人事や労務担当の方は、従業員の雇用手続きについて正しく理解していますでしょうか?

会社が従業員を雇用する際は、労働契約関係の書類はもちろん、社会保険や雇用保険といった各種保険に加え、所得税や住民税などの税金の手続きも必要です。

手続きに不備があれば従業員とトラブルになる可能性もあるため、人事や労務担当者は従業員の雇用手続きについて、正しい知識に基づきスムーズに実施する必要があります。

今回は従業員の雇用手続きについて、雇用手続きに必要な書類や手続きの流れ等を分かりやすく解説します。

雇用手続きに対しての理解を深めるためにも、ぜひ最後までご覧ください。

雇用手続きに必要な書類一覧

まず従業員を雇用する際にはどのような書類が必要になるのか、「会社側」と「内定者側」の2つの立場で解説します。

会社側と内定者側のそれぞれが用意する書類は、主に以下の通りです。

会社側が用意する書類内定者側が用意する書類
内定通知書
採用通知書
労働条件通知書
雇用契約書
入社誓約書
扶養控除等申告書
健康保険被扶養者異動届
国民年金第3号被保険者届 など
マイナンバー
給与振込先の口座情報
源泉徴収票
雇用保険被保険者証番号
基礎年金番号 など  

では、まずは会社側が用意する書類について、1つずつ解説します。

会社側が用意する書類

会社が従業員を雇用する際には、主に以下の書類を用意します。署名や押印が必要な契約書や、交付義務がある書類が中心です。

会社側が用意する書類

・内定通知書・採用通知書
・労働条件通知書・雇用契約書
・入社誓約書
・扶養控除等申告書
・健康保険被扶養者異動届・国民年金第3号被保険者届

では、用意する書類についてそれぞれ解説します。

内定通知書・採用通知書

内定通知書と採用通知書を用意する際は、両者の書類が持つ効力の違いに注意しましょう。

採用通知書内定通知書
・採用の決定を知らせる通知書
・求職者の意思に関係なく会社が一方的に採用を伝えるもの
・法的な拘束力は発生しない
・採用の内定を知らせる通知書
・求職者の入社意思が確認できた状態で発行するもの
・法的な拘束力が発生する

採用通知書は求職者の入社意思に関係なく、企業側が一方的に発行する書類です。そのため、求職者に対して法的な拘束力はありません。

ただし採用通知書を発行した後に、会社の都合で採用を取り消すと違法行為になるので気をつけましょう。

一方、採用通知書は求職者の入社意思が確認できた時点で発行する書類です。また、内定通知書は労働契約を締結する効果もあるため、法的な拘束力が生じます。

雇用契約書・労働条件通知書

労働条件通知書は交付が義務化されているため、従業員を雇用する際には必ず用意する書類です。

一方、雇用契約書は交付の義務がないため、交付しないことでの罰則はありません。とはいえ、労使間でのトラブルを防ぐためにも、多くの企業では雇用契約書も交付しています。

