アルバイトの社会保険加入条件

「そもそもアルバイトの社会保険の加入条件とは?」「加入させると企業にメリットはあるの?」こういった疑問をお持ちの労務担当者の方に、今回はアルバイトの社会保険加入についてわかりやすく解説します。

2022年10月の法改正により、アルバイトの社会保険加入対象者の範囲が拡大しました。対象範囲の拡大によって、社会保険加入義務のある従業員が増える可能性があるため、加入手続きにもれがないよう注意が必要です。

この記事を読めば、アルバイトの社会保険の加入条件や加入させるメリットとデメリット、手続き方法などがわかります。アルバイトの社会保険加入手続きを滞りなく進めたい労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。

社会保険とは?

社会保険とは、病気やケガ、失業など万が一のリスクに備えて加入する保険のことです。従業員は万が一のリスクが発生すると仕事ができず、生活が困難になる場合があるため、リスクに備えます。

社会保険加入者は、毎月一定額を社会保険料として国に支払うことで、必要なときに給付が受けられます。

具体的には、以下の5つが社会保険です。

社会保険

・健康保険
・介護保険
・年金保険
・雇用保険
・労災保険

中でも健康保険と介護保険、年金保険の3つをさして、(狭義の)「社会保険」とよぶことがあります。この記事では、(狭義の)社会保険について解説していきます。

社会保険適用事業所である事業所は、一定の条件をみたす従業員を必ず社会保険に加入させなければなりません。その場合、社会保険料は従業員と事業所で半分ずつ出し合います。

参照元:

2022年から社会保険の適用対象が拡大

社会保険月額変更届

ここからは、社会保険の適用対象や加入条件等について解説していきます。

2022年10月から法改正によって、社会保険の適用対象が拡大されました。具体的には、以下の2点が変更されています。

変更点

・従業員数が100人(改正前:500人)を超えると社会保険適用事業所の対象となる
・短時間労働者の社会保険加入要件の1つが、「雇用期間が2ヶ月(改正前:1年)以上見込まれること」となる

これらの変更により、今まで社会保険適用事業所ではなかった企業が対象になったり、社会保険に加入していなかった短時間労働者が加入対象者になったりします。

社会保険の適用対象にもかかわらず手続きを怠ると、罰則を受ける可能性があるため、必ず確認しておきましょう。

従業員数のカウント方法は、下の図のとおりです。

引用元:厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト 対象企業 従業員数のカウント方法

従業員数は、現在の厚生年金保険の適用対象者と同様になります。原則として従業員数が常時101人以上の場合は、社会保険の適用対象です。法人は、法人番号が同一の全企業を合計して従業員数を計算します。

また、今回の改正では501人以上から101人以上に適用対象企業が拡大しましたが、2024年には51人以上の企業も対象になります。現時点で社会保険適用事業所の対象ではない企業も手続きが必要になるため、従業員が51人以上いる企業の方は手続きを確認しておきましょう。

アルバイトの社会保険加入条件

ここからは、短時間労働者の社会保険加入条件の詳細を解説します。社会保険適用事業所である企業は、以下の条件のうち一方を満たす従業員を社会保険に加入させなければなりません。

アルバイトの社会保険加入条件

・週の労働時間が正社員の4分の3以上であること
・4つの要件を満たすこと(週の労働時間が正社員の4分の3未満の場合)

週の労働時間が正社員の4分の3以上の場合、正社員と同様に社会保険加入の必要があります。また、それ以外の場合も労働時間や賃金など4つの要件を満たすと、社会保険加入が必要になります。

では、それぞれの条件を具体的に解説していきましょう。

週の労働時間が正社員の4分の3以上であること

アルバイトの場合、1日または1週間の労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、通常労働者の4分の3以上であれば、社会保険に加入させる必要があります。

たとえば、企業の中で通常労働者である正社員が以下の状況だとします。

  • 通常労働時間が1週間に40時間
  • 1ヶ月の所定労働日数が20日

この場合、アルバイトは以下の条件を満たすことで社会保険加入対象者になります。

  • 週に30時間以上働く
  • 1ヶ月の所定労働日数が15日以上

このように、アルバイトの週労働時間が正社員の4分の3以上のフルタイム勤務だと、社会保険に加入させなければなりません。

4つの要件を満たすこと(週の労働時間が正社員の4分の3未満の場合)

週の労働時間が正社員の4分の3未満の場合は、次の4つの要件をすべて満たすと、社会保険への加入義務が発生します。

それぞれ順に説明していきます。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 雇用期間が2ヶ月以上見込まれること
  3. 賃金の月額が8,8000円以上であること
  4. 学生でないこと

