身元保証書は入社時に必要

入社時に回収する書類として、身元保証書があります。身元保証書の提出は従業員の義務ではありませんが、会社側が必要と判断した場合、提出を求めることができます。身元保証書の回収により、企業側は起こる可能性のあるリスクを回避できるなどさまざまなメリットがあります。

そこで今回は、入社時の身元保証書の書き方や作成の注意点などを解説します。入社手続きの担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

身元保証書とは

身元保証書とは、従業員から入社する際に提出してもらう書類のことです。身元保証書の提出は法律で定められていないため、義務ではありません。

身元保証書には、「身元保証人」の署名が必要です。身元保証人は、従業員が問題を起こした場合、連帯責任を負います。無断欠勤など従業員と連絡が取れなくなった際も、身元保証人に連絡します。

身元保証書の提出に法的ルールはありませんが、就業規則などに解雇理由として記載しておくことで、提出を義務付けることが可能です。

身元保証書の目的と身元保証人の条件を、詳しくみていきましょう。

身元保証書の目的

身元保証書の目的は、主に以下の4つにあります。

目的

・従業員の身元を確かめる
・保証人に損害に対して金銭的補償をしてもらう
・不正の抑止
・緊急連絡先の確認

従業員を採用する際は履歴書や面接の内容を確認しますが、自己申告のため、虚偽はわかりません。そこで、身元保証人になりすましや虚偽申告がないことを証明してもらいます。

また、従業員が入社後、会社に損害を与えた際に身元保証人に金銭的補償をしてもらう目的もあります。本人に支払い能力が無くても、身元保証人に賠償請求が可能です。例えば、従業員が会社のお金を横領したり、機密情報を漏洩したりした場合、損害賠償請求ができます。

他にも、身元保証人に迷惑がかかるため不正の抑止になったり、従業員本人と連絡が取れなくなったときに連絡する緊急連絡先の確認ができたりします。

身元保証人の条件

身元保証人の条件は法律で定められていないため、企業が設定します。一般的に、身元保証人は「経済的に自立していて、安定した収入がある成人」であることが多いです。なぜなら、従業員が問題を起こした際に損害賠償を請求する可能性があるからです。収入が不安定だと、損害分を補償できない可能性があるため、安定した収入がある必要があります。

企業によっては、従業員と生計を一にしている者の場合、金銭的に支払い能力がないとみて認めない場合があります。また、未成年も金銭的補償ができないため、身元保証人として認めないといったルールを設定できます。定年を超えていて支払い能力が無い場合もあるため、年齢に制限をすることも可能です。

身元保証人の条件は限定しすぎるとみつからない可能性がありますが、条件を定めないと身元保証人として機能しない可能性があります。身元保証人の条件は企業で独自に設定できるため、慎重に条件を定めましょう。

身元保証書は入社時に必要?

身元保証書を提出させることは、会社の義務ではありません。しかし、提出させることで、会社側にさまざまなメリットがあります。

具体的なメリットは、以下の通りです。

メリット

・従業員が問題を起こした際、身元保証人に損害賠償を請求できる
・従業員本人と連絡が取れない場合、緊急連絡先として利用できる
・従業員のなりすましや虚偽申告を防げる

入社後、従業員が金銭の横領や情報漏洩によって会社に大きな損害を与えた場合、賠償請求をする可能性があります。その際に、従業員に支払い能力が無くても、代わりに身元保証人に対して賠償請求を求めることが可能です。

また、従業員本人と連絡が取れなくなり、無断欠勤が続いた場合などの緊急連絡先として利用できます。他にも、従業員になりすましや虚偽申告があった場合、身元保証書を提出してもらう段階で気づくことが可能です。

このように、身元保証を提出してもらうことで、会社側のリスク対策になります。身元保証書の提出は義務ではありませんが、就業規則に記載することで、提出を実質義務付けることは可能です。リスク対策をしたい場合は、身元保証書の提出を入社時に依頼しましょう。

