休職手当

休職手当はどんなときに支給されるのか、疑問に思う人事労務担当者の方もいるのではないでしょうか?休職手当は、病気休職で休職している場合に支給されます。休職手当の支給条件は全部で4つあり、すべてを満たすと手当が受け取れます。

今回は、休職手当の支給条件やもらえる金額、受給期間、注意点など、基本情報をわかりやすく解説します。休職手当の申請で迷わないように、しっかりと確認していきましょう。

休職の概要と種類

休職とは、従業員が自己都合で長期間、会社を休むことです。企業は従業員と労働契約を継続したまま、一時的に労働義務を免除します。

休職制度は法律で定められておらず、企業の義務ではありません。そのため、休職の取得回数や期間、給与の支払いなどは、会社の規則によって異なります。

休職が決まったら、休職願を従業員本人に提出してもらうことが一般的です。休職の種類は、大まかに5つに分類できます。ここからは、休職の種類と内容を紹介します。

休職の種類

・病気休職
・事故休職
・起訴休職
・調整休職
・依願休職

病気休職

病気休職は、業務に関係ない理由で従業員が病気やケガをして休むときに適用されます。

休職の際には医師の診察を受け、診断書を提出する必要があります。職場復帰の際も、勤務ができることの証明として診断書が必要です。

業務中や通勤中の病気やケガは労働災害(労災)のため、病気休職には含まれません。

事故休職

事故休職は、業務外の傷病以外の事故で会社を休むときに適用されます。

たとえば、刑事事件を起こして逮捕されている場合は事故休職です。他にも、ケガや病気など他の理由にあてはまらない都合による欠勤は、事故休職になります。

起訴休職

従業員が起訴されて休むときは、起訴休職です。刑事事件の被告人として起訴され、従業員を一定の期間休職させる場合に適用します。

起訴休職は、従業員が出社すると企業の信用を下げ、職場秩序を乱すと判断されたときにのみ認められます。起訴休職をしている従業員は、裁判が確定するまで解雇できません。

調整休職

調整休職は、他の制度との調整中、従業員を一時的に休ませるときに適用されます。たとえば、組合専従休職や出向休職などは調整休職です。

依願休職

依願休職は、家事や留学、ボランティア活動などを理由として、従業員から休職の申し出があった場合に適用されます。

休職手当とは

休職手当とは、健康保険の被保険者が業務外の病気やケガで休職したときに受け取れる手当のことです。休職の種類の中では、「病気休職」の場合に支給されます。

休職手当は、被保険者とその家族の生活を保障するためにある制度です。そのため、会社を連続して休んだ3日間を経て、会社から十分な報酬を得ていないと判断されると支給されます。

休職手当の申請は保険組合に対して、企業または対象の従業員が行います。

休職手当の支給条件

休職手当の支給条件は4つあり、すべての条件を満たすと手当が受け取れます。

支給条件

・条件1:社会保険に加入していること
・条件2:ケガや病気で働けないこと
・条件3:連続して4日以上仕事を休んでいること
・条件4:休職中に給与を受け取っていないこと

各支給条件をそれぞれ詳しく解説していきましょう。

条件1:社会保険に加入していること

休職手当の支給を受けるには、国民健康保険ではなく、社会保険に加入している必要があります。

ただし、休職手当の支給を受けている従業員が受給中に社会保険を脱退した場合、条件を満たすと継続して支給を受けられます。その条件は、次の2つです。

  1. 退職日までに1年以上の被保険者期間がある
  2. 資格喪失時に傷病手当金を受けているまたは支給条件を満たしている

例外として、これらの条件を満たしている場合、社会保険に加入していなくても休職手当を受け取れます。

条件2:ケガや病気で働けないこと

休職手当を受け取るには、ケガや病気で働けないことを証明する必要があります。このケガや病気には、健康保険の給付対象とならない美容整形などは含まれません。

自己申告だけでは労務不能だと認められないため、かかりつけの医師に診断書を書いてもらいます。ケガや病気で働けない状況かどうかは、診断書や業務内容などを考慮して判断されます。

