企業が応募者に対して内定を出すときは「内定通知書」の送付が必要です。内定通知書は単に選考の合否を伝える書類ではなく、法的な役割がある書類です。そのため、正確に作成して適切な管理が必要です。
また、労働条件通知書も人材を採用した際に発行する必要があります。内定通知書と同様に注意点があるため、事前に確認しておきたいところです。
そこで、本記事では内定通知書と労働条件通知書の概要や違いを中心に、書類を出すタイミングや作成時の注意点を解説します。今回の内容を参考に、内定通知書や労働条件通知書の理解を深めて、効率よく対応していきましょう。
内定通知書と労働条件通知書の概要
まずは内定通知書と労働条件通知書の大まかな内容を確認しておきましょう。
内定通知書とは
内定通知書とは、企業が採用した人材に対して「内定」を正式に通知する書類です。「内定」は企業が人材を迎え入れる意味があり、発行すると法的拘束力が生じます。企業としては特別な理由がない限り、内定を取り消すことができなくなります。
その前提をもとに企業は採用した人材に内定通知書を送付します。採用された側が内定通知書の内容を確認して署名と捺印をして返送すると、双方の合意が得られた状態になります。
なお、内定通知書は採用から入社までの期間が長い新卒採用で使用されます。中途採用の場合は企業によって判断が異なりますが、発行する際は法的拘束力がある側面から重要な書類になる点は変わりません。
労働条件通知書とは
労働通知書とは、採用後の労働条件を記載した書類です。法律で発行することが義務付けられており、賃金や労働時間など必要事項を記載しなければなりません。
「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。」
なお、労働条件通知書は2019年4月から採用予定者の希望により電子メールやFAXなどで通知して良いものとなりました。
内定通知書と労働条件通知書の違い
内定通知書と労働条件通知書の違いは、発行が法律で義務付けられているかどうかです。内定通知書は発行すると法的拘束力があるものの、発行自体は法律で義務付けられていません。この点が両者の大きな違いです。
また、記載内容にも違いがあります。内定通知書は、応募に対するお礼や採用内定の通知、同封する書類の案内、内定取り消し事由などを記載します。一方の労働条件通知書は、就業場所や業務内容、労働時間、賃金などを記載します。両者の違いを把握して書面を交付する必要があります。
内定通知書と混同しやすい書類
内定通知書は労働通知書以外にも混同しやすい書類があります。そのなかで「採用通知書」と「内定承諾書」を解説します。
採用通知書
採用通知書とは、企業が応募者に「採用の決定」を知らせる書類です。応募者が入社するかどうかの意思は関係なく、企業側が一方的に通知する書類となります。企業が採用通知書を発行しても、応募者の入社の意思が反映されていないため、法的拘束力はありません。
また、採用通知書には採用試験への応募のお礼や入社日、労働条件などを記載します。内定通知書と採用通知書の記載内容には大きな違いがないため、企業によっては「採用内定通知書」として発行するケースも多いです。
採用通知書と内定通知書を別々に発行する際は、採用プロセスに応じて対応します。その場合は、採用を決定したら採用通知書、応募者の入社意思を確認した後に内定通知書を発行します。
内定承諾書
内定承諾書とは、応募者が企業からの内定を承諾して入社を誓約する書類です。企業が用意する書類であり、応募者や求職者が企業に返送する書類となります。内定承諾書は応募者が入社を約束する書類であるため、企業にとっては内定の証明や内定辞退の抑制につながります。
内定承諾書は企業が内定通知書もしくは採用通知書を応募者に送った後に、応募者から返送してもらうのが一般的です。よって、企業側は内定通知書や採用通知書に内定承諾書を同封する必要があります。
なお、内定承諾書には内定取り消し事由を記載し、応募者本人と保証人の署名と捺印欄を設けます。返送期限を設定して、採用後に備えるケースも多いです。
内定通知書を出すタイミングや注意点
人材を採用する際はさまざまな書類を発行することがあり、それぞれで発行するタイミングがあります。内定通知書においても発行するタイミングを確認したうえで、準備を進めましょう。内定通知書を発行する際の注意点も併せて解説します。
