業務のデジタル化が進められている昨今において、申請業務の決裁もシステム化を行う企業が増えてきました。従来の紙からの申請から電子での申請に切り替えることで、ペーパーレス化の実現など、多くのメリットが電子決裁にはあります。
そこで今回は、電子決裁の概要から、実際に電子決裁システムを導入するメリット、導入時のポイントなどについて解説します。
電子決裁とは
電子決裁とは、その名のとおり「電子」を用いて文書や申請書などの決裁処理を行うことです。
従来、交通費精算や出張精算、稟議書など紙で用いていた申請書類がすべてオンライン上で行えるようになります。そのため、パソコンやスマートフォンなどから決裁ができるため、必ずしも承認者が社内にいる必要はなく、決裁のスピードが上がるとともに業務効率化にも貢献します。
また、申請した電子書類やデータ、承認した電子書類やデータはすべてオンライン上で保管ができるようになるため、保管場所のコスト削減などにも貢献します。
当然ですが、全てオンライン上で申請から承認、保管までが完了するため、紙による申請業務はなくなります。そのため、これまで発生していた紙のコストは必要がなくなり、コスト削減と業務のペーパーレス化の実現にもつながります。
電子決裁が注目される背景
電子決裁が注目されている背景には、「新型コロナウイルス感染症の流行」と「政府のデジタル化促進」が挙げられます。
2020年、全世界規模で新型コロナウイルス感染症が大流行しました。そのため、従来のビジネスモデルからのチェンジが求められるようになりました。
その一つが「テレワーク」です。感染症対策によって会社への出社が制限されることにより、紙での申請業務が従来よりも時間がかかってしまうものになってしまいました。
つまり、これまで会社に出社して業務を行うのが当たり前だったものが、会社に出社せずとも仕事が行える環境を整えることが企業には求められるようになったのです。そのため、申請業務など紙で行っていた業務も、オンラインで対応したいというニーズが高まったため、電子決裁に注目が集まりました。
また、「政府のデジタル化促進」も大きな要因です。政府はあらゆる分野でのデジタル化を推進していますが、電子決裁においては「電子決裁移行加速化方針」が掲げられています。
「電子決裁移行加速化方針」とは、従来の紙で行っていた決裁を業務が非効率化してしまうものや複雑化してしまうもの、災害時に必要なものを除いて速やかに電子決裁への移行をすると定められたものです。
実際に茨城県庁では決裁業務のデジタル化が進んでおり、2018年7月の時点で決裁業務の99%を電子化したとしています。行政の電子決裁化が進んだことにより、民間企業の電子決裁化も広がりを見せることになりました。
電子決裁システムとは
電子決裁システムとは、その名のとおりオンライン上のシステムを活用し、パソコンやスマートフォンで決裁業務を行うシステムのことです。
電子決裁システムでは、申請から承認までを行えることに加え、承認者の設定はもちろん、承認者に対して申請を促すメールが自動で送信されるなど業務をスムーズに行う設定がされています。
システム上で設定された決裁フローに沿って進められるため、申請者や承認者は社内にいる必要はありません。インターネット環境が備わっていれば、どこからでも申請ができ、どこからでも承認を行うことが可能です。そのため、テレワークを推進している企業などは積極的に導入を進めています。
電子決裁システムの導入で得られるメリット
電子決裁システムの導入で得られるメリットには、主に次の4点が挙げられます。それぞれについて解説していきます。
・決裁スピードの向上
・ペーパーレス化の実現
・テレワークの実現
・内部統制の強化
決裁スピードの向上
電子決裁システムを導入することで、紙での決裁業務と比較して決裁スピードは大幅に向上します。なぜなら、「いつでも、どこでも」決裁が可能になるからです。決裁を待つ時間が大幅に削減されるため、業務効率化にも貢献ができます。
また、紙での申請を行った際は、記入ミスなどが発生してしまうと、再度書類の書き直しが発生するなど手間と時間がかかってしまいます。電子決裁システムであれば、記入ミスがあった箇所については、申請前にアラートで教えてくれるため、ミスなく申請が可能です。
そのため、紙での申請よりも、決裁スピードは大幅に向上するでしょう。
ペーパーレス化の実現
文字どおり、電子決裁システムは申請書を電子化させ、オンライン上で申請業務を行うものです。そのため、紙で申請を行うことはなくなり、業務のペーパーレス化を実現できます。
ペーパーレス化が実現すれば、これまで申請業務に必要だった紙のコストや印刷のコストがなくなります。また、紙の申請書では必要だった保管スペースの確保やコストも不要になるため、大幅なコストカットを実現できます。
他にも、ペーパーレス化を行うことで、書類の検索が容易になります。申請業務に関わる申請書はすべてシステム上で保管がされているため、後から必要になった場合でも検索機能を用いることで簡単に探し出すことが可能です。
電子決裁システムを導入してペーパーレス化を実現することで、コスト削減と業務効率化の両面を達成できます。
テレワークの実現
