2015年に施行されたマイナンバー法により、日本国内に住民票をもつ全ての人に12桁の番号が割り振られたました。2021年以降はマイナンバーカードが保険証としても利用可能となり、身近なものとなっています。
企業の中でも利用する事が多くなり、管理する体制を整えなくてはならなくなりました。
記事では企業でマイナンバーの管理方法や、中小企業の特例措置についてまとめました。管理するメリット、漏えい時のリスクなども紹介していますので、参考にしてみてください。
企業でマイナンバーを利用するシーン
企業でマイナンバーを利用するシーンは、現状では大きく分けて
- 社会保険の手続き
- 税金に関する手続き
と2つあります。
健康保険や労働保険、年金などの社会保険に関する手続きでは、入社・退社、資格の取得や喪失といったタイミングで、年金事務所や健康保険組合に提出する書類にマイナンバーを記載することになっています。
また税金に関する手続きでも、源泉徴収票の作成において、マイナンバーを記載する必要が出てきます。源泉徴収は年末調整の手続きにも関わってくるため、時期としては年末までに従業員のマイナンバーを管理していかなければなりません。
マイナンバーを利用することでこれらの手続きも円滑に行えますが、マイナンバーの提出は、基本的に任意であることは覚えておきましょう。
従業員のマイナンバーが漏えいした場合の企業リスク
従業員のマイナンバーを収集・管理するうえで、漏えいしてしまった場合は以下のようなリスクが考えられます。
- 企業や取り扱った担当者への罰則
- 社会的信用の低下
- カード再発行の手数料費用
マイナンバー法に基づき、収集や管理を行いますが、取り扱いには法律が定められているため、万が一漏えいしてしまった場合は法律違反となるでしょう。
また企業として、当然漏えいの事実を公表しなければなりません。
それにより、株価の下落や内定者の辞退などが起こりゆる可能性があり、企業としての信用が失われることとなります。
さらに漏えいしてしまうと悪用を防ぐため、番号を変更しなければならず、カードの再発行料金(一人500円)は企業が負担しなければなりません。数が多ければ多いほど多額の費用がかかります。
ルール種類 | ルールの内容(企業がやること) |
---|---|
取得・利用・提供 | 社会保険及び税に関する手続書類の作成の場合に限り、個人番号の提供を求められる それ以外では「取れない」「使えない」「渡せない」 |
保管・廃棄 | 社会保険及び税に関する手続書類の作成の場合に限り、保管し続けることができる また、それらの書類が必要なくなった場合、保存期間を過ぎた場合は速やかに破棄しなければならない |
委託 | 委託先において、委託者自らが果たすべき安全管理措置と同等の措置が行われるよう、適切な監督を行う |
安全管理措置 | 個人番号・特定個人情報の漏えいを防止するため、必要かつ適切な安全管理措置を講じる |
またこれらのルールは中小企業へ向けたものではありますが、従業員規模が100名以下の場合は取扱う数も少ないため、特例措置としてシステム化などは免除となります。
ただし、
- 個人番号を利用する事務実施者
- 他の事業者から委託を受け、マイナンバーを取扱う事業者
- 金融分離の事業者
- 過去6ヶ月の間で取扱う個人情報が1日でも5,000件を超えたことのある事業者
これらの条件に当てはまる場合は除外されますので、確認しておきましょう。
負担軽減のための措置ですが、マイナンバーは個人情報なので、その管理方法、保管や廃棄などにおいて適切な引継ぎが行われていることは必須となります。
人的安全管理措置以外は軽減管理が可能ですので、次の項目で解説していきます。
マイナンバー管理の安全管理措置における中小企業の特例措置
マイナンバー管理においては、「組織的」「人的」「物理的」「技術的」の4つの安全管理措置があり、それぞれに特例措置がありますので、1つずつ解説していきます。
しっかり確認し、適切に運用していきましょう。
組織的安全管理措置
組織的安全管理措置とは、企業という組織の中でマイナンバーを安全に取扱うために対応を定めたものです。
中小企業が行う取り組みのなかで、以下の5種類については特例措置があります。
種類 | 対応内容 |
---|---|
組織体制の整備 | 取り扱う担当者が複数人になる場合、責任者と担当者を区分する |
取扱規程等に基づく運用 | 特定個人情報の取扱状況が把握出来る記録を保存する |
取扱状況を確認する手段の整備 | 特定個人情報の取扱状況を確認するための手段を整備する |
情報漏えい等の事案に対する体制の整備 | 事案発生に備えて、従業員から所属の責任者への報告・連絡体制を整備する |
取扱状況の把握および安全管理措置の見直し | 責任者は特定個人情報等の取扱状況を定期的に確認、点検する |
取扱う担当者が複数になる場合に責任者を立たせたり、常に取扱状況が把握・確認できる状態にしておくなど日頃の管理体制を整えておく必要があります。
また責任者は定期的にこれらの管理がなされているか点検をしておき、万が一情報漏えいが発生した場合には速やかに報告ができるよう整備しておきましょう。
人的安全管理措置
人的安全管理措置は、安全管理措置に関しての従業員を管理・育成するために定められているもので、事務取扱担当者の監督、教育となるため中小企業の特例措置は定められていません。
一般企業と同様の対応が求められるので、定期的に研修会をおこなったり、取扱マニュアルを策定するなどの対応を行います。
企業におけるマイナンバーの取り扱いやリスク対策については、こちらの記事でも詳しく解説していますので参考にしてみてください。