・内定通知書を出すまでは「最終選考合格」とする
・入社日などを記載する
・応募者に回答期限を示す
内定通知書を出すまでは「最終選考合格」とする
内定通知書は最終面接などの選考の最終工程を終了し、採用者を決定した後に送ります。優秀な人材を採用したい場合は、速やかに内定通知書を送付しましょう。ただし、企業の人事担当者は、内定通知書を出すまで応募者に対して不用意に「内定」という表現を使わず「最終選考合格」と伝えましょう。
これは面接官などの人事担当者が応募者を高く評価しても、通常は社内で稟議を通したり採用責任者の了承を得たりする必要があるからです。応募者に「内定」と伝えると、企業側はふさわしい理由がない限り取り消せません。
安易に「内定」と伝えることで、企業に大きなリスクになる可能性があるため、言葉の定義を曖昧にせず正確に伝えてください。
入社日などを記載する
内定通知書には、入社日や内定取り消し事由などを明記します。内定通知書を応募者に送付して承諾が得られた時点で労働契約が成立し、その日時が入社日となります。ただし、内定から入社まで期間が空く場合は、柔軟に対応できます。
新卒者を採用する際は「4月1日」、中途採用の場合は退職者との引き継ぎなどを考慮して決めましょう。「10月から働いて欲しい」と考えるならば「10月1日」と設定しておくと、応募者とのトラブルを防げます。
内定通知書に入社日を記載しないと応募者の都合で、入社日を早められたり遅くされたりするからです。
また、やむを得ず内定を取り消す際に備えて、内定取り消し事由も明記しましょう。内定取り消しの事由は下記を参考にしてください。
- 入社日前日までに前職を退職していない
- 病気などにより正常な勤務が困難になった
- 提出した応募書類に虚偽の内容があった
- その他内定が不適当とする事情が発生した
上記のように社会通念上、内定取り消しを是認できる理由ならば内定を取り消すことが可能です。
応募者に回答期限を示す
内定通知書に直接記載する必要はありませんが、応募者には書類の回答期限を示してください。書類で郵送する際は添え状に記載、FAXや電子メールで送る場合は本文に回答期限を示しましょう。
書類や文面で残す理由は、口頭だけでは明確な証拠となりにくいからです。また、「他社の選考が終わるまで回答を待ちます」と曖昧な期限設定をしたり「書類送付から1ヶ月以内」など長期間に設定したりすることも避けましょう。
他に優秀な人材に巡り合ったときに、先に内定を出した応募者の内定を取り消せなくなるからです。内定通知書の回答期限は1週間程度として、応募者が相談してきた場合に改めて設定しましょう。
労働条件通知書を出すタイミングと注意点
内定通知書と同様に労働条件通知書に関しても、発行するタイミングや注意点を確認しましょう。特に労働条件通知書は、法律で交付が義務付けられており、滞りなく準備する必要があります。
・法律で交付が義務付けられている
・従業員を雇うときに交付する
・雇用形態を問わず交付する
法律で交付が義務付けられている
すでに解説したように労働条件通知書は、労働基準法により交付が義務付けられています。仮に労働条件通知書を採用する人材に交付しなければ、法律違反となります。労働条件通知書を発行しないと、30万円以下の罰金が課せられます。
また「法律を守れない企業」として、応募者や取引先など幅広い方々からの信頼を失うことが想定されます。労働条件通知書の発行を忘れたり意図的に交付しなかったりしないようにしてください。
さらに、法的な理由に関わらず、労働条件通知書は労働時間や賃金など労働者が就労するうえで重要な書類です。必要事項を漏れなく記載して、応募者に納得してもらう必要があります。
従業員を雇うときに交付する
労働条件通知書は、従業員を雇うときに交付します。新卒者や中途採用に関わらず、人材を採用したら必要な書類です。また、当初の労働条件に変更があったときにも改めて発行してください。後々のトラブルを防ぐためです。
なお、新卒者を雇用する際は、内定までに労働条件通知書を交付します。内定通知書に加えて、入社前に具体的な労働条件を案内しましょう。
また、求人を募集する際も労働条件通知書と同等の内容で労働条件を提示してください。掲載欄の都合で全てを明示できなければ、応募者との面接の前に労働条件を示す必要があります。従業員を雇う意思がある際は、事前に労働条件通知書を用意することが大事です。
