育休延長

育休(育児休業制度)は一定の要件を満たせば、最長2年まで延長できます。育休延長後も、育児休業給付金や社会保険料の免除を受けることが可能です。

育休を延長して国からサポートを受けるには、従業員から申し出を受けた後、会社側が手続きをしなければなりません。事業主都合で延長を拒否すると違法になるため、適切に手続きを行うことが大切です。

今回は、育休延長の要件や期間、会社側が行う手続きについて解説します。育休の延長手続きをスムーズに進めたい方は、最後までご覧ください。

育休(育児休業制度)とは

育休(育児休業制度)とは、親が子どもを養育するために取得する休業のことです。育休中は休業している従業員に対して、国から「育児休業給付金」が支給されます。

育休の対象者は、1歳未満の子どもを養育している従業員です。従業員から育休の申し出があった場合、事業主は原則として拒めません。

ただし、有期契約労働者は次の2つの要件を満たさなければ、育休の対象になりません。

・同一の事業主に継続して1年以上雇用されている

・子どもが1歳6ヶ月に達するまでに、労働契約期間が満了しないこと

参照元:育児・介護休業法 第5条(厚生労働省)

育休の目的は、働く親が仕事と育児や家庭の両立を図ることです。

育休(育児休業制度)は育児・介護休業法で定められており、子どもが生まれてから1歳になるまで取得できます。出産すると産後8週間の産休があるため、産休終了後に育休は開始します。

「保育所の利用が困難である」など正当な理由があれば、育休は1歳6ヶ月または2歳まで延長が可能です。

育休は延長できる?

育休の期間は原則として子どもが1歳になるまでですが、要件を満たせば延長できます。

延長は最初1歳6ヶ月まで延長でき、2回目に2歳まで延長が可能です。どちらの延長も、手続きの際に同じ要件を満たしている必要があります。

延長の要件と期間について、それぞれ解説していきましょう。

延長の要件

育休延長の要件は、1歳から1歳6ヶ月に延長するときと、1歳6ヶ月から2歳に延長するときにそれぞれ確認されます。どちらも確認する要件の内容は同じです。

育休を延長するための要件は、次の2つです。

  • 子どもの1歳の誕生日に従業員本人または配偶者が育休を取得している
  • 休業が特に必要と認められる

休業が特に必要と認められるケースの例は、保育所に入所できなかった場合や、養育予定だった配偶者が死亡や疾病、離婚などの理由で養育できなくなった場合などです。たとえば、入所の意志がないにもかかわらず保育所に入所を申込み、その保育所に入れなかったことを理由として延長を申し出た場合、休業が特に必要とは認められません。

参照元:育児休業給付金の延長申請について(厚生労働省)

いつまで延長できる?

育休は、最長で子どもが2歳になるまで延長できます。

1歳の時点で延長の要件を満たしている場合、1歳6ヶ月に延長が可能です。さらに、1歳6ヶ月の時点で延長の要件を満たしていると、2歳まで延長できます。

子どもが1歳のときに、はじめから2歳まで延長を希望することはできません。育休の延長は例外的な措置のため、1歳と1歳6ヶ月、それぞれの時点で延長の要件を満たしている必要があります。

参照元:「育児休業」の延長を予定されている労働者・事業主の皆さまへ(厚生労働省)

育休の延長を会社は拒否できる?

育休

従業員から育休の延長を求められた場合、原則として会社は拒否できません。事業主都合での拒否は違法になります。

ただし、従業員に問題があり、申請に必要な書類が揃わない場合は例外です。申請の際には、延長の要件の一つである「休業が特に必要と認められる」ことを証明するために、証明書などを添付する必要があります。そのため、従業員が証明書を提出しないと申請ができません。

また、従業員から付記のある「保育所入所保留通知書」を提出された場合も、状況によっては延長の申し出ができません。具体的には、保育所の第一次申し込みで内定を辞退し、第二次申し込みで落選したことが付記されている「保育所入所保留通知書」を受け取った場合です。この場合、第一次申し込みの内定辞退にやむを得ない理由が無いと判断されると、延長の申し出ができません。

育休の延長を会社は原則として拒否できませんが、上記のような状況になると申請ができません。会社の判断で育休を拒否するとトラブルになる可能性があるため、拒否する前に労働局などに相談をしましょう。

育休延長に必要な書類

育休延長に必要な書類は、次のとおりです。

必要書類

・育児休業給付金支給申請書
・賃金台帳や出勤簿など記載内容を証明する書類
・育休延長が必要な理由の確認書類

これらの書類は、育児休業給付金の申請手続きのために必要です。「育休延長が必要な理由の確認書類」は、育休の延長が必要な理由によって異なります。

延長の理由と確認書類をそれぞれまとめると、下の表のようになります。

延長の理由確認書類
保育所による保育が実施されない ※保育所に無認可保育所は含まれない市区町村により発行された証明書など (保育の申し込みを行い、1歳または1歳6ヶ月の誕生日に保育が実施されていないことを確認できるもの)
養育を予定していた配偶者の死亡住民票の写しと母子健康手帳
養育を予定していた配偶者の疾病、負傷医師の診断書
養育を予定していた配偶者との別居住民票の写しと母子健康手帳
養育を予定していた配偶者の産前産後産前産後にかかる母子健康手帳