また、雇用契約書と労働条件通知書の双方を兼ねて、労働条件契約書として交付するケースもあります。労働条件通知書以外の書類では、双方の署名や押印が必要です。

入社誓約書

入社誓約書とは、会社の方針や服務規程を内定者に伝え、会社へ損害を与えないようにするための誓約書です。

入社後の双方の認識違いを防ぐ効果があり、入社承諾書も兼ねて交付するケースもあります。いずれの場合も、内定者本人による署名と捺印が必要です。

扶養控除等申告書

扶養控除等申告書は、会社が従業員の扶養状況を把握し、年末調整の手続きで必要になる書類です。なお、正式名称は“給与所得者の扶養控除等(異動)申告書”と言います。

扶養家族の有無に限らず、給与所得がある者は基本的に提出が必要です。提出できるのは1事業所のみで、副業している場合は本業の会社へ提出します。

申告書は従業員本人が税務署のホームページでダウンロードもできますが、基本的には会社側で用意してあげましょう。

健康保険被扶養者異動届・国民年金第3号被保険者届

「健康保険被扶養者異動届」と「国民年金第3号被保険者届」は、ともに社会保険への加入手続きで必要な書類です。

「扶養控除等申告書」とは違い、いずれも扶養者がいる従業員のみが提出する書類です。

「健康保険被扶養者異動届」は、被扶養者の届出に変更がある場合に、「国民年金第3号被保険者届」は、従業員の被扶養者が「第3号被保険者」に該当する場合に提出します。

内定者が用意する書類

ここまで従業員を雇用する際に、会社側が用意する書類について解説してきました。続いて、内定者が用意する書類を解説します。

内定者が用意する書類

・マイナンバー
・給与振込先の口座情報
・源泉徴収票
・雇用保険被保険者証番号
・基礎年金番号

内定者が用意する書類は、主に上記の5つです。では、1つずつ解説します。

マイナンバー

マイナンバーは税金や保険関係の手続きに必要となります。マイナンバーはマイナンバーカードやマイナンバー通知カード、住民票で番号を確認できます。

マイナンバーカードやマイナンバー通知カードの場合はコピーを、両方ともない場合は住民票を発行してもらい、内定者から回収します。

給与振込先の口座情報

会社が従業員へ給与を支払うための口座情報です。会社側で用意したフォーマットに記入してもらうほか、口座情報のコピーを提出してもらう方法もあります。

また、給与支払いの際には「賃金支払の5原則」の遵守が求められます。

振込手数料の削減を目的に、給与の振込手数料を従業員に負担させることは、賃金支払の5原則の1つ「全額払いの原則」に反するため注意しましょう。

源泉徴収票

源泉徴収票は、内定者が以前の勤務先を退職した年と、自社へ入社する日が同年の場合に提出が必要です。

年末調整時に必要となり、退職の際に会社から交付されています。なお、新卒社員の場合も入社日と同年にアルバイトでの収入があれば、源泉徴収票の提出が必要です。

雇用保険被保険者証番号

雇用保険加入履歴がある内定者に対しては、雇用保険被保険者証番号の提出を求めます。アルバイトやパートであっても、雇用保険に加入していれば提出の対象です。

もし内定者から紛失したとの申し出があった場合は、ハローワークへ雇用保険被保険者証番号の照会を依頼すれば、前職の会社名をもとに照会してくれます。

基礎年金番号

基礎年金番号は社会保険の手続きに必要となり、年金手帳や基礎年金番号通知書で番号を確認できます。

ただし、2022年4月より年金手帳の交付は廃止されています。2022年4月以降の交付、もしくは年金手帳を紛失している場合は、基礎年金番号通知書により再発行できます。

従業員を雇用する際の手続きの流れ

ここまで従業員を雇用する際に必要となる書類について解説してきました。ここからは、実際に雇用手続きを進める際の流れを解説します。

従業員を雇用する際の手続きの流れ

・雇用契約を締結する
・各種保険の手続きをする
・各種税金の手続きをする
・各種書類を提出する

雇用手続きの流れは、主に上記の通りです。では、それぞれの項目について解説します。

雇用契約を締結する

内定者の入社が確定したら、労働条件通知書や雇用契約書を交付し、内定者と正式に雇用契約を締結します。

労働条件通知書や雇用契約書に不備があると、入社後に労働者とトラブルになる可能性があります。双方が納得する形で、雇用契約を締結させましょう。

各種保険の手続きをする

労働契約が締結したら、続いて各種保険の手続きに移ります。なお、人事や労務担当者の基礎知識として必要な「社会保険」についても、併せて解説します。

社会保険(狭義)の加入手続き

社会保険とは、「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「労災保険」「雇用保険」の5つを含めた保険の総称です。

保険の名称役割
健康保険従業員が病気やケガにより医療機関を受診した場合の、治療費等を補助するもの
厚生年金保険老齢給付や障害年金の他、加入者が死亡したときの遺族年金として補助するもの
介護保険加入者が介護状態となった際に、必要な介護サービスを受けられるように補助するもの
労災保険勤務中および通勤中にケガや病気となった際に、治療費等を補助するもの
雇用保険従業員は失業した際に、失業給付や教育訓練を受けるために補助するもの

また上記の保険のうち、健康保険と厚生年金保険を含めたものを「社会保険(狭義)」労災保険と雇用保険を「労働保険」と分類するケースもあります。

自社が社会保険の適用事業所である限りは、労働者の意思に関係なく対象となる従業員は加入手続きが必要です。

社会保険(狭義)の加入の際は、「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」を作成し、事務センターまたは管轄の年金事務所に提出します。

ただし、会社が加入している健康保険が全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は、個別での手続きが必要です。

雇用保険の加入手続き

雇用保険は、主に従業員が失業した際に失業給付や教育訓練を受けるための保険です。労働者を1人でも雇う場合は、雇用保険への加入手続きが必要です。

「雇用保険被保険者資格取得届」を管轄のハローワークに提出すれば、「雇用保険被保険者証」と「雇用保険資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」が交付されます。

また、「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する際は、タイムカードや労働者名簿、雇用契約書といった、雇用を証明できるものを添付しなければなりません。

