入社手続きに必要な会社側の対応

採用活動がシーズンレスとなった昨今、アルバイトや正社員の入社手続きが頻繁に発生する会社もあるのではないでしょうか?今回は、入社手続きをスムーズに進めるために事前に用意しておくことから、順を追ったフローについて紹介していきます。これさえ読めば漏れなく手続きを進めることできます。

「毎月のように入社手続きがあって煩雑になっている」「1年に数回だからこそ、いつも手続きに漏れがないか心配になる」そのような人事担当の方にぜひ読んでいただきたい内容です。

入社前の手続き

手続きを2つのフローに分けて把握しておきましょう。入社前の準備と、入社後に行う手続きのそれぞれについて説明します。まずは、入社前に行う5つの業務について確認していきます。

雇用契約書の作成

1つ目は雇用契約書の作成です。雇用契約書とは、会社と従業員がここで働きますという契約をするための書類になります。

実は、雇用契約書は書面で交わす義務はありません。会社と従業員が口頭で約束しただけでも有効にはなるのですが、トラブルの元にもなります。

できれば2枚作成し、捺印してもらった書類を双方で保管しておくようにすると良いでしょう。また、労働条件通知書という条件面を記載した書類と合算して作成することが多いです。

労働条件通知書は、記載しておかなければならない項目があります。

記載項目

・労働契約の期間
・就業場所
・業務内容
・始業時刻と終業時刻
・所定労働時間を超える労働の有無
・休憩時間
・交替制勤務
・休日休暇
・賃金計算方法や支払時期
・昇給の内容

これらの項目については、お互いの認識にズレがないように細かく記載しておきましょう。正社員とアルバイトでも記載する内容が異なります。アルバイトの場合は、有期・無期などの期間やシフト制による時間の明記など書き漏れないようにしましょう。

内定通知書の作成

2つ目は内定通知書の作成です。採用活動を通して「内定」を出した求職者に対して合否通知を行うための書類になります。採用通知書という名称の会社もあります。

内定通知書は、求職者に内定であることを書面で通知するためのもので、フォーマットに決まりはありません。記載の推奨事由は、合否結果、内定の取消についての注意事項や入社までのスケジュールなどについてとなります。

もしも入社前に、準備してほしいことや参加行事があれば一緒に通知しておくと良いでしょう。あとから雇用契約書(労働条件通知書)を提出する場合、内定通知書に労働条件は書かなくても大丈夫ですが、しない場合は内定通知書に労働条件を記載しておいても良いです。

入社承諾書の作成

3つ目は入社承諾書の用意です。内定通知書を企業から送って、受け取ったら入社、というわけにはいきませんので、求職者が内定を承諾したという旨を書類として返送してもらうものになります。フォーマットを整えて企業が用意しておくのが良いでしょう。

入社承諾書は新卒の採用活動で多く利用されます。書類を取り交わした時点で安易な取消ができなくなるため、求職者にとっても不当な内定辞退から身を守る役割があります。次の5項目を用意しておくようにしましょう。

記載項目

・会社の情報
・内定の承諾日
・誓約の内容
・内定者の個人情報
・保証人の情報

保証人は記入依頼をする必要があります。実家が遠方にある求職者もいますので、早めに渡して提出までのスケジュールに余裕を持たせておきましょう。

誓約書の確認・作成

4つ目は誓約書の作成です。誓約書の内容は会社によってことなりますが代表的な内容を紹介します。

誓約書の内容

・経歴に偽りがないこと
・労働条件を順守すること
・業務命令や異動・転勤命令に従うこと
・備品をルールにしたがって使用すること
・情報の秘密を保持すること
・採用活動などで写真を撮影・掲載すること

以上はあくまでも参考内容となります。会社が決めているルールなどについては項目を増やして1枚にまとめておきましょう。後々トラブルにならないように事前にすり合わせておくことは重要です。

