の返信期限は、1週間から長くても1ヶ月以内が一般的です。優秀な人材を逃したくないからといって、極端に短い期限を設けないようにしましょう。

会社名と代表者名

会社が正式に交付した文書であることを示すために、会社名と代表者名も記載します。

なお、会社名と代表者名は、内定通知書の右上部分(タイトルから見て)に記載するのが一般的です。

内定通知書メールで送る場合の注意点

内定通知書は郵送だけではなく、メールでも送付できます。ただし、内定通知書をメールで送る際には、以下の点に注意すべきです。

注意点

・就業時間外に送信しない
・件名に内定通知書だとわかる旨を明記する
・受領確認の返信を促す

就業時間外に送信しない

内定通知書をメールで送信する際は、就業時間内に送るようにしましょう。

就業時間外にメールを送った場合、「就業時間が守られていない企業なのかな?」と内定者を不安にさせてしまう可能性があるためです。

内定者が入社を躊躇することのないように、就業時間内にメールを送信しましょう。

件名に内定通知書だとわかる旨を明記する

内定通知書のメールの件名には、必ず内定通知書であることが分かる旨を記載します。

件名に記載することで、メールの未開封や削除といった事態を防ぎやすくなります。メールを開封する前に、件名だけで重要性を伝えるのがポイントです。

受領確認の返信を促す

メールで内定通知書を送る場合は、内定者に対し受領確認の返信を促すようにします。

「メールを送った」「届いていない」といった双方の認識違いを防ぐためにも、メールを確認した時点で返信を促すように、本文に記載しておきます。

またメールが迷惑メールフォルダなどに入ってしまうと、見落とす可能性が高くなります。

面接時などに「〇〇のメールアドレスにて送信します」と、内定者にあらかじめ伝えておくのもポイントです。

内定通知書の作成・送付は「人事労務コボット」がおすすめ

人事労務コボット

内定通知書の作成や送付におすすめなのが、当社ディップ株式会社が提供する「人事労務コボット」です。

人事労務コボットは、内定通知書や労働条件通知書といった入社時に必要な書類をペーパーレス化することで、業務効率化につなげるサポートツールです。

なぜ人事労務コボットが入社手続きを効率化できるのか、その理由や特徴について解説します。

人事労務コボットとは

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その他にも、人事労務コボットには入社手続きを支援する便利な機能が豊富に搭載されています。

人事労務コボットの機能・特徴

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主な機能内容・特徴
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社労士との共同管理機能外部に依頼した社労士と社内スタッフによる共同管理も可能です。
CSV出力機能必要なデータをCSV形式にて出力できます。
マルチデバイス機能マルチデバイス対応。外出先でのスマートフォン手続きも可能です。

まとめ

ここまで内定通知書について、内定通知書へ記載する必須項目や、主な入社書類との違い、内定通知書が持つ法的効力などを解説してきました。

内定通知書は、求職者に対して電話やメールだけではなく、正式に書面にて内定を伝えるのを目的に交付されます。

内定通知書は企業と労働者が内定に合意した上で、交付する書類です。労働契約に対して法的効力が発生するため、企業の一方的な理由による内定取消はできません。

また、もし内定者が入社を取り消す場合は、民法第627条により入社日の2週間前までであれば取消可能です。また、企業側も内定者の権利を守る必要があります。

最後になりますが、入社手続きの効率化には「人事労務コボット」の導入がおすすめです。

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