条件3:連続して4日以上仕事を休んでいること

休職手当を支給されるには、3日間の待機期間を経て、4日以上仕事を休んでいる必要があります。待機期間の初日は、病気やケガで働けない状態になった日です。

休職手当の支給対象となるのは、4日目からです。待機期間には、土日や祝日、有給休暇など公休日も含まれます。そのため、給与の支払いがあったかは関係ありません。

休んだ期間は、「連続した」4日以上であることが必要です。たとえば、2日休んで1日勤務、その後2日休むといった状態だと、待機期間は完成せず、休職手当は支給されません。

条件4:休職中に給与を受け取っていないこと

支給条件の一つは、休職中に給与を受け取っていないことです。ただし、給与を一部だけ受け取っている場合は、傷病手当金と受け取った給与の差額分のみ支給されます。

有給休暇を取得している場合、給与が発生しているため、傷病手当金は受け取れません。休職手当は生活保障のための制度のため、給与と二重で受け取ることはできません。

休職手当で支給される金額

休職手当で支給される金額

休職手当で支給される1日あたりの金額は、継続した12ヶ月間の各月の標準月額を平均した額÷30日×2/3で計算されます。

支給開始日とは、最初に給付が支給される日のことです。たとえば、1月~6月の標準報酬月額が200,000円で、7月~12月の標準報酬月額が250,000円の場合、休職手当で支給される1日あたりの金額は5,000円です。

支給開始日以前の期間が12ヶ月に満たない場合は、次のどちらか低い方の金額が支給されます。

  1. 支給開始日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均
  2. 標準報酬月額の平均値300,000円

休職手当の支給期間はいつからいつまで?

休職手当が支給される期間は、支給開始日から最長で1年6ヶ月です。1年6ヶ月の間に職場復帰をすると、休職手当は支給されなくなります。

ただし、職場復帰後、再度休職を始めると、初回の休職の支給開始日から通算して1年6ヶ月まで休職手当が支給されます。2回目以降の休職の支給期間は、1回目の支給開始日から起算して計算されるため注意が必要です。

休職手当申請時の注意点

ここまで、休職手当の支給条件と金額、期間を確認してきました。では、休職手当を申請する場合、事前に押さえておくべき注意点にはどういったものがあるでしょうか?

休職手当申請時に注意することは、主に3点あります。それぞれ具体的に解説していきましょう。

注意点

・休職中も社会保険料の支払いが発生することを伝える
・休職中の連絡先を聞いておく
・就業規則を確認する

休職中も社会保険料の支払いが発生することを伝える

対象の従業員に対して、休職中も社会保険料の支払いが発生することを伝えましょう。なぜなら、従業員によっては金額の負担が大きい可能性があるからです。

休職期間の間は、会社から給与が支払われません。しかし、社会保険料の金額は給与が支払われていたときと同じままなので、従業員に負担がかかります。

社会保険料は、健康保険料や厚生年金保険料など、本来なら給与から天引きされている保険料です。給与の支払いが無い休職中は、銀行振込などで支払ってもらうことになります。そのため、あらかじめ社会保険料がいくらかかるのか伝えておきましょう。

休職中の連絡先を聞いておく

休職前に、休職中の連絡先を聞いておきましょう。休職中に実家に帰ったり、電話番号が変わったりする可能性があるからです。

連絡先がわからないと、休職中のコミュニケーションが取れず、従業員の状況が確認できません。休職中のコミュニケーションは、従業員が復帰できるか判断するためにも重要です。

また、休職手当申請の際には、従業員と書類のやり取りをする必要もあります。書類のやり取りの際には、従業員と連絡をとって送付先住所を聞かなければなりません。

休職中であっても、従業員は会社と雇用契約を継続している状態であるため、必ず連絡が取れるように、休職中の連絡先を聞いておきましょう。

就業規則を確認する

休職手当申請前に、就業規則を確認しておきましょう。休職の条件や休職中の待遇などが、就業規則に記載されているからです。

休職は企業の義務ではないため、取得回数や期間、給与の支払いなどは就業規則で定められています。就業規則と異なる対応をしないように、就業規則を確認しておきましょう。

休職手当金申請の流れ

休職手当金申請の準備が完了したら、休職手当金を申請していきます。休職手当金の申請は、4つの手順で完了します。1度目の休職期間が終わり、引き続き休職を継続する場合は、手順2~4を繰り返して手続きを行います。