入社時の身元保証書の書き方

入社時の身元保証書の書き方を、次の3つに分類して紹介します。

  • 本人が記入する欄
  • 身元保証人が記入する欄
  • その他の欄

記載する項目に決まりはありませんが、一般的な例を紹介します。

では、身元保証書の書き方の例をみていきましょう。

本人が記入する欄

本人が記入する欄には、以下の項目を記載します。

  • 書類提出日
  • 現住所
  • 氏名
  • 印鑑
  • 生年月日

現住所は、会社に提出する住民票や履歴書などと同じ住所であるか確認します。引っ越しなどにより住所が異なる場合は、誤りがないか従業員に確認しましょう。

印鑑は、認印で問題ありません。書類の内容を確認した証明として、署名や捺印をもらうのが一般的です。

身元保証人が記入する欄

身元保証人が記入する項目の例は、以下の通りです。

  • 住所
  • 氏名
  • 続柄
  • 電話番号
  • メールアドレス
  • 職業
  • 印鑑

職業は、金銭的に補償してもらう場合に支払い能力があるか判断するために記載欄をつくります。印鑑は内容を証明するため、実印で押してもらい、印鑑証明書の添付を依頼する企業もあります。認印か実印かの決まりはないため、企業で設定が可能です。

その他の欄

その他の欄の記載内容は、企業によりさまざまです。

例えば、保証期間を記載します。未記載だと3年間、最長で5年間の保証期間になりますが、企業ごとに保証期間を定めたい場合は記載しておきましょう。

また、損害賠償の上限額の記載が必要です。損害賠償の上限額の記載は2020年4月の民法改正により、記載が必要になりました。記載していない場合、身元保証書の契約内容は無効となります。そのため、どの企業も記載が必要です。

この他の項目も、自社に必要な確認項目がある場合は記載しておきましょう。

入社時に身元保証書を作成する際の注意点

入社時に身元保証書を作成する際の注意点は、次の3つです。

一つずつ確認していきましょう。

賠償の限度額をいくらにするか決める必要がある

身元保証書作成の際には、身元保証人に請求する賠償の限度額をいくらにするか決める必要があります。会社が負った損害を、身元保証人に全額負担させることはできません。

最終的な負担金額は裁判所が決定しますが、賠償の上限額は会社で決める必要があります。なぜなら、上限額の記載が身元保証書にないと契約が無効になるからです。このことは、2020年4月民法改正により、身元保証人を守るために定められました。

賠償の限度額があまりに高いと身元保証人をみつけられず、低すぎると補填できないため意味がありません。そのため、企業ごとに適切な金額を検討する必要があります。

身元保証書を提出させる目的を明確にする

身元保証書を作成する前に、身元保証書を提出させる目的を明確にしましょう。身元保証書の提出は任意のため、拒否される可能性があるからです。身元保証書の提出によって、身元保証人に責任が及ぶため、従業員は慎重になります。

提出後のトラブルを避けるためにも、目的は明確にしましょう。例えば、「緊急連絡先の確認に使用するため」など、従業員が納得できる理由を伝えましょう。

また、目的以外で得た個人情報を使用しないと従業員に伝えることも重要です。身元保証書の提出を従業員に求める際は、身元保証書を提出させる目的を明確にしておきましょう。

身元保証には任期が決まっているため更新が必要となる

身元保証には任期が決まっているため、任期が終わるたびに更新が必要です。自動更新は、認められていません。任期が終了したら更新する旨を身元保証書に記載しても、無効です。

身元保証は、期間に定めがない時は3年、最長で5年と任期が定められています。入社時に身元保証書を提出してもらった後、任期を超えた場合、身元保証書の効果が切れます。更新せずそのまま雇用契約を継続することも可能ですが、大金や機密情報を扱ったりする業務では更新する必要があります。

任期が切れていると、契約の効果がなくなるため、必要なら更新するようにしましょう。

2020年4月の民法改正による変更点は?

