タレントマネジメントシステム

タレントマネジメントシステムは、従業員の能力や保有資格、実績など、スキルや才能に関する情報を一元管理するシステムです。従業員一人ひとりの適性や得意分野を可視化し、能力を最大限発揮できる組織体制の整備を目指すものです。

初めてタレントマネジメントシステムを導入する場合、わからない点も多いことでしょう。そこで今回は、タレントマネジメントシステムの概要や導入メリット、選び方などについて解説します。

タレントマネジメントシステムとは

タレントマネジメントシステムは、従業員のスキルや経験、保有資格などを一元管理するシステムです。個々の適性を正確に見極め、能力を最大限発揮できる人材配置を行います。

従業員はこれまで培ってきた能力や経験を発揮しやすくなり、自信を身につけられます。仕事での不安も軽減でき、モチベーションの向上や離職率低下が期待できるでしょう。

一方で、企業側にとっては業務品質のバラつきをなくしつつ、生産性を高められます。また、これまで気がつかなかった従業員の能力を可視化し、人材を有効活用できます。

人事システムとの違い

人事システムは、人事や労務管理の業務効率化を目指すシステムです。採用や勤怠管理、給与計算など、工数が多く掛かる業務の自動化や情報の一元管理を実現します。

タレントマネジメントシステムと異なり、多くの人事システムは人事戦略や組織力強化に関する機能を搭載していません。人事システムとタレントマネジメントシステムの併用によって、バックオフィス業務全般の効率化が望めます。

また、タレントマネジメントと人事管理の機能を両方搭載した統合型システムが、近年少しずつ増えています。人事担当者の負担を軽減するため、統合型システムを導入することも有効な選択肢です。

タレントマネジメントシステムの主な機能

タレントマネジメントシステムに搭載されている主な機能は次の6つです。

タレントマネジメントシステムの主な機能

・従業員の基本情報管理
・コンピテンシー情報の管理
・人事評価機能
・育成計画管理
・目標管理
・データ分析とレポート

従業員の基本情報管理

従業員の基本情報管理は、実績や異動履歴、勤続年数など、従業員のキャリア全般に関する情報を管理する機能です。情報の一元化によって、管理コストや情報漏洩のリスクを削減できます。

また、タレントマネジメントシステムでは、従業員の名前と顔写真が並べて表示されます。従業員数が多い大企業では、従業員の名前と顔を一致させるのは大変でしょう。タレントマネジメントシステムを導入すれば、そうした事態の発生を心配する必要はありません。

そして、保有資格やコミュニケーション能力など、従業員の持つスキルも併せて登録できます。従業員の能力や得意分野を正確に把握でき、個々の適正を見極めた人員配置を実現できます。

コンピテンシー情報の管理

コンピテンシーとは、優れた成績を残す人材の行動特性を指します。「傾聴できる」「業務の優先順位を常に考えている」など、成果を出すためにどのような行動を取っているかに着目します。

コンピテンシーは評価基準を明確化し、人事評価への納得感や公平性を高めることが目的です。行動特性は全従業員共通の項目に加え、職種や役職に応じて異なる項目を用意します。コンピテンシーモデルを事前に構築し、人事評価を行うのが一般的な流れです。

人事評価機能

評価シート作成やワークフロー機能など、人事評価を下すために必要な機能を搭載しています。評価シート作成〜人事評価まで、一連の作業をシステム上で完結できるため、人事評価に掛かる工数を大幅に削減できます。

システムには各評価手法のテンプレートが用意されており、評価シートを一から作成する必要はありません。また、複数の人事評価手法に対応しているシステムが多く、人事評価の公平性や客観性の担保につなげられます。

対応している主な評価手法には次のものが挙げられます。

主に対応している評価手法

・コンピテンシー評価
・360度評価
・OKR
・MBO

育成計画管理

育成計画管理は個人または部署単位で、従業員の育成計画立案~管理までを行う機能です。求める人物像や優れた成績を残す従業員を参考に、自社が求めるスキルや行動特性を抽出します。

設定したスキルや行動特性を身につけている人材に重要なポジションを任せます。育成計画管理は企業の中核を担える人材を早期に発見し、育成するのが目的です。また、求める人物像を明確化し、採用でのミスマッチを減らす効果も期待できます。