休職手当金申請の流れを、一つずつ確認していきましょう。

申請の流れ

・ステップ1:従業員から休職の申請を受ける
・ステップ2:従業員から申請に必要な書類を受け取る
・ステップ3:添付書類を準備して申請する
・ステップ4:従業員と定期的に連絡を取り休職期間を延長するか判断する

ステップ1:従業員から休職の申請を受ける

まず、従業員から休職の申請を受けます。

休職の申請を受ける際は、就業規則に従って対応する必要があります。

従業員が休職の意志を周囲に相談していたり、欠勤が連続していたりする場合も、就業規則の手続きに沿って休職の申請を受けましょう。

ステップ2:従業員から申請に必要な書類を受け取る

休職の申請を受けたら、従業員から申請に必要な書類を受け取りましょう。

例えば、従業員の求職理由が病気やケガの場合、医師の診断書が必要です。

また、就業規則で休職に関する書類の提出を定めている場合は、その書類も提出してもらいましょう。

ステップ3:添付書類を準備して申請する

従業員から必要な書類を受け取ったら、添付書類を準備して申請しましょう。

添付書類の例は次のとおりです。

状況添付書類
傷病の原因が他者の行為にある第三者行為による傷病届
被保険者が死亡し、相続人が請求する被保険者と相続人の続柄がわかるもの (戸籍謄本など)
申請書に被保険者のマイナンバーを記載した・本人確認書類
・マイナンバーカードのコピー
・①と②の書類
 ①番号確認書類(住民票など)
 ②身元確認書類(運転免許証コピーなど)
労災保険から休業補償給付を受給している休業補償給付支給決定通知書のコピー
老齢年金の給付を受けており、マイナンバーによる情報照会を希望しない※以下、どちらの書類も必要
①老齢退職年金給付の年金証書またはこれに準ずる書類のコピー
②老齢退職年金の直近の額を証明する書類のコピー(年金額改定通知書など)
障害手当金の給付を受けており、マイナンバーによる情報照会を希望しない障害手当金の支給を証明する書類のコピー
障害厚生年金の給付を受けており、マイナンバーによる情報照会を希望しない※以下、どちらの書類も必要
①障害厚生年金給付の年金証書またはこれに準ずる書類のコピー
②障害厚生年金の直近の額を証明する書類のコピー(年金額改定通知書など)
支給開始日以前の12ヶ月以内で事業所に変更があった 定年再雇用などで被保険者証の番号に変更があった以前の事業所の名称、所在地及び事業所に使用されていた期間がわかる書類

それぞれ状況に応じた添付書類を準備して、申請を行いましょう。

ステップ4:従業員と定期的に連絡を取り休職期間を延長するか判断する

申請後、従業員と定期的に連絡を取り、休職期間を延長するか判断をしましょう。休職期間を延長する場合、ステップ2とステップ3を繰り返すことになります。

復職ができるかどうかは、医師の判断を参考にして判断を行います。復帰が難しい場合は、休職期間の延長または自然退職、解雇のうち、いずれかの手続きが必要です。

まとめ

休職手当は、従業員が病気やケガで休職したときに支給される手当です。支給条件は4つあり、すべてを満たすと手当を受け取ることができます。

休職手当申請の際には、従業員の連絡先を聞いたり就業規則を確認したりと、手続きに必要な準備を行います。また、従業員には休職中も継続して社会保険料がかかるため、伝えておきましょう。

休職手当の申請は、給与の支払いと同じように毎月行うことが一般的です。従業員の休職が決まったら、休職手当の支給対象者か確認し、手続きを進めましょう。

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