法定三帳簿の作成

5つ目は法定三帳簿の作成です。3種類の帳簿をまとめて法定三帳簿と呼ばれています。

労働者名簿

労働者名簿は、労働基準法第107条で作成と保管が命じられています。従業員の性別や

住所・入社日・退職日・死亡の場合その日付などを控える帳簿です。保管しておく期間は、「退職・死亡」の日から3年となります。上記の内容が記されていればフォーマットはないので、会社独自でまとめておくようにすると良いです。

賃金台帳

賃金台帳は、労働基準法第108条で作成と保管を定められています。従業員の賃金について細かく明記しておく帳簿になります。記載必須項目は下記にあたります。

記載必須項目

・労働者氏名
・性別
・賃金の計算期間
・労働日数
・労働時間数
・時間外労働時間数
・休日労働時間数
・深夜労働時間数
・基本給や手当等の種類と額
・控除項目と額

賃金はもっとも従業員とのトラブルに発展しやすい項目となります。「言った・言わない」を防ぐためにも、ルールについてきちんと帳簿に残しておきましょう。保管しておく期間は、労働者名簿と同じく3年です。こちらも特にフォーマットの決まりはありません。

出勤

出勤簿は三帳簿の中で唯一義務化されていない書類です。

  • 使用者が自ら始業・終業時刻を記録した書類
  • 出勤簿やタイムレコーダー等の記録
  • 残業命令書及びその報告書
  • 労働者が記録した労働時間報告書

特に、深夜勤務や残業時間については事実との乖離がないよう注意深く確認しながら残すようにしましょう。

こちらも保管しておく期間は3年です。任意書類なのでフォーマットもありません。

入社後の手続き

入社前にしておく準備が完了したら、入社日を迎えましょう。入社後の手続きには期限が設けられているものも多くあります。4つの手続きについて順番に解説していきます。

社会保険の加入

1つ目は社会保険の加入手続きです。健康保険・厚生年金保険・介護保険・労災保険・雇用保険をまとめて社会保険と呼びますが、今回は健康保険・厚生年金保険の加入について説明していきます。

手続きは、従業員が入社してから5日以内に年金事務所に提出するという期限が設けられています。用意する書類は次のとおりです。

必要書類

・法人登記簿謄本の原本(発行から90日以内)
・個人事業主は事業主の世帯全員分の住民票の原本(発行から90日以内)
・健康保険・厚生年金保険 被保険者新規適用届
・健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
・健康保険被扶養者(異動)届(扶養家族や配偶者がいる場合)

記載するときに、従業員には年金手帳・認印・身分証・扶養控除等(異動)申告書を用意してもらいましょう。入社初日に来社して書いてもらうか、郵送で送付しておく形になります。〆切がタイトなので、郵送の場合は遅れないように気をつけてください。

雇用保険の手続き

2つ目は雇用保険の手続きです。こちら3つの手順を踏む必要があります。

必要書類

・保険関係成立届の提出
・雇用保険適用事業所設置届のハローワークへの提出
・雇用保険被保険者資格取得届のハローワークへの提出

保険関係成立届の提出

まずは、保険関係成立届の提出です。労働基準監督署またはハローワークに10日以内という期日があります。

雇用保険適用事業所設置届のハローワークへの提出

次に、以下の項目を記した雇用保険適用事業所設置届をハローワークに提出します。

記載項目

・法人番号
・事業所の名称
・雇用保険の適用事業所となった年月日
・初めて従業員を雇用した日付
・労働保険番号
・事業の概要
・その年度の1日の平均従業員数
・賃金締切日

雇用保険被保険者資格取得届のハローワークへの提出

最後に、雇用保険被保険者資格取得届を、入社した翌月の10日までにハローワークへ書類を提出する必要があります。こちらは従業員を雇用するたびに提出しなければなりません。

これで一通りの手続きが完了となります。

所得税・住民税の手続き

3つ目は税金の手続きについてです。所得税は、リアルタイムで発生している給与に対して課税される税金です。一方、住民税は前年の所得に対して課税されます。

まずは、所得税の手続きのために、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらいます。中途採用の場合は、給与所得等の源泉徴収票も一緒に回収しましょう。