雇用形態を問わず交付する
労働条件通知書は、雇用形態を問わず交付する必要があります。正社員のみならず、有期雇用労働者、日雇い労働者、パート、アルバイトなど雇用する全ての労働者に交付してください。
ただし、労働時間や賃金などは雇用形態によって異なるため、従業員を雇う際は個別に労働条件を通知する必要があります。契約社員や派遣社員のような有期雇用の場合は、契約を更新するごとに労働条件通知書が必要です。その場合は労働条件に変更がない場合も交付してください。
なお、労働条件通知書では次の内容を必ず明記してください。
- 労働契約の期間
- 就業場所と業務内容
- 始業時刻・終業時刻
- 所定労働時間を超える労働の有無
- 休憩時間や休日、休暇
- 就業時転換に関する事項(労働者を2組以上に分けて就業させる場合)
- 賃金の決定、計算、支払い方法
- 賃金の締日と支払日
- 退職に関する事由(解雇事由も含む)
上記に加えて有期雇用労働者の場合は「昇給の有無」「賞与の有無」「退職金の有無」「相談窓口」を明示する必要があります。その他、従業員とのトラブルを防ぐため、退職金が該当するかどうか、最低賃金、休職などについても記載しておきましょう。
内定通知書や労働条件通知書の作成効率化なら「人事労務コボット」がおすすめ
内定通知書や労働条件通知書は、採用人数に応じて準備する必要があります。企業によっては書面の準備や処理が負担になっているでしょう。そこでおすすめなのが「人事労務コボット」です。
人事労務コボットとは
人事労務コボットとは、入社手続きや雇用手続きのペーパーレス化ができるツールです。WEBによる入社手続きにより、人事担当者や従業員の負担軽減が可能です。導入することで、作業時間や人件費削減にもつながります。従業員や応募者もスマホで対応できるため、これまでのような書面のやり取りが不要です。
機能
人事労務コボットには、次の機能があります。
- 契約書の電子サイン
- 個人情報の取得や変更の管理
- オンライン上での保証人サイン
人事労務コボットは内定通知書や内定承諾書、誓約書、身元保証書などの作成に対応しています。さらに、応募者や従業員からサインが必要な場合であっても、電子サインにより互いに合意できます。契約を締結した書類は、PDFでのダウンロードも可能です。
また、給与振込口座や緊急連絡先、通勤手段、免許証画像などの従業員の個人情報を収集・管理もできます。収集した個人情報はリアルタイムに反映され、変更時もオンラインで対応することができます。
入社時に保証人が必要な際は、保証人に契約書を送信して電子サインによるオンライン承諾にも対応しています。保証人が離れた場所で住んでいてもスムーズな契約になります。
他にもマイナンバー管理、社労士との共同管理、本社と支店での情報共有なども可能であり、人事労務に関する業務の作業効率化に繋げられます。
特徴
人事労務コボットにより、人事労務面の管理をペーパーレス化することで、入社手続きの作業時間を85%程度まで削減できます。従来の入社手続きは、書類の準備や応募者からの問い合わせ対応、受領内容の共有や保管などがあり、一連の作業が完了するまで1〜2週間ほどかかりました。
しかし、人事労務コボットを導入することで入社手続きを1〜3日程度で完了できます。最短即日で入社手続きを完了させることも可能であり、コア業務への集中もできるでしょう。
また、人事労務コボットの管理画面はシンプルでツール関係の操作が苦手な方も使いやすいです。管理画面に従業員の氏名とメールアドレスを入力すれば、必要書類を送信して手続きが始まります。
必要書類を受け取った従業員はスマートフォンやパソコンで、必要事項を入力したり電子サインをしたりして返送するだけです。企業側も従業員も使いやすいツールと言えます。
まとめ
人材を採用するにあたり、内定通知書や労働条件通知書を発行します。内定通知書は応募者と企業が「共に働きたい」という意思をお互いに示す書類です。内容に不備があったり正しい運用ができなかったりすれば、応募者とトラブルになります。労働条件通知書も同様です。
しかし、人材採用に関する各種書類の準備や管理は、企業担当者の負担になりやすいものです。「人事労務コボット」は、入社手続きのペーパーレス化で、作業効率を大幅に向上させます。入社手続きの作業効率を向上させたい場合は、ぜひご相談ください。