1.週の所定労働時間が20時間以上であること

「週の所定労働時間」は契約上の労働時間を指すため、残業時間など臨時に生じた労働時間は含みません。また、契約上で週所定労働時間が20時間に満たない場合でも、実際の労働時間が2ヶ月続けて週20時間以上となり継続の見込みがあると、3ヶ月目から保険が適用されます。

2.雇用期間が2ヶ月以上見込まれること

2022年10月の法改正により、期間が「1年以上」から「2ヶ月以上」に変更になりました。雇用契約の期間が2ヶ月以上あるアルバイトがいる場合は、確認が必要です。

3.賃金の月額が8,8000円以上であること

賃金とは臨時的なものを含まず、基本給と諸手当の合計を指します。たとえば、残業代や賞与、皆勤手当などは含まれません。

4.学生でないこと

休学中や夜間の学生は社会保険加入対象となります。

アルバイトを社会保険に加入させるメリット

アルバイトを社会保険に加入させるメリットは、主に次の3つです。

メリット

1. 優秀な人材を獲得できる可能性が高まる
2. 社会的な信用が高まる
3. トラブルを未然に防げる

アルバイトを社会保険に加入させると、福利厚生がしっかりしている企業として社会的に信用されます。ここからは、一つひとつのメリットを具体的に解説していきましょう。

優秀な人材を獲得できる可能性が高まる

アルバイトを社会保険に加入させると、優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。なぜなら、福利厚生がしっかりしている企業としてアピールできるからです。

社会保険は、国で決められている福利厚生制度です。社会保険に加入すると手厚い補償があったり、加入した健康保険によっては特典を受けられたりと、従業員にとって大きなメリットがあります。

同じような業種や職場環境の企業であれば、福利厚生がしっかりしている企業を選ぶ学生が多いと考えられます。2024年卒の就活生は、約9割が「福利厚生」を意識しているという調査結果が出ています。そのため、社会保険など福利厚生を整備すると優秀な人材を獲得しやすくなります。

参照元:就活生の福利厚生と社風に関する調査(株式会社オリゾ)

社会的な信用が高まる

社会保険にアルバイトを加入させると、社会的な信用が高まります。なぜなら、法律をきちんと守る企業として社会的に認識されるからです。

社会保険加入条件を満たしているアルバイトの社会保険加入は、社会保険適用事業所の義務です。義務を守らなかった場合、法令違反となり、法律を守らない企業として社会的信用を失います。

未加入の場合、はじめは指導や検査がありますが、応じないと罰金が科せられます。社会保険加入対象者であるアルバイトの未加入が発覚した場合、社会的信用を失います。社会保険加入対象者は必ず社会保険に加入させ、社会的な信用を高めましょう。

トラブルを未然に防げる

社会保険への加入で、起こる可能性のあるトラブルを未然に防げます。

トラブルの例として、社会保険料未加入による懲役や罰金などの罰則があげられます。罰則は正当な理由なく規定に違反して立ち入り検査に応じないなど、悪質な場合に限りますが、最大で6ヶ月の懲役または50万円の罰金です。

また、厚生年金は将来の年金額に反映されるため、従業員が本来受け取れるはずだった年金を受け取れず、労務トラブルに発展することも十分に考えられます。社会保険加入手続きを適切に行い、金銭面や従業員に関するトラブルを未然に防ぎましょう。

アルバイトを社会保険に加入させるデメリット

アルバイトを社会保険に加入させるデメリットは、主に次の2つです。

デメリット

1. 社会保険料の負担が増加する
2. 担当者の事務手続きが増える

今まで社会保険に加入していなかった場合、アルバイトを社会保険に加入させると社会保険料が増えます。また、加入手続きや報酬月額の変更手続きなど労務担当者の事務作業の負担が増加します。

それぞれのデメリットについて具体的に解説していきましょう。

社会保険料の負担が増加する

アルバイトを社会保険に加入させると、社会保険料を会社と従業員で折半するため、社会保険料の負担が増加します。企業にとっては法定福利費が増えることになるため、どのくらいコストが増えるのか確認が必要です。

会社が負担する保険料のおおよその金額は、日本年金機構のホームページで確認できます。

こちらの「社会保険料かんたんシミュレーター」をご確認ください。

コストがかかりすぎて負担が大きいと感じる場合は、人員削減や短時間労働者の勤務時間を調整するなど、今後の対応を検討する必要があります。社会保険料の増加は、金銭面で大きなデメリットです。

