「電子上で締結できる契約書について知りたい」「契約書を電子化する際はどのようなことに気をつけたら良い?」「おすすめの電子契約システムを知りたい」このように悩みを抱えている担当者の方も多いのではないでしょうか?
契約書を電子化すれば、コストの削減をすることができるだけではなく、業務の効率化を図ることもできます。
今回は、契約書を電子化するメリットやデメリット、電子化できる契約書の一例について解説します。契約書を電子化する際に留意すべき法律や電子化する流れについても紹介するので、ぜひこの記事を参考に契約書の電子化に取り組んでみてください。
契約書を電子化する5つのメリット
契約書を電子化するメリットは、主に次の5つです。
・印紙税や事務経費などのコストを削減できる
・労力を削減・効率化できる
・管理体制を強化できる
・契約締結までのリードタイムを短縮できる
・リモートワーク対応が可能になる
印紙税や事務経費などのコストを削減できる
電子契約に切り替えると印紙税が必要なくなるため、その分のコストを削減できます。
一般的に、書面で契約書を取り交わすときには、法律で収入印紙を貼り付けることが義務付けられています。他にも、製本代や封筒代、その事務作業に携わる人の人件費などがかかっています。
収入印紙の金額は契約金の金額や契約の種別によって異なりますが、1件200円前後が平均です。大きなものでは数十万円を超えるものもあります。
1件1件の金額はそこまで大きくなくても、契約の数が多ければ多いほど多くのコストが発生します。建設業や工事業、運送業など、大きな金額の請負契約を結ぶ企業からすると、これらの費用は大きな負担になります。
電子契約だと書面を印刷する必要もなくなるため、紙代やインク代などの事務経費、封入作業を行う人件費などが削減できます。
労力を削減・効率化できる
電子契約はインターネット上で契約の締結や管理を行うため、印刷や製本、宛名書きや投函などの事務作業を削減することができます。空いた時間で別の業務に取り組むことができるため、事務作業の労力軽減と生産性の向上が期待できます。
電子契約システムを他のサービスとも連携させることで、さらなる業務効率化を図ることも可能です。たとえば、顧客管理システム(CRM)と連携させれば、顧客のデータベースから取引先の情報をとってきて、契約書の作成をスムーズに行えるようにします。
他にも、契約書の管理システムと連携させれば、探したい契約書をすぐに検索できたり、期限の管理ができたりします。導入する電子契約システムによっては契約書の管理までできるシステムなどもありますので、システムを選定する際はそういった基準でシステムを探してみると良いでしょう。
管理体制を強化できる
契約書を電子化することで自社の管理体制を強化することができます。
紙の契約書は、原本をファイリングしてキャビネットなどに保存しておくことが一般的です。保存期間が決められている書類もあるため、一定期間保管する場所が必要です。しかし、保管場所を確保するのが大変だったり、どこにどの契約書があるのかどうかをきちんと把握できていなかったりすることもあるでしょう。
電子契約の場合は、基本的に契約書はデータとしてクラウド上に保管します。そのため、保管スペースで悩むことはなくなるでしょう。また、締結した日時や先方の名前などで検索できる機能があるため、目的の書類をすぐに探し出すことができます。
電子契約のシステムによっては、ステータス管理機能があります。そのため、作業の遅延や確認漏れなどが起きにくくなるため、取引先からの信頼も高まるでしょう。
契約締結までのリードタイムを短縮できる
契約書を電子化すると数日で契約の締結が完了するため、リードタイムを短縮できます。
書面契約の場合、契約の締結には多くの段階を踏む必要があります。合意から締結までの流れは次のとおりです。
1. 契約書の原本を印刷する
2. 製本する
3. 押印する
4. 郵送準備をする
5. 送付する
6. 取引先に押印してもらう
7. 返送してもらう
8. 戻ってきた契約書を確認する
決裁者や担当者が不在の場合はもっと日時を要することもあるでしょう。その反面、電子契約の場合は次の流れで契約を締結します。
