雇用保険を抜ける手続きに必要な「雇用保険被保険者資格喪失届」をわかりやすく解

会社から従業員が退職する場合、雇用保険から脱退させるための手続きを行わなければなりません。この際必要なのが「雇用保険被保険者資格喪失届」の提出で、退職の際には忘れずに実施します。

今回は、雇用保険被保険者資格喪失届の役割や提出方法、手続きの際に注意したいポイントについて解説します。

雇用保険被保険者資格喪失届とは

雇用保険被保険者資格喪失届

雇用保険被保険者資格喪失届は、雇用保険に加入している従業員が、雇用保険の被保険者ではなくなった際に届け出る必要のある書類です。

雇用保険は、条件を満たしている従業員であれば誰もが加入する保険であるため、大半の組織では、雇用契約を結んだ時点で保険の加入手続きも進めています。

雇用保険は企業ごとに加入する保険であるため、従業員が退職する際には、その企業での雇用保険を一旦解約し、転職先などで再び加入する必要があります。そのため、雇用保険被保険者資格喪失届は、従業員が退職するたびに届出を出さなければなりません。

雇用保険被保険者資格喪失届の役割とは?

雇用保険被保険者資格喪失届の主な役割は、企業にとっては雇用保険の加入者が一人いなくなったことを公に証明することです。企業からすればこの手続きから得られるメリットは対して大きくはありませんが、一方で重要なのが被保険者であった従業員です。

企業から退職する場合、退職者は失業保険の給付を受けることができます。ただ、この給付を受けるためにはいくつかの手続きを踏む必要があり、その一つとなるのが雇用保険被保険者資格喪失届の提出です。

企業が提出しなければ退職者は給付を受けられないため、退職者の権利を守る上で非常に重要な役割を果たします。

雇用保険被保険者資格喪失届はどこでもらう?

雇用保険被保険者資格喪失届は、ハローワークのホームページから公式のフォーマットをダウンロードすることができます。様式だけダウンロードすることも可能ですが、あらかじめPCで入力の上、ダウンロードすることも可能です。

印刷したフォーマットに不備がある場合、再提出や修正を求められる場合もあるため、書類に記入漏れなどがないかどうかも丁寧に確認しましょう。

雇用保険被保険者資格喪失届の提出先は?

雇用保険被保険者資格喪失届は、大きく分けて次の3つの提出方法に分かれます。

提出方法

・郵送での提出
・ハローワークの窓口で提出
・電子申請

雇用保険被保険者資格喪失届は、ハローワークに提出する書類です。印刷した書類に記入の上、郵送で提出することが一般的ですが、近くにハローワークがある場合には窓口での提出もできます。

また、最近では電子申請に対応し、オンラインで手続きを完結することも可能になりました。この点については後述しますが、企業によってはオンラインでの手続きが義務化されているケースもあるため注意が必要です。

雇用保険被保険者資格喪失届の提出期限は?

雇用保険被保険者資格喪失届の提出は、被保険者が雇用保険の資格を失った日の翌日から10日以内に行う必要があります。退職者に対して迅速な失業保険の給付を行うためです。

1週間強の期間の間に手続きを進める必要があり、決して十分な猶予が与えられているわけではないため、退職があった際には優先的に手続きを進めるよう意識しましょう。

雇用保険被保険者資格喪失届の提出の際に必要な添付書類は?

雇用保険被保険者資格喪失届の提出を届け出る際、届出書類と併せて添付が必要となる書類があります。たとえば次のような書類が必要となります。

必要な添付書類

・出勤簿
・労働者名簿
・賃金台帳
・退職辞令発令書類
・退職理由を確認できる書類

離職票の交付を希望する場合には、上記に加え「雇用保険被保険者離職証明書」の添付も必要となるため、離職票を希望するかどうかも確認しましょう。

また、退職理由を確認できる書類というのは、場合によって必要なものが異なります。従業員の自主的な判断による退職場合は、出勤簿やタイムカードの提出で構いませんし、会社の倒産による退職の場合は倒産手続きを裁判所に申し立てた際の書類が必要です。状況に応じて適切な書類を用意しましょう。

提出しなかった場合の罰則とは?

雇用保険被保険者資格喪失届を提出しなかった場合、罰則規定が存在します。

期日までの提出が行われなかった場合や、提出内容に虚偽が認められた場合には、雇用保険法第83条に基づき、6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科される場合があります。

退職した従業員の生活や人権に関わる手続きであるため、たとえ会社の業務に直接的な影響があるわけではなくとも、間違いなく手続きを進めましょう。

雇用保険被保険者資格喪失届の書き方・記入例

雇用保険被保険者資格喪失届の書き方は、基本的にフォーマットの案内に則って記入していけば問題はありません。ただ、いくつか書き方に困る可能性のある項目も設けられているため、多くの人が詰まりやすいポイントをピックアップして解説します。

個人番号

雇用保険被保険者資格喪失届では従業員の個人番号、いわゆるマイナンバーを記入しなければなりません。個人番号を記入する際には事前に番号の照会を行い、退職者本人の番号であることを確認しておきましょう。

雇用保険被保険者資格喪失届に限らず、今後はあらゆる手続きで個人番号の記入が必要になると考えられるため、あらかじめ正しく管理できる仕組みづくりを社内で進めておくのも有効です。