目標管理

個人や部署単位で、どの程度目標を達成できたかを管理する機能です。日々取り組んできた成果が数値化されることで、従業員のモチベーションを高められます。また、組織全体で掲げる目標を従業員に提示し、組織としての一体感を高める狙いもあります。

データ分析とレポート

従業員のプロフィールやスキル、職務履歴など、さまざまな情報の分析と出力ができる機能です。抽出したデータの集計〜レポート化まで、一連の作業をシステム上で完結できるため、データ分析に掛かる時間を大幅に削減可能です。

また、グラフを効果的に織り交ぜたレポートの作成によって、さまざまな用途にデータを有効活用できます。

タレントマネジメントシステムを導入するメリット

タレントマネジメントシステムの導入によって得られるメリットは、主に次の5つです。

導入するメリット

・人事評価業務を効率化できる
・適性に応じた人員配置を実現できる
・従業員のモチベーションが高まる
・スキルアップを促せる
・人材発掘や人材育成にもつなげられる

人事評価業務を効率化できる

タレントマネジメントシステムの導入によって得られるメリットは、人事評価業務を効率化できる点です。評価シートの作成から人事評価まで、一連の作業をシステム上で行うことができます。

評価シートのテンプレートやワークフロー機能がシステムに搭載されており、シートを印刷して回覧する必要はありません。人事評価に掛かる工数を大幅に削減でき、人事担当者は別の作業に時間と労力を割けます。

適性に応じた人員配置を実現できる

従業員一人ひとりの適性に応じた人員配置が行える点も、タレントマネジメントシステムを導入するメリットの一つです。スキルや実績、職務経歴の一元管理によって、従業員の適性や得意分野を正確に把握できます。

個々が能力を発揮しやすいポジションを任せることで、組織全体の生産性を高められます。

従業員のモチベーションが高まる

一人ひとりの適性を正確に見極めた人員配置によって、従業員のモチベーションを高められます。仕事で能力や経験を発揮しやすくなり、自信が身につくからです。仕事での悩みや不安も軽減し、離職率の低下も期待できるでしょう。

また、能力を発揮しやすい役割を任せることで、業務の正確性とスピードを高いレベルで両立できます。成果物の品質を一定水準以上に保ちつつ、ワークライフバランス改善を図れるでしょう。

スキルアップを促せる

タレントマネジメントシステムの導入によって、従業員一人ひとりが仕事で能力を最大限発揮できる環境を整備できます。成功体験の蓄積によって自信や積極性が身に付き、スキルアップへの意欲を高められます。

また、能力や適性、キャリアプランを正確に把握した上で、研修内容を企画できるため、効果的な研修が行えるでしょう。

人材発掘や人材育成にもつなげられる

タレントマネジメントシステムの導入によって、これまで気づかなかった従業員のスキルを可視化できます。リーダーシップやコミュニケーション能力、協調性など、数値化が難しい項目もデータ化できるため、人材の有効活用につなげられます。

近年、安定志向の高まりやフリーランスへの転向などによって、市場で優秀な人材を獲得するのは困難な状況です。内部人材の発掘によって、労働力不足解消や採用コスト削減を実現できます。

また、タレントマネジメントシステムは、従業員の不足している能力やスキルも可視化できる点も魅力の一つです。研修内容や人材育成の計画にスキル習得に向けた内容を反映し、組織力の強化を図れます。

タレントマネジメントシステムを選ぶ上でのポイント

自社に合ったタレントマネジメントシステムを選定するためにも、次の5つのポイントを意識してください。

ポイント

・導入目的を明確化する
・タレントマネジメントシステムのタイプを知る
・セキュリティ対策が万全かを調べる
・自社の人事評価手法に対応しているかを調べる
・サポート体制が万全かを調べる

導入目的を明確化する

タレントマネジメントシステムの導入によって、どのような課題を解決したいか明確化することが重要です。

タレントマネジメントシステムの多くは、人事評価の効率化や人材育成支援など、特定の領域に特化しています。多くの機能を兼ね備えた統合型システムも増えていますが、まだまだ少数です。