1. 契約書をWeb上で送付する
2. 内容を確認してもらい、電子署名を押して送信する
3. 戻ってきた契約書を確認する
契約書を電子化すれば、早くて即日で契約を締結することが可能です。数週間かかっていたものが数日で完了するため、スピーディーに業務を進めることができます。
リモートワーク対応が可能になる
契約書を電子化することで、場所や時間を選ばず契約の締結をすることができます。なぜなら、会社の判子の押印や印刷する手間を必要としなくなるからです。
将来的にテレワークを考えている企業は、リモートワークをしながら業務がスムーズに進むよう、電子契約のシステムの導入を進めておくと良いでしょう。
契約書を電子化する3つのデメリット
契約書を電子化するデメリットは、主に次の3つです。それぞれ解説していきましょう。
・契約をしている取引先の理解と協力が必要になる
・システムや業務フローの普及まで時間がかかる
・すべての契約書が対応しているわけではない
契約をしている取引先の理解と協力が必要になる
取引先の理解を得るための交渉や説明をしなければならないことが、電子契約を導入する際のデメリットです。
電子契約は、取引先の理解と協力があって初めて成り立ちます。コストの削減や作業効率化のメリットがあっても、一方的に電子契約に切り替えるのは難しいでしょう。
取引先に同意を得るためには、利用を促すだけではなく電子契約を利用するメリットや法的根拠などをわかりやすく伝えることが大切です。利用するメリットがきちんと伝われば、きっと協力をしてくれるでしょう。
合意を得られなかった場合は、従来どおり紙の契約書で契約を締結する必要があります。電子と紙を並行で利用するため、業務が混ざらないように切り分けて管理することが大切です。
システムや業務フローの普及まで時間がかかる
電子契約書を導入する際の2つ目のデメリットは、システムや業務フローの普及まで時間がかかることです。取引先や組織内で電子契約の利用の仕方が浸透するまでは、サポートしてあげることが必要不可欠です。
取引先や自社の担当者がインターネットに不慣れだったり、ITシステムに抵抗があったりする場合、電子契約の仕組みを理解するのに時間がかかることもあるでしょう。操作方法がわからず、電話やメールを活用しながら説明する手間も発生する場合もあるかもしれません。
事前に使い方を説明しておくことはもちろん、想定されるQ&Aを作成したり、簡易的なマニュアルを準備したりして、いつでも展開できる体制を整えておくことが大切です。
すべての契約書が対応しているわけではない
電子での契約にすべての契約書が対応しているわけではないこともデメリットだといえるでしょう。契約書にはさまざまな種類があり、大多数の契約書が電子上での締結が認められていますが、一部には電子での契約が認められえていないものがあります。
認められているものと認められていないものどちらも扱っている場合は、業務の切り分けをする必要があるため、負担となる可能性もあるでしょう。電子化できる契約書と電子化できない契約書に関しては後述します。
電子化できる契約書の一例
電子化できる契約書の例は次のとおりです。
・業務委託契約書
・顧問契約書
・秘密保持契約書
・売買契約書
・下請法第3条書面
・雇用契約書
・業務請負契約書
・建設工事の請負契約書
・委任契約書
・準委任契約書
・保証契約書
・賃貸借契約書
・代理店契約書
・定期借地契約書
・更新の定めのない定期建物賃貸借契約書
・取り壊し予定の建物の賃貸借契約書
・宅地建物売買等媒介契約書
・マンション管理業務の委託契約書
電子化できない契約書の一例
一方で、電子化できない契約書の例は下記のとおりです。
・任意後見契約書
・事業用定期借地権設定のための契約書
・不動産売買における重要事項証明書
・農地の賃貸借契約書
・訪問販売等で交付する書面
法令により、公的証書とされるものは電子化することができません。
また、これらの契約書の他に、公正証書として任意で契約書を作成したい場合も電子化することはできないため注意が必要です。将来的に電子化が認められる可能性もありますので、法令の改正のタイミングには改正内容をチェックしておくと良いでしょう。