参照元:育児休業給付金の延長申請について(厚生労働省)

他にも、就業規則などで育休について定められている場合、社内手続きのための申請書がある可能性があります。その場合、就業規則に従って書類を回収しましょう。

育休延長の手続き

育休延長の手続きは従業員から申し出を受けた後、ハローワークと年金事務所または事務センターに対して行います。手続きをしないと育休の延長はできないため、抜け漏れないように手続きをする必要があります。ここでは、育休延長の手続きを具体的に解説していきましょう。

手続きの流れ

・従業員から申し出を受ける
・育休手当延長の申請を行う
・社会保険料免除の延長申請を行う

従業員から申し出を受ける

従業員から、育休延長の申し出を受けます。申し出の受け方は、就業規則に従いましょう。企業によっては申請用のフォームや申し出の期限を、独自に定めている可能性があります。

申請は原則として、延長を開始したい日の2週間前までに受ける必要があります。育休手当の手続き期限が、延長を開始したい日の2週間前までだからです。

具体的には、1歳から1歳6ヶ月に延長する場合は1歳の誕生日の2週間前まで、1歳6ヶ月から2歳に延長する場合は2歳の誕生日の2週間前までです。

従業員から育休延長の申し出を受けた場合、原則として企業は拒否できません。

ただし、有期雇用契約をしている従業員に限って、次の支給要件を満たしていない者は延長の対象外です。

  • 同一の事業主に継続して1年以上雇用されている
  • 子どもが1歳6ヶ月に達するまでに、労働契約期間が満了しないこと

参考:育児休業給付金の延長申請について(厚生労働省)

育休手当延長の申請を行う

従業員から育休延長の申し出を受けたら、育休手当延長の申請を行います。育休を延長すると、育休手当も継続して受け取れます。

育休手当延長の際は育休手当申請の際に提出した書類に加えて、延長する理由を証明する書類の提出が必要です。

延長の理由ごとの確認書類は、次の表を参考にしてください。

延長の理由確認書類
保育所による保育が実施されない
※保育所に無認可保育所は含まれない
市区町村により発行された証明書など (保育の申し込みを行い、1歳または1歳6ヶ月の誕生日に保育が実施されていないことを確認できるもの)
養育を予定していた配偶者の死亡住民票の写しと母子健康手帳
養育を予定していた配偶者の疾病、負傷医師の診断書
養育を予定していた配偶者との別居住民票の写しと母子健康手帳
養育を予定していた配偶者の産前産後産前産後にかかる母子健康手帳

参照元:育児休業給付金の延長申請について(厚生労働省)

育休手当延長の申請書類の提出先は、事業所の所在地を管轄するハローワークです。手続きは郵送や窓口持参の他に、電子申請でもできます。

育休手当を延長した場合、支給金額は休業前賃金の50%になります。支給の上限額は1日あたり15,190円、下限額は2,657円です。ただし、支給下限額は事業主から給与を支払われなかった場合に限ります。

育休手当の延長では、従業員が「休業が特に必要と認められる」という要件を満たしている必要があります。

たとえば、市区町村に「保育所の入所は困難」といわれたため申し込みを行わなかった場合、延長は認められません。この要件を満たすか判断が難しい場合は、従業員とのトラブルを防ぐために、事業所管轄のハローワークに相談しましょう。

参照元:

社会保険料免除の延長申請を行う

従業員の育休延長が決まったら、社会保険料免除の延長申請を行います。

手続き方法は育休をはじめたときと同じで、「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構に提出します。申請により、健康保険と厚生年金の保険料は全額免除されます。

社会保険料免除の申請は、1歳から1歳6ヶ月に延長するときと1歳6ヶ月から2歳に延長するとき、どちらも必要です。申請をしないと、免除期間は延長されません。

社会保険料の免除が終わる月は、育休が終了する日の翌日が属する月の前月までです。その期間は給与のみならず、賞与にかかる保険料も免除されます。

社会保険料免除の延長申請は、事業所を管轄する年金事務所または事務センターに対して行います。申請書類は、郵送や窓口持参、電子申請で提出が可能です。

電子申請や電子媒体申請でわからないことがあった場合、日本年金機構の電子申請・電子媒体申請 お問い合わせ先に相談できます。

参照元:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が育児休業等を取得・延長したときの手続き(日本年金機構)

まとめ

育休は、最長で子どもが2歳になるまで延長できます。育休を延長するには、「休業が特に必要と認められる」ことを証明する必要があります。

事業主は、従業員から育休延長の申し出を受けた場合、原則として拒否することができません。会社の判断で育休延長を拒否すると、従業員とのトラブルにつながる可能性があります。

従業員から育休延長の申請を受けたら、育休手当や社会保険料免除の延長申請をスムーズに行えるように、手順を確認しておきましょう。

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