ミスマッチを避けるためにも、自社が人事業務で抱えている課題を把握しましょう。課題が明確になった後、システムの選定作業に臨んでください。

タレントマネジメントシステムのタイプを知る

タレントマネジメントシステムへの理解を深めましょう。

システムの多くは、人事評価の効率化や人材育成支援、人材活用といった特定の分野に特化しています。多くの情報を集め、どのような機能を搭載したシステムを求めているかを明確にしてください。

また、ミスマッチを避けるためには、人事業務のどの分野を改善したいのか把握しておくことも重要です。システムの選定作業に入る前に、現状把握に努めておきましょう。

セキュリティ対策が万全かを調べる

強固なセキュリティ対策を講じているベンダーを選択しましょう。

タレントマネジメントシステムには、従業員に関する多くの情報を保存します。仮に情報が流出した場合、従業員との信頼関係が崩壊します。取引先や顧客からの信頼も失うでしょう。

通信の暗号化や脆弱性診断など、情報漏洩を防ぐためにどのような取り組み内容を講じているか、Webサイトで確認するようにしてください。また、プライバシーマークやISMSを取得しているということは、第三者機関からセキュリティ対策を認められている証であるため、有効な判断材料になります。

自社の人事評価手法に対応しているかを調べる

自社が導入している評価手法に対応しているかどうかも重要なポイントです。人事評価の手法には、360度評価やコンピテンシー評価、OKRなど、さまざまな評価手法が存在します。

自社の評価手法に対応していないシステムを選択した場合、評価手法を変更しなければなりません。評価手法の比較や評価基準を見直さなければならず、人事担当者に大きな労力が掛かります。評価手法変更に対する戸惑いや不満の声が発生する可能性もあるでしょう。

人事評価制度の見直しを招かないよう、自社の人事評価手法に対応しているかを確認してください。また、将来的に評価手法の変更を考えている場合、候補となる手法に対応しているかも併せて確認しましょう。

サポート体制が万全かを調べる

ベンダーから手厚いサポートが望めるかどうかも重要なポイントです。特に、初めてタレントマネジメントシステムを導入する場合、安定して運用できるまで時間が掛かります。不安やわからない点も多いでしょう。

問い合わせに対してすぐに回答が得られると、トラブルが起きても早期解決が望めます。導入〜運用まで一貫したサポートが得られるか、サポートツールは充実しているかなど、安心して利用できるかを確認してください。

【比較】おすすめのタレントマネジメントシステム

ユーザーからの評価が高いタレントマネジメントシステムを6つ紹介します。選定作業の参考にご活用ください。

タレントパレット

タレントパレットは、株式会社プラスアルファ・コンサルティングが提供するタレントマネジメントシステムです。

タレントパレットの特徴は、多機能性です。コンピテンシー評価やOKE、MBOなど、さまざまな評価手法に対応しています。評価項目や甘辛調整の設定など、自社の状況に応じて自由に設定できるため、人事評価での納得度を高められます。

人事評価に必要な業務はシステム上で完結するため、評価者と何度もやりとりを重ねる必要はありません。また、スキル管理eラーニングによって、効果的な人材育成を実現できます。

そして、労務管理や採用管理を効率化する機能も搭載しており、バックオフィス業務全般の効率化が望めます。

料金プラン:

  • 問合せ

公式サイト:

HRBrain

HRBrainは、株式会社HRBrainが提供するタレントマネジメントシステムです。

人事評価の集計作業を自動化し、人事評価に掛かる工数を大幅に削減します。進捗管理や評価提出の催促もワンクリックで行えるため、評価者と何度もやり取りを重ねる必要はありません。

また、評価プロセスや評価基準の明確化によって、テレワークで発生しがちな人事評価のブラックボックス化を防ぎます。そして、1on1ミーティングによって、人事評価での客観性や公平性を高められます。

料金プラン

  • データベースプラン:問合せ
  • タレントマネジメントプラン:問合せ

公式サイト:

カオナビ

カオナビは、株式会社カオナビが提供するタレントマネジメントシステムです。ユーザーからの評価が高く、7年連続で市場シェアNo.1を誇ります。

カオナビの特徴は、利便性と安全性を高いレベルで兼備している点です。従業員の情報管理は、業界別に用意された管理テンプレートを活用できるため、すぐに運用を始められます。物流や介護、外食など、さまざまな業界に対応しているだけでなく、カスタマイズも可能です。