初任給から翌月10日までに源泉徴収税を納める必要があります。期日に遅れないように回収・提出していきましょう。

次に住民税ですが、前職で収入がある場合、会社が特別徴収に切り替えるために、各市区町村へ「特別徴収にかかる給与所得者異動届出書」を提出する必要があります。特別徴収とは会社が支払いを負担する代わりに給与から天引きしていく方法です。

この手続きには期限があり、過ぎてしまうと自動的に普通徴収で納税することになりますので把握しておきましょう。2つの書類を提出できてようやく納税をスムーズに進めることができるのです。

備品の支給

4つ目は備品の支給です。新入社員が入社したタイミングで、必要な備品を支給してあげましょう。

必要な備品

・パソコン
・スマートフォン
・制服
・イヤホン
・デスク・チェア

業界にもよりますが、オフィスワークであれば上記が一例となります。他にも、会社のシステムアカウントやメールアカウントなども付与する必要があります。筆記用具やメモ帳を用意している会社もあります。もし新入社員の用意が必要なものがあれば事前に告知してください。

また、制服などは事前にサイズをはかってオーダーしておくと良いでしょう。これらが足りなくて業務が進められないということにならないよう、事前に確認しておくことも重要です。

入社手続きをスムーズに進めるコツ3選

入社手続きを会社側がスムーズに進めるためには、3つのポイントを押さえるようにしましょう。手続きはさまざまな分野・提出場所をまたがっているため、自社だけではなく新入社員への段取りも重要になります。

コツ

・事前に書類を郵送しておく
・新入社員に準備書類を告知しておく
・期日を確認しておく

事前に書類を郵送しておく

内定が出たタイミングで、郵送できるものは送っておきましょう。入社初日に来社して目の前で記入してもらう場合、時間を要してしまう上に忘れ物があると完了することができません。

こうした公的書類は正確性も重要ですので、提出する前に間違いがないかダブルチェックを入れる必要もあります。事前に書類を郵送して余裕を持った返信期間を設けておくことで、余計なやり取りを減らすことができます。

新入社員に準備書類を告知しておく

新入社員には、必要な書類について事前に告知しておきましょう。

必要書類

・年金手帳
・住民票
・給与振り込みの口座情報
・源泉徴収票

上記の書類は、すぐに提出できない場合や前職から取り寄せる必要があるものもあります。自宅に書類があるかどうか確認してもらい、ない場合は発行手続きをしてもらうことを踏まえて最初に伝えておくとスムーズに進められます。

作業の最中には、一時的に個人情報を預かるシーンもあります。情報管理には十分気をつけながら対応していきましょう。

期日を確認しておく

手続きごとに書類を提出する場所も期日も異なります。最短で入社から5日以内に手続きを完了させるものがありますので、順番にスケジュールを組んでいくことが大切です。

期日を過ぎてしまうと追加の書類を提出しなければならなくなり、手続きが増えてしまいます。最悪の場合会社に指導が入ることや、未加入による違反につながることもあります。

安心して働く労働環境を整えるためにも、早め早めの行動を心がけてください。

まとめ

入社手続きは人事担当にとって作業時間を大きくとられる煩雑な仕事です。入社する社員が多い企業や、大量に入社する時期には残業をしながら対応するという会社も珍しくないでしょう。

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労働条件通知書・雇用契約書、誓約書、 身元保証書、 内定通知書・内定承諾書などの送付についてもシステム上で一括操作することができます。

また、給与振込先口座や緊急連絡先、通勤手段、緊急連絡先届なども、従業員が入力するだけで簡単に回収することが可能です。回収の有無も一目でわかり、記入漏れを防ぐこともできるため、作業効率を一気にあげられます。情報を電子化することで紛失の恐れもなくなり、トラブルの抑制になります。

気になる方はまずは見積もりを依頼してみましょう。少しでも気になる方は、お気軽にお問い合わせください。