2020年4月の民法改正により、賠償額の上限を決めることが必要になりました。賠償額の上限は、企業で自由に設定が可能です。ただし、身元保証書に記載する必要があり、身元保証人に確認してもらわなければなりません。

賠償額の上限を身元保証書に記載しないと、契約は無効になります。上限を定めることにより、身元保証人の破産を防ぎ、守る目的があります。身元保証書への賠償額上限の記載は、2020年4月入社の従業員から対応が必要です。

今まで賠償額の上限を定めずに身元保証書を作成していた企業は、身元保証書に賠償上限額を記載するか、身元保証の制度を無くすか、どちらかの対応が必要になりました。身元保証の制度が無くても会社に支障がないようであれば、廃止を検討できます。賠償上限額を記載する場合は、高すぎず低すぎない金額を設定する必要があります。高すぎると身元保証人が見つからず、低すぎると損害分を補填できないからです。

2020年4月の民法改正では、身元保証人の賠償額の上限を身元保証書に記載することが定められました。

入社手続きの効率化なら「人事労務コボット」がおすすめ

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人事労務コボット」の概要や特徴、機能を具体的に説明します。

人事労務コボットとは

人事労務コボット」とは、入社手続きや雇用契約のペーパーレス化により、業務負担を軽減するサービスのことです。入社手続き完結まで、最短即日で完了できます。

作業時間は紙と比較して約85%削減でき、担当者の業務負担を大幅に軽減することが可能です。そのため、今まで入社手続きに費やしていた時間や人件費を削減できます。

従業員は入社手続きに関する対応をスマホで完結できるため、スムーズに手続きが進められます。契約書の締結や身元保証書のサインも、オンライン上で完結が可能です。

特徴

人事労務コボット」では、入社手続きに必要な書類をほとんどすべてオンライン上で完結できます。書類の作成はもちろん、送信や署名などもオンライン上で行えます。従業員の承諾が必要な書類であっても、オンライン上で電子サインが可能です。従業員側は書類確認や署名をスマートフォン上でできるため、スムーズに契約が進められます。

書類の作成は従業員が入力した情報をもとに作成できるため、担当者は内容を確認するだけで書類を作成できます。作成した書類は管理画面上に保存されるため、PDFでダウンロードが可能です。

機能

人事労務コボット」は、入社手続きに必要なさまざまな書類に対応しています。対応している書類の例は、以下の通りです。

  • 労働条件通知書
  • 雇用契約書
  • 誓約書
  • 身元保証書
  • 内定通知書
  • 内定承諾書

上記の中でも「身元保証書」は身元保証人によるサインが必要ですが、保証人に対して契約書を直接送信できるため、電子サインによるオンライン承諾が可能です。離れた場所に住んでいる保証人に対しても、すぐに書類が送付できます。

この他にも、個人情報に関する書類を回収できます。従業員は、オンライン上に書類をアップロードすることが可能です。会社側は取得したい情報に合わせて、フォームをカスタマイズできます。

書類の作成以外にも、「人事労務コボット」にはCSV出力や社労士との共同管理、マイナンバー管理などの機能があります。また、スマホ操作にも対応しているため、パソコンをもっていない従業員でも対応できます。

入社時に身元保証書の提出を拒否されたらどうなる?

入社時に身元保証書の提出を拒否されても、身元保証書の提出は法律で定められていないため、強制的に提出させることはできません。そのため、従業員は身元保証書の提出を拒否することが可能です。

身元保証書が提出されないと、万が一従業員と連絡が取れなくなった場合や、従業員が会社に損害を与えた場合のリスク対策ができません。身元保証書を提出しないことを理由として採用を拒否するのは、原則として認められません。

ただし、就業規則に「身元保証書を提出しないと解雇する」旨を記載してある場合は、身元保証書を提出しないことを理由に解雇が可能です。身元保証書を提出してもらう目的を明確にし、就業規則に解雇の条件を記載しておくことは、無用なトラブルを防ぐために重要です。

身元保証書の提出を拒否されたときに備えて、企業の就業規則にルールを記載しておきましょう。

まとめ

身元証明書は、従業員が会社に与えた損害を補償したり、従業員本人と連絡が取れなくなったときに連絡したりする身元保証人にサインをもらう書類です。身元保証書を提出してもらうことは、従業員が入社した後のリスク対策として有効です。

身元保証書には、賠償の上限額を記載しなければなりません。このことは、2020年4月の民法改正により定められました。

身元保証書の提出は法律で定められておらず、義務ではありません。しかし、就業規則に身元保証書の提出がなければ採用取り消しをする旨を記載しておけば、提出を拒否された際に採用を取り消しすることが可能です。

身元保証書の作成や回収には、「人事労務コボット」がおすすめです。

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