また、360度評価やOKR、MBOなど、さまざまな評価手法に対応しています。各評価手法のテンプレートを搭載しており、フォーマットを作成する必要はありません。自社の状況に応じてオリジナルの人事評価制度も整備できます。

そして、同社はプライバシーマークとISMSを取得しており、強力なセキュリティ対策を講じています。サイバー攻撃や自然災害のダメージを受けたとしても、データは自動バックアップされており、最短での復旧が可能です。

料金プラン:

  • 問合せ

公式サイト:

HRMOSタレントマネジメント

HRMOSタレントマネジメント

HRMOSタレントマネジメントは、株式会社ビズリーチが提供するタレントマネジメントシステムです。HRMOSタレントマネジメントは、組織力強化につながる機能を多数搭載しているシステムです。

従業員のスキル管理や目標管理に加え、コンディションも管理します。仕事へのモチベーションや企業へのエンゲージメントを可視化し、素早い対応につなげられます。丁寧な個別ケアを継続することで、離職を防げるでしょう。

また、組織診断によって従業員の思いを汲み取り、個々の適性を踏まえた人員配置や組織再編につなげられます。

料金プラン:

  • 問合せ

公式サイト:

ヒトマワリ

ヒトマワリ

ヒトマワリは、株式会社Touch&Linksが提供するタレントマネジメントシステムです。

ヒトマワリの特徴は、コストパフォーマンスに優れている点です。スタートプランを選択すれば、月額10,000円から利用できます。初期費用は発生しません。

機能面では管理能力に優れ、BI機能によって従業員の有給取得率や離職率、残業時間など、さまざまな指標をデータ化できます。自社の強みと弱みを一目で把握できる点が、BI機能を活用するメリットです。

また、応募者や求人、面接日程など、採用業務に関する機能も搭載しています。RPO機能を活用すれば、採用業務を外部企業へ委託でき、自社のリソースをコア業務へ集中できます。

料金プラン

  • スタートプラン:月額10,000円~
  • スタンダードプラン:月額60,000円~

公式サイト:

ミイダス

ミイダスは、ミイダス株式会社が提供するタレントマネジメントシステムです。ミイダスは、採用力強化に寄与する機能を多く搭載したシステムです。コンピテンシー評価を活用し、自社で活躍が望める人材の行動特性を明確化します。

求人媒体や面接で求職者を選別する精度を高め、ミスマッチや早期離職を防ぎます。ミイダスは定額制を採用しており、契約期間中に何人採用しても追加費用は発生しません。費用を気にせず、求職者のスカウトやメッセージを送信できます。

採用のノウハウに乏しく、人手不足に悩まされている企業向けのシステムだといえるでしょう。また、部署や組織内の課題を可視化するシステムとしても活用できます。

料金プラン:

  • 問合せ

公式サイト:

まとめ

タレントマネジメントシステムを導入する目的は、人材を有効活用し組織力強化につなげるためです。従業員のスキルや保有資格、職務経歴などを一元管理し、能力や得意分野を正確に把握します。

適性に応じた人員配置を実現し、組織全体の生産性や従業員のモチベーションを高められます。ミスマッチを避けるためにも、導入目的を明確化してから選定作業に臨んでください。

また、人事業務の負担を軽減する方法は、タレントマネジメントシステムの導入だけではありません。当社ディップ株式会社が提供する「人事労務コボット」を導入すると、入社手続きに関する工数を大幅に削減できます。

人事労務コボット

雇用契約書や身元保証書、内定承諾書など、従業員からの承諾が必要な書類の作成〜締結まで、オンライン上で完結できます。給与の振込先や運転免許証のコピーなど、従業員の個人情報はWebフォームから収集するため、書類を用意する必要はありません。

一方、従業員も書類への署名や必要事項の記入はスマートフォン上で行えるため、スムーズに作業を進められます。人事業務の工数増大にお悩みの方は、当社ディップ株式会社が提供する「人事労務コボット」の導入をご検討ください。