繰り返しになりますが、電子決裁システムを導入することで「いつでも、どこでも」承認を行うことが可能になります。そのため、家や外出先から業務を行ったり、テレワークを実現したりすることにも貢献します。
実際にテレワークを実施していても、申請業務のみは紙で行っているため、承認を行うためだけに出社しているという企業は少なくありません。電子決裁システムを導入すれば、出社せずとも申請から承認が行えるため、管理職や承認業務が多い部署でも出社をせずに業務が行えるようになります。
内部統制の強化
電子決裁システムの導入は内部統制の強化にもつながります。なぜなら、承認ルートなどをすべてシステム上で設定できるとともに、「いつ、誰が、どの書類を、どんな操作をしたか」のログが残るからです。
そのため、これまで紙の申請業務で起こりがちだった、改ざんなどの恐れはなくなります。また、万が一起こってしまったとしても、ログを辿ることで速やかに原因がわかるため、強固な内部統制を作ることにも貢献ができます。
電子決裁システムの種類
電子決済システムの種類は以下の2つに分類されます。それぞれがどのようなものかを解説していきます。
・オンプレミス型
・クラウド型
オンプレミス型
オンプレミス型とは自社内にサーバーを設置して、サーバー内に電子決裁システムのソフトをインストールして利用する方法です。
オンプレミス型のメリットとしては、カスタマイズが容易になることが挙げられます。自社の承認ルートの設定や、煩雑化している業務に対応するための機能を装備させるなどが可能になります。また、基本的には社内ネットワークで全て完結するため、高いセキュリティ環境を構築できる点もメリットです。
一方でクラウド型と比較すると導入費用が高くなってしまうため、コスト面では注意が必要です。
クラウド型
クラウド型とは、インターネット環境を利用してシステムを構築する方法です。インターネット環境があれば、どこからでもアクセスが可能でテレワークなどへの対応は容易に行えます。
また、環境を構築する際に、ソフトのインストールを行う必要はありません。クラウドにある電子決裁システムへアクセスを行うという考え方なので、導入も簡単に行えます。自社内にシステムはないため、システム上のメンテナンスや更新を行う必要はなく、常に最新のバージョンで利用ができることがメリットです。
一方で、インターネットを通じて社外からのアクセスが可能であるため、きちんとしたセキュリティ対策を取っていなければ、情報流出などにつながってしまう恐れもあるため注意が必要です。
電子決裁システム導入時のポイント
実際に電子決裁システムを導入する際に考えるべきポイントは、次の4点です。それぞれについて解説します。
・自社の利用範囲を明確にする
・操作性を確認する
・他システムとの連携
・サポート体制の有無
自社の利用範囲を明確にする
電子決裁システムを導入する際には、事前に自社の利用範囲を決めておくことが大切です。なぜなら、利用範囲を決めなければ、どのシステムが対応しているかを比較することができないからです。
営業職の従業員の出張や交通費精算を外出先でもできるようにしたい、紙のコストがかかりすぎているため、申請業務の全てを電子化してコスト削減を行いたいなど、企業によって解決したい課題や利用範囲は異なります。まずは、電子決裁システムで自社がどこまでの業務をカバーしたいのかを決めていきましょう。
操作性を確認する
システムの操作性も大事なポイントです。なぜなら、せっかくシステムを導入しても、操作性が悪ければ、かえって申請に行う時間や手間が増えてしまい、業務効率化などが達成できないからです。
申請を行う従業員が誰でも操作ができるシステムを選択するのはもちろん、システム担当者の専門知識がなくても管理できるシステムであることも重要です。直感的な操作と簡単な手順で申請と承認が行えるようなシステムであるかどうか、ITリテラシーが低い従業員でも扱えるかどうかを基準に考えていくと良いでしょう。
他システムとの連携
電子決裁システムは単独での利用ではなく、他システムと連携することで、より利便性が増していきます。たとえば、すでに利用しているグループウェアなどがあれば、連携を行うことで、電子決裁システムへのログインをする必要がなくなるなど快適性が増します。
また、すでに利用している業務システムや導入している基幹システムなどと、連携ができればデータ連携などがスムーズに行えるようになります。自社で利用しているシステムとの連携ができるか、電子決裁システムを導入することで、他の業務の効率性にも影響が与えられないかなど考えると良いでしょう。
サポート体制の有無
電子決裁システムは導入することが目的ではなく、導入後にきちんと運用していくことが目的です。
導入だけに囚われてしまうと、ただ安いからという理由だけで選択してしまい、まったく効果的な運用が行えなかったということになってしまう可能性があります。そのため、導入後の運用も考え、サポート体制の有無などはきちんと確認しておくことが大切です。
たとえば、サポートを行う会社はどこになるのか、サポートを行ってくれる日時はいつになるのか、どのような方法でサポートを行ってくれるのかなどです。自社の業務体制に合わせたサポート体制であれば、導入後も安心して運用が行えますので、きちんと確認することが求められます。