担当者の事務手続きが増える

アルバイトを社会保険に加入させると、社会保険加入者の人数分、担当者の事務手続きが増えます。

社会保険の事務手続きは加入時のみならず、さまざまな場面で必要になります。主な届出書は、次のとおりです。

届出書

・資格取得届
・資格喪失届
・被扶養者扶養(異動)届
・月額変更届
・賞与支払届
・算定基礎届

このように、さまざまな場面で定期的に届出を提出する必要があります。その都度担当者は届出用紙に情報を記入し、提出しなければならないため、人数が多いほど負担が増えます。

社会保険への加入手続き

社会保険への加入手続きには、電子申請または電子媒体申請と郵送申請の2種類があります。

加入手続きは、事業所ごとに行う必要があります。そのため、拠点が2か所以上あり、事業所ごとに適用事業所の対象となっている場合は、すべての事業所で手続きが必要です。

しかし、1つの事業所で人事や給与などが集中的に管理されている場合に限って、複数の適用事業所を1つの適用事業所とする申請ができます。申請が承認されると、手続きが簡素化できるため、複数の拠点がある企業は一括適用の承認基準を日本年金機構のホームページで確認しておきましょう。

企業が健康保険組合に所属している場合は、健康保険組合に対しても加入届を提出する必要がありますが、ここでは年金事務所への手続き方法をみていきます。それぞれの手続き方法について具体的に解説しましょう。

電子申請または電子媒体申請

電子申請は場所や時間を問わず、インターネットを利用して申請ができます。そのため、時間やコスト削減が期待できます。

電子申請の方法は、大きく分けて「e-Gov」を利用する方法と、「届出作成プログラム」を利用する方法の2つに分けられます。詳しい申請方法は厚生労働省が案内動画を発信しているため、こちらをご覧ください。

また、電子申請できる通信環境が整っていない場合は、電子媒体(CD・DVD)による申請も可能です。電子媒体による申請は、事業所のパソコンに届書データを保存できるため、同様の届出の作成を手書きよりも容易にできます。

電子媒体申請の詳しい作成手順は、CD・DVDで提出用電子媒体を作成する手順についてをご確認ください。

電子媒体申請は届出の作成を簡単にできますが、作成した電子媒体を年金事務所に送付する手間と費用がかかります。そのため、通信環境が整っている企業の場合は、電子申請をおすすめします。

郵送申請

郵送申請は、届出書を管轄の事務センターまたは年金事務所あてに郵送して提出します。封筒に送付先の事務センター名と郵便番号のみ記載すれば、指定の事務センターまで届きます。住所を細かく書く必要がありません。

届出書の様式は、日本年金機構ホームページの主な届書様式の一覧からダウンロード可能です。

全国の事務センター一覧はこちらです。届出書は、事業所所在の都道府県にある事務センター宛に郵送しましょう。

管轄の年金事務所は、全国の相談・手続き窓口の各都道府県のページで確認ができます。事業所が所在する地域によって異なるため、確認してから郵送を行いましょう。

まとめ

アルバイトを社会保険に加入させるメリットやデメリット、加入手続きについて解説しました。

アルバイトを社会保険に加入させると、社会的信用を高めたり優秀な人材を獲得しやすくなったりといったメリットがあります。一方、社会保険料の支払いによる金銭面の負担や、加入者の人数が増えたことによる事務手続きの負担が増加します。

加入手続きを怠った場合、状況によっては罰則も科されるため、必ず手続きを行いましょう。法改正による加入条件の変更もあるため、適宜対象者の見直しが必要です。

社会保険の手続きは、加入のたびに必要なため、人数が増えると負担が大きくなります。そんなとき、労務担当者の負担を減らすために、「人事労務コボット」の導入はいかがでしょうか?

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また、管理画面はシンプルなため、操作が非常に簡単です。従業員の「名前」と「メールアドレス」を入力し、手続きに必要な書類を選ぶだけで、従業員のスマホに所定のWebフォーマットが送られます。

従業員が自ら必要な情報を入力するため、担当者の業務は確認のみになります。サインもスマホ上で行えるため、押印のために出社する必要がありません。

人事労務コボットで対応できる書類の例は次のとおりです。

  • 契約書
  • 身元保証書
  • 内定通知書、内定承諾書
  • 従業員情報登録票
  • 給与振込口座申請書
  • 通勤手当申請書
  • 緊急連絡先届

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