物理的安全管理措置
物理的安全管理措置は、マイナンバー情報の漏えいや紛失といった問題を防ぐためのものです。
中小企業で行う取り組みのなかで、以下の2種類については特例措置があります。
種類 | 対応内容 |
---|---|
電子媒体等の取扱いにおける漏えい等の防止 | マイナンバーが記録された電子媒体や記載された書類を取扱う歳、電子媒体はパスワードの設定、書類は封筒に封入し鞄に入れて搬送するなど、盗難・紛失を防止するため方策を講ずる |
個人番号の削除、機器及び電子媒体等の廃棄 | マイナンバーのデータを削除、記録された電子媒体を廃棄した際は責任者が確認する |
企業でマイナンバーを取扱う場合、パソコンなどの電子機器にて管理する際に、端末の取扱いにも注意しなければなりません。誰でも開けてしまうような状態では万全とは言えないでしょう。端末を使用できる場所も限定的にすることも有効です。書類に関しても、外から見えるような状態で持ち歩くことがないようにします。
またデータを削除した記録を保存したり、管理に使用した電子機器の端末を廃棄する際も、確実に廃棄されたことを責任者が確認するなどの対応が求められます。
技術的安全管理措置
技術的安全管理措置は、パソコン上などのIT技術を利用した管理において、マイナンバー情報の漏えいを防ぐためのものです。
中小企業で行う取り組みのなかで、以下の2種類については特例措置があります。
種類 | 対応内容 |
---|---|
アクセス制御 | 特定個人情報を扱う機器と、取扱担当者を限定し、さらには機器に標準装備されているユーザー制御機能により、情報システムを取り扱う事務取扱担当者も限定する |
アクセス者の識別と認証 | 同上 |
マイナンバー情報を扱う機器がどれなのかを定めておき、その機器を扱う担当者も限定して運用することが望ましいとされています。
システム的にもアクセス制限をかけ、ウイルス対策ソフトウエアを導入するなどの対応をします。
また、インターネット経由で外部に送信する場合も考慮し、データは暗号化する、システムは常に最新の状態にアップデートするなど対策しておかなければなりません。
個人情報保護取引委員会からは、中小企業であってもマイナンバー管理のシステム化が推奨されています。
中小企業がマイナンバー管理をシステム化するメリット
マイナンバーを取扱うための体制を整えることは相応のコストもかかります。そこで取り入れたいのがシステム化です。
中小企業がマイナンバー情報を管理するにあたり、これらをシステム化することで生まれるメリットが3つありますので、解説していきます。
安全管理措置への適切な対応が可能になる
マイナンバー管理システムを利用することで得られるメリットで大きなものとしては、安全管理措置への適切な対応が可能になるということです。
紙媒体で運用していると、紛失・盗難のリスクが高まり、情報漏えいなどの問題も起きやすくなってしまいます。システム上で管理することで、セキュリティ面が強化されより安全性が高まるわけです。
安全管理措置はマイナンバー法で定められた管理の決まりであるため、不適切に取扱うと罰則の対象となっていまします。システム化はそういったトラブルも防げるようになります。
従業員の数が多くなればなるほど、管理体制の強化は必須と言えるので、マイナンバー管理のシステム化を検討しましょう。
ヒューマンエラーを防げる
どんな作業であれ、人為的に行っているとどこかでミスが発生するものです。
基本的に従業員の数だけ扱うことになるので、それを一つ一つ手作業で入力したり、都度確認するとなると、よりミスが起きやすくなります。
管理ツールを導入することで、マイナンバーの登録や削除の確認時の混乱を防いだり、データの盗難や紛失といったヒューマンエラーを防ぐことが可能となります。
またマイナンバー法自体が新しい制度なので、今後法改正があった場合にもクラウド型のシステムであれば自動で対応できるなどメリットは多くあります。
ヒューマンエラーの主な原因や、対策についてはこちらの記事でも解説していますので参考にしてみてください。
ヒューマンエラーはどのようにして起こる?主な原因や対策の具体例を徹底解説
人事労務の業務効率化につながる
マイナンバー管理のシステム化は、人事労務の作業効率化の面で見ても大きなメリットと言えます。
これまでに解説したように、マイナンバーを管理するには相応の人材コストがかかるものです。
取扱う担当者の教育から、情報の収集、管理、活用、廃棄の手順が標準化されることで担当者が変更になる場合であっても、引き継ぎ業務がスムーズに行えるようになります。こうした業務を効率化することでコストカットも可能です。
マイナンバー情報を紙媒体ではなくシステム上で管理することで、手作業で登録したり、書類を破棄する作業や手間を削減することができ、大きく効率化を図れます。
マイナンバーカードをペーパーレス化する手順については以下の記事でも詳しく解説しています。
マイナンバーカードの「ペーパーレス化」とは?メリットや手順を解説
まとめ:マイナンバー管理や業務効率化にシステムが役立つ
マイナンバー制度は今後本格的に様々な所で活用され、その管理にも細かい決まりがあるので担当者には大きな負担がかかります。少しでも作業時間を減らし、ヒューマンエラーを回避するためにはシステム管理は必要となってくるでしょう。
「人事労務コボット」はマイナンバー管理も含め、入社手続きに必要な書類の電子化も行っているシステムです。
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