おすすめの電子決裁システム
最後に、おすすめの電子決裁システムを紹介していきます。ぜひ、自社の運用に合っているかを確認して検討してみてください。
- 承認TIME
- X-point Cloud
- Create!Webフロー
- Gluegent Flow
- shachihata cloud
- ジョブカンワークフロー
- rakumo
- SmartDB
承認TIME
承認TIMEは、SBIビジネス・ソリューションズ株式会社が提供しているクラウド型の電子決裁システムです。
クラウド型のため簡単に導入できるのはもちろんのこと、自社の承認フローを臨機応変に対応ができる自由度の高い設定が可能なことが人気です。また、操作性も直感的な操作で行えるため、簡単に利用することが可能です。無料トライアルも用意されているため、導入前に検証してみても良いでしょう。
公式サイト:
料金:
- 月額330円~/ユーザー
X-point Cloud
X-point Cloudは、株式会社エイトレッドが提供している電子決裁システムです。オンプレミス型も用意されているため、自社の運用体制に合わせて選択が可能です。
X-pointシステムは電子決裁だけではなく、あらゆる業務の電子化が行えることに定評があるため、非常に人気の高いシステムになっています。他システムでX-pointを活用している場合は、連携も容易なため、前向きな導入がおすすめです。
公式サイト:
料金:
- 月額550円/ユーザー
Create!Webフロー
Create!Webフローは、インフォテック株式会社が提供している電子決裁サービスです。
直感的な操作感を実現しているため、紙で行っていた時と同じように簡単な申請が行えます。デザインも考慮されており、誰が見てもわかりやすいため、人気が高いサービスになっています。
また、申請業務の進捗がどこまで進んでいるのかが、アニメーションによって表示されているため、簡単に現状を把握することも可能です。
公式サイト:
料金:
- 月額550円/ユーザー(※最低10ユーザーから)
Gluegent Flow
Gluegent Flowは、サイオステクノロジー株式会社が提供しているクラウド型の電子決裁システムです。
60種類以上のテンプレートが用意されているため、システムへの移行時にも簡単にカスタマイズをして利用することが可能です。また、Google ドキュメントの活用も可能であるため、従来の紙のデザインをそのまま利用したいなどのニーズにも応えることもできます。
公式サイト:
料金:
- 月額300円/ユーザー
shachihata cloud
shachihata cloudは、シヤチハタ株式会社が提供しているクラウド型の電子印鑑および署名サービスです。電子決済で不可欠な電子印鑑に強みをもっており、電子印鑑の作成から捺印までを簡単に行うことが可能です。社内向けの「Standard」と社外との取引に利用できる「Business」が用意されているため、自社の業務体系に合わせて選択できます。
公式サイト:
料金:
- 月額110円/ユーザー(Standard)
- 月額330円/1ユーザー(Business)
※10ユーザー単位での契約
ジョブカンワークフロー
ジョブカンワークフローは。株式会社Donutsが提供しているジョブカンシリーズの一つです。導入企業は1万社を超えており、豊富な導入実績があります。
すでに他の基幹システムなどでジョブカンシリーズを導入している場合は、連携も容易に可能であるため、導入の一番手となるでしょう。
公式サイト:
料金:
- 月額330円/ユーザー(※最低利用価格/月額5,000円~)
rakumo
rakumoは株式会社rakumoが提供している電子決裁システムです。
Google Workspaceと連携することが前提で設計されているため、すでにGoogle Workspaceを導入している企業は利便性の高いシステムであるといえます。電子稟議への対応等が行えるため、カバーできる業務範囲が広がります。
公式サイト:
料金:
- 月額330円/ユーザー
SmartDB
SmartDBは、株式会社ドリーム・アーツが提供している業務デジタル化のプラットフォームサービスです。
電子決裁業務に加え、外部システムとの連携やデータを社内で横断的に活用できるなど、自社の業務効率化が行える機能が揃っています。大企業向けのシステム構成となっており、1,000人以上の大企業への導入実績が豊富です。
公式サイト:
料金:
- 要問い合わせ
まとめ
電子決裁システムを導入することで、自社のデジタル化や業務効率化に大きく貢献します。
しかし、導入することが目的となってしまっては、自社に適したシステムの導入には至りません。そのため、どのシステムが長期間の自社で運用が可能かという視点が大切です。ぜひ自社に合った電子決裁システムの導入を実現してみてください。
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スムーズな入社手続きとペーパーレス化の実現に貢献ができるため、電子決裁システムを導入する際に、一緒に導入するとより効果を発揮します。こちらもぜひ、ぜひご検討ください。