契約書を電子化する際は法律要件に注意
続いて、契約書の電子化について定めている法律を紹介しましょう
e-文書法
e-文書法とは、民間分野において法律によって保存が義務付けられているさまざまな文書に対して、電子文書による保存を容認し、書面の保存等に係る負担の軽減等を通じて国民の利便性の向上を図ることを目的とする法律です。
会社法や商法などに基づき、民間企業において保存義務のある法定文書を対象とした法律です。会計帳簿や請求書、領収書などの財務や税金に関連する書類や、会社関連書類として株主総会の議事録などが対象になります。
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法は、財務省と国税庁が管轄する法律に関する国税関係文書を対象とした法律です。文書の保存に関するルールが定められています。納税に関連する各種の書類の保存について、企業負担を軽減するために作成されました。
電子帳簿保存法ではスキャナ保存をする際のルールと電子取引に関連する文書等の保存要件を定めています。e-文書法との違いは、税務署長から承認を受ける必要があるかどうかです。電子帳簿保存法は、申請をして承認を受ける必要があります。
契約書を電子化する流れ
契約書の電子化を進めるためには、自社の取り扱っている契約書の内容を把握し、必要な機能をもったシステムを選定する必要があります。契約書の電子化を考えている企業は、次の流れに沿って導入を進めていきましょう。それぞれについて詳しく解説していきます。
1. 契約書の内容を確認する
2. 導入する電子契約システムを選定する
3. 取引先と自社社員に操作案内をする
契約書の内容を確認する
まずは、自社で取り扱っている締結している契約書を洗い出し、整理しましょう。どの契約書がどれくらいの頻度で何件発生しているかを確認しておくと、取引先への説明する際の工数なども仮説を立てることができます。
次のポイントを参考に、取り扱っている契約書を確認していきましょう。
- 契約書を締結する管理部門はどこか
- 契約書の保管期間はどれくらいか
- 契約書の閲覧頻度はどれくらいか
- 契約書を確認する人数はどれくらいいるか
- 契約までの流れはどのようになっているか
導入する電子契約システムを選定する
現状を把握できたら、次はどの機能が必要かを検討し、必要な機能を備えているシステムを選んでいきます。標準機能やオプション機能、UI(ユーザーインターフェース)などの使いやすさなどを確認しながら決定していくと良いでしょう。
複数のシステム会社の資料を請求して比較検討をすることで、自社に合うシステムを見つけることができます。システムによっては一定期間無料で利用できるものもあるので、実際に触ってみて操作感で決めることもおすすめです。
取引先と自社社員に操作案内をする
導入するシステムが決定したら、次は自社の従業員と取引先に対して電子契約システムを導入することを周知し、操作の案内をします。後々のトラブル発生を防ぐため、システムを導入したことは事前に伝えておくのがベストです。
システムを導入するに伴って業務フローが変更になるため、社員教育は丁寧に行いましょう。社員が理解していないと契約締結時にミスにつながり、大きなトラブルになりかねません。誰でも気軽に見られる操作マニュアルを作成しておくと良いでしょう。
まとめ
契約書を電子化するメリットやデメリット、電子化できる契約書の一例について解説しました。
契約書を電子化する際には法律の要件を確認し、自社にあった電子契約システムを導入することが大切です。自社にマッチしたものを選ぶことで業務効率化を図ることができます。
当社ディップ株式会社が提供する「人事労務コボット」は、雇用契約書の作成や送付、締結がオンライン上で完結し、作業時間を85%も削減できる人事労務システムです。
スマホ上で書類の確認や署名ができるのでスムーズな契約締結を実現できます。低コストで導入ができるので、「人事労務コボット」にご興味のある方は、お気軽に当社までお問い合せください。