経理とは、会社にとってかかせない業務の一つです。経理の業務は、日々のお金の流れを記録、管理し、会社の経営陣に状況報告を主にしています。
お金の流れの記録とは、会社の毎日の売上や仕入れ、従業員の交通費精算や保険料支払いなどの処理を行い、帳簿を記録します。この経理が業務で作成する帳簿は会社によってさまざまな紙や電子ファイルなどの記録媒体で記録していると思います。
電子帳簿保存法が改定され、電子取引データについては電子保存が義務化されました。これにより、経理で作成している帳簿の記録媒体を電子化する必要があります。この記事では、なぜ経理業務を電子化する必要があるのかについて解説していきます。
経理の電子化における具体的な業務内容
経理の主な仕事である手形や買掛金、売掛金管理や伝票作成、領収書の作成等がありますが、クラウド会計ツールを利用することによりこれらの作業を電子化することができます。
具体的には、次のようなクラウド会計ツールがあります。
- Money Forwardクラウド会計
- 勘定奉行クラウド
- freee
- 弥生会計クラウド
経理業務の電子化が必須である主な理由
経理業務の電子化が必須である理由には、主に次の2点があげられます。
・業務効率化のため
・電子帳簿保存法の改正のため
業務効率化のため
人口減少により人材確保が今後ますます厳しくなることもあり、業務におけるDXが近年盛んに叫ばれています。DXとは、Digital Transformationの略で、経済産業省のDX推進ガイドラインでは次のように記載されています(一部抜粋) 。
あらゆる産業において、新たなデジタル技術を使ってこれまでにないビジネス・モデルを展開する新規参入者が登場し、ゲームチェンジが起ころうとしています。こうした中で、各企業は、競争力維持・強化のために、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)をスピーディーに進めていくことが求められています。
人材確保が難しくなることを見据えて、経理業務を電子化し、少人数でも業務可能にするために、効率化する必要があります。
電子帳簿保存法の改正のため
電子帳簿保存法は改定されたことにより、電子データで作成したものや、受け取ったものに関しては電子データのまま保存することが義務付けされるようになりました。電子帳簿保存法の改定で、義務化された電子データの中には、経理業務で作成、受領する書類等が多く含まれています。
このように、経理業務で作成する書類等は電子帳簿保存法に関わりがあるため、経理業務を電子化し対応することが必須になります。
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法は、IT技術の進歩に対応し、国税関係帳簿書類を電子データで保存することを認めるという法律で、1998年に施行されました。
ペーパーレス化等の観点から2022年1月1日に電子帳簿保存法が改定され、電子データで受け取ったものは、電子データのまま保存することが義務になりました。今までのように紙に印刷して保存しておくことができなくなったので、経理電子化が必須になりました。
ただし、電子保存の義務化については、企業の準備が進んでいないこともあり、2023年12月末まで2年間猶予されることとなっています。この猶予期間に、各企業の経理業務の電子化を進めなければならないということになります。
電子帳簿保存法の種類
電子帳簿保存法には、3種類の電子データの保存法があります。どのような保存法があるのかについて紹介していきましょう。
なお、紙ベースと同じで、電子データの帳簿書類の保存期間は、法人の場合では、確定申告書の提出期限翌日より7年です。 以降は保存義務がありませんが、7年間は帳簿や書類等を保管しておく必要があります。
・電子帳簿保存
・スキャナ保存
・電子データ保存
電子帳簿保存
帳簿や書類をパソコンで最初から電子的に作成されたものを、ハードディスクやDVD、クラウド上にデータを保存することを指します。電子データを、たとえば修正したり、削除したりした履歴が残るクラウドツール上で作成したものに関しては、タイムスタンプは不要になります。
しかし、それ以外の環境で作成された電子データに関しては、タイムスタンプが必要になるため、作成された電子データはどこで作成されたものであるか意識することが必要です。
スキャナ保存
紙ベースで受領した書類に関しては、現状紙ベースでの保存は可能ではあるものの、紙ベースの書類をスキャナで電子化し、それを電子保存することをスキャナ保存といいます。こちらの保存要件には、いくつかの決まりがあります。
解像度に関しては、25.4ミリメートル当たり200ドット以上(200dpi)相当以上、色調に関しては256階調(24ビットカラー)以上という基準があります。この条件が満たされれば、スマートフォンカメラで書類を撮影したものでも保存可能となります。
また、書類を受領した7営業日以内の電子タイムスタンプが必要になります。そして、この保存したデータを検索できるように検索簿を作成する必要があり、取引年月日、取引金額、取引会社等の情報を紐づける必要があります。
これらの条件を満たさずにスキャナ保存を行った場合はペナルティの対象となるため、注意が必要です。
電子データ保存