喪失原因

なぜ雇用保険を喪失することになったのか、その喪失原因も雇用保険被保険者資格喪失届には記入が必要です。

後ほど解説しますが、退職以外にも雇用保険被保険者資格喪失届を提出しなければならないケースがいくつかあります。今回の手続きがどのような理由から必要になっているのか、正しく記入する必要があります。

出向などの離職以外の理由による喪失や、事業主の都合による解雇などを原因とする離職、契約期間満了や企業に重大な損失をもたらしたための解雇、任意退職など、細かい理由を踏まえた上で記入しましょう。

離職票交付希望

離職票の交付希望については、出産や育児などが原因で一時的に就労ができない場合や、60歳以上かつ定年後に就労する予定がなく、失業給付を受け取る場合は交付希望を「有(1を選択)」とします。

新氏名 

退職者によっては、結婚などを理由に退職を選ぶ人もいますが、その場合は氏名が変更となる場合もあります。

この場合、雇用保険被保険者資格喪失届においても新氏名を把握の上で記入し、変更前の氏名と変更年月日も併せて記入する必要があります。

退職時以外で雇用保険被保険者資格喪失届が必要なケース

雇用保険被保険者資格取得届 失業 給付 転

先ほども少し解説したように、雇用保険被保険者資格喪失届は退職時以外にも必要になる場合があります。主なケースは次のとおりです。

週の所定労働時間が20時間未満になった場合

従業員の労働時間が雇用保険の対象外である20時間未満になった場合、雇用保険の被保険者ではなくなるため、資格の喪失を届け出る必要があります。

従業員の中に就労時間に大幅な変更があった人がいる場合、あらかじめ雇用保険被保険者資格喪失届の提出が必要かどうかを確認しましょう。

従業員が出向した場合

従業員が出向した場合、就労している組織が変わってしまうので、再度雇用保険の加入手続きを行う必要があります。そのため、現在の会社で加入している雇用保険を一旦解消するため、雇用保険被保険者資格喪失届の提出を行わなければなりません。

従業員が役員に昇格した場合

従業員が役員に昇格した場合、現在の雇用形態は解消されることとなるため、新たな保険の加入手続きが必要です。役員は役員報酬を受け取るため、雇用契約ではない点に注意しましょう。

従業員が死亡した場合

従業員が死亡した場合も、退職と同様に被保険者が喪失するため、雇用保険被保険者資格喪失届の届出が必要です。従業員の死亡は大きな事件でもあるため他の手続きに追われがちですが、雇用保険の脱退手続きも忘れずに行いましょう。

雇用保険被保険者資格喪失届の電子化について

基本的に雇用保険被保険者資格喪失届は上で紹介した通り、複数の提出方法があります。しかし、近年の業務のデジタル化に伴い、企業によっては提出形態が電子申請に限定されるケースが出てきています。

電子申請義務化の条件

2020年4月より、特定の条件に該当する法人企業は雇用保険被保険者資格喪失届を含めた複数の手続きにおいて、電子申請にて提出することが義務化されています。

対象となる企業の条件は次のとおりです。

対象企業の条件

・資本金、出資金又は銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人
・相互会社(保険業法)
・投資法人(投資信託及び投資法人に関する法律)
・特定目的会社(資産の流動化に関する法律)

自社で手続きを行う場合はもちろん、社会保険労務士や社会保険労務士法人が、対象となる特定の法人に代わって手続きを行う場合も上記の条件に含まれるため、自社が当てはまっているかどうかを一度確認しておく必要があります。

参照元:2020年4月から特定の法人について 電子申請が義務化されます。(厚生労働省)

その他の義務化された雇用保険手続き

雇用保険被保険者資格喪失届と併せて、その他の雇用保険手続きにおいても電子申請が義務化されています。義務化が決定した雇用保険手続きには次のものがあります。

義務化した雇用保険手続き

・被保険者資格取得届
・被保険者資格喪失届
・被保険者転勤届
・高年齢雇用継続給付支給申請
・育児休業給付支給申請

健康保険や労働保険にも目を向けると、次の提出書類も電子化が義務化されています。

電子化が義務化された提出書類

・被保険者報酬月額算定基礎届
・被保険者報酬月額変更届
・被保険者賞与支払届
・継続事業(一括有期事業を含む。)を行う事業主が提出する年度更新に関する申告書や確定保険料申告書など

これらを一つずつ対応することは非常に手間がかかるため、まとめて手続きを電子化できるシステムを導入するなどして、業務負担の改善に努めることが望ましいといえます。

ただ、電気通信回線の故障や災害による破損によって、電子申請が困難な場合や、年度途中に発生した保険については、例外的に電子申請以外の方法での提出も可能です。何らかの事情で電子申請ができない場合は、一度相談してみることをおすすめします。

まとめ

労働者が退職した際に必要な雇用保険被保険者資格喪失届の提出について解説しました。

雇用保険被保険者資格喪失届には複数の記入項目がありますが、喪失の要因や離職票の交付など、あらかじめ確認の上記入する必要のある項目も設けられており、一通ずつ丁寧に対応しなければなりません。

雇用保険被保険者資格喪失届は退職時以外にも提出が必要な機会もあるため、いつそれが必要になるのかもあらかじめ確認しておきましょう。

また、雇用保険被保険者資格喪失届は企業によっては電子申請が義務化されているため、該当する場合には早急に届出方法を見直しておくことも推奨します。その他の義務化された雇用保険手続きと併せて電子化を進めましょう。

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