労災保険の加入手続き

労災保険は、業務中または通勤中などに怪我や病気に見舞われた場合に、労働者に給付される保険です。従業員を1人でも雇う事業所は、加入が義務付けられています。

労災保険の加入対象は、1週間の所定労働時間が20時間以上かつ、31日以上の雇用見込みがあるすべての従業員です。また、正社員やアルバイトといった雇用区分は問われません。

労災保険については、特にこれといった手続きは必要ありません。ただし、労災保険の給付を受ける際は、原則として被災者本人が申請します。

各種税金の手続きをする

所得税や住民税といった各種税金の手続きも、抜かりなく実施しましょう。

所得税の算出に必要な源泉徴収簿の作成や、住民税の「普通徴収」と「特別徴収」の違いなど、税金の手続きで特に注意すべき点について解説します。

所得税の手続き

源泉徴収簿は、給与や賞与などの所得、社会保険料等の控除額などを記入し、正確に源泉徴収を実施するために必要となる帳簿です。

内定者から受け取った「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の内容をもとに、作成しましょう。

住民税の手続き

住民税の手続きは、「普通徴収」か「特別徴収」かで手続きが変わるので注意しましょう。

普通徴収特別徴収
・会社ではなく個人で納税手続きをする
・主に給与所得がない個人事業主やフリーランスが対象
・毎月の従業員の給与から天引きする形で納税する
・給与所得があるサラリーマンなどが主な対象

会社が従業員を雇用する場合は、原則として特別徴収にて住民税を徴収しなければなりません。

ただし、フリーランスや個人事業主と業務委託契約を交わす場合は、給与所得者ではないため普通徴収となります。

また、住民税は前年の所得に対して課税される税金です。そのため、過去に所得が無い社員に対しては、住民税の手続きは必要ありません。

各種書類を提出する

ここまで解説してきた書類を作成したら、税務署やハローワーク、役所や年金事務所等に各種書類を提出します。

提出書類や添付書類の漏れがないかを確認するのはもちろん、従業員への交付漏れがないかも併せて確認しましょう。

従業員の雇用手続きなら「人事労務コボット」

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人事労務コボットは、入社手続きに必要な書類をペーパーレス化することで、作業負担を軽減するためのシステムです。

人事労務コボットを活用すれば、面倒な入社時手続きも最短即日で完結します。

なぜ人事労務コボットが従業員の雇用手続きを効率化できるのか、その理由について解説します。

人事労務コボットとは

人事労務コボットとは、当社ディップ株式会社が提供する人事や労務担当者向けのサポートツールです。

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以上の手続きだけで、簡単に従業員のスマートフォンへと必要なフォーマットを送れます。

あとはフォーマットを受け取った従業員がスマートフォンを使い、情報登録と電子サインをすれば、入社手続きが完了します。

では、実際に人事労務コボットはどのような機能を備えているのか、次項で詳しく解説します。

人事労務コボットの機能・特徴

人事労務コボットの機能と特徴を、一覧表にてまとめました。

主な機能内容・特徴
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個人情報の取得・変更従業員の個人情報を、WEBフォームにて回収できます。
回収した情報は、オンタイムで管理画面へと反映します。
オンライン上での保証人サイン離れた場所に住む保証人の申請手続きについて、保証人に契約書を送信し、電子サインによるオンライン承諾が可能です。
ビザ・運転免許証・雇用契約期限アラート期限が迫った従業員の雇用期間や運転免許証等の期間に対し、アラートにて通知します。
本部と拠点間での情報共有管理画面にて一括操作することで、本部と各拠点間の情報共有がスムーズになります。
マイナンバー管理セキュリティ性の高いマイナンバーについても、システム上で管理可能です。
社労士との共同管理人事や労務担当者と、外部に依頼した社労士による共同管理も可能です。
CSV出力必要なデータをCSV形式にて出力可能です。
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さらに、人事労務コボットは機能面だけではなく、サポート面でも充実しています。

人事労務コボットの導入後は、当社ディップ株式会社のカスタマーサクセスチーム(CS)が、専任でサポートにつきます。

情報の管理や浸透、運用推進のためのアドバイスなど、人事労務コボットの活用を全面的にサポートし、導入を成功へと導きます。

まとめ

ここまで従業員の雇用手続きについて、必要な書類や手続き方法などを解説していきました。

会社が従業員を雇用する際には、会社側と従業員側で用意する書類が異なるため、それぞれ書類の交付漏れや提出漏れがないように注意しなければなりません。

また、従業員から提出された書類をもとに、各種保険や税金の手続きも進める必要があります。

本記事の内容を参考に、スムーズな雇用手続きができるようにしましょう。

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