こちらの電子データ保存は、メールやEDI(電子データ交換)、クラウド上で受け取った領収書等を、そのまま電子保存することを指します。電子データの改ざんができないクラウドサービスで受け取った電子データに関しては、タイムスタンプは不要となっています。この電子データでの保存も、紙ベースのときと同じで保存義務は7年です。
電子帳簿保存法の対象になるもの
電子帳簿保存法で可能な保存方法は3種類ありますが、この保存方法で保存対象のものは次のとおりです。
帳簿
国税関係帳簿(電帳法第4条1項)は、電子的に保存が可能とされています。国税関係帳簿とは、会計帳簿になります。主に下記の帳簿です。
・仕訳帳
・総勘定元帳
・売掛帳
・買掛帳
・現金出納帳
・固定資産台帳 など
上記の帳簿は、会計ソフトで最初からパソコンで入力・作成が可能であり、修正履歴等が残る会計ソフトの場合は、「電子帳簿保存」での保存が可能となります。その他の場合については、タイムスタンプ等の保存要件が必要となります。
書類
国税関係書類(電帳法第4条2項、電帳法第4条3項、電帳法第7条)に関しても、電子的な保存が可能となっています。
国税関係書類とは、決算関係書類と取引関係書類、取引関係書類(自社発行の写し)になります。それぞれの主な書類は次のとおりです。
・賃貸対照表
・損益計算表
・試算表
・棚卸表 など
・請求書
・見積書
・納品書
・注文書
・領収書 など
上記の書類は、決算関係書類に関しては会計ソフトから、取引関係書類(自社発行の写し)に関しては、販売管理ソフトや帳票作成ソフトから作成可能で、これらも各ソフトに修正、削除履歴機能のあるツールの場合は「電子帳簿保存」での保存が可能です。
なお、「スキャナ保存」が可能な書類は取引関係書類、「電子データ保存」に関しては、メールやEDI、クラウド上で受け取った取引関係書類が保存可能です。
電子帳簿保存法の対象外のもの
電子帳簿保存法において、電子的に保存できないものがあります。それは、手書きで作成した国税関係帳簿(仕訳帳や元帳等)や、国税関係書類(賃貸対照表や領収書等)です。
また、電子データであったものを紙ベースへ印刷し、そこへ手書きで追記した帳簿や書類をスキャナ保存で電子保存したとしても対象外となります。ただし、電子データを紙にプリントアウトしてそこにハンコを押印したり、サインを書いたものをスキャナ保存したりした場合は、電子化データとして認められます。
このように、ハンコ、サインは電子化データとして認められるなど、何が対象外なのかわからなくなった場合は、手書き(サインは除く)をしたデータは電子データとして認められないことを覚えておくと良いでしょう。
経理業務を電子化するメリット
経理業務を電子化することによるメリットは、次の3点が挙げられます。
・ペーパーレス化によりコスト削減につながる
・安全にデータが保存できる
・業務の効率化が見込める
ペーパーレス化によりコスト削減につながる
日本政府は、SDGsにもつながる業務におけるペーパーレス化を推進しています。
ペーパーレス化を行う前の経理業務では、帳簿や書類等をすべて紙で出力し保管していました。紙のコストはもちろん、紙出力した書類を保管する倉庫等の保管場所の場所代が発生します。
ペーパーレス化を行えば、紙代や場所代がなくなり、コスト削減になります。
安全にデータが保存できる
帳簿や書類等を紙でのデータ保管の場合、人的な原因や、災害等でのデータ紛失の可能性が挙げられます。
帳や書類等の紙ベースの経理データを電子データ化し、セキュリティの高いクラウド管理へと移行すれば、上記の理由での経理データの紛失がなくなり、安全にデータが保管できます。さらに、紙とは異なり、クラウドでの管理はいつでもどこでもデータを確認できるメリットもあります。
業務の効率化が見込める
クラウドツールを導入し経理の業務を電子管理することにより、いつでもどこでも経理業務が行える環境を整えることができるため、結果的に業務が効率的に行うことができます。
たとえば、紙ベースで帳簿内容の確認を行う場合、上長へ帳簿を持っていき、確認後その帳簿をまた返却してもらい、ファイル等へ保管する作業があるでしょう。この作業をクラウド化すれば、紙ベースのような帳簿を物理的に移動させる必要はなく、クラウド上で上長の確認を取ることができ、無駄な時間がなくなります。
また、承認作業が電子化ツールで一元化されており、業務がどこで止まっているか等わかりやすく確認できるため、この観点からも結果的に業務が可視化され効率化につながります。
経理業務を電子化するデメリット
経理業務を電子化するメリットがある一方、デメリットもあります。主なデメリットには次のものが挙げられます。
・導入時手間がかかる
・初期費用や月額使用料がかかる
導入時手間がかかる
経理業務を電子化するには、今まで行ってきた経理業務の業務ルーティンを変える必要があります。
まず、ある業務ルーティンを可視化するためには、業務フローを作成し、どの部分に対して、どの電子化ツールを挿入すれば良いか検討する必要があります。
導入する電子化ツールが決まったら、そのツールの使用手順を覚える必要もあります。紙ベースで行っていた経理業務を電子化ツールで行えるようになるには慣れる必要があるため、時間がかかります。
初期費用や月額使用料がかかる
クラウド会計ソフトを利用する場合、多くの場合において初期費用や月額費用が発生します。
クラウド会計ソフトは多くの企業から発売されており、その中にはキャンペーンなどで、初期費用無料や、数カ月間の月額使用料の無料や割引も行われている場合もあります。しかし、紙ベースでの経理業務で発生している人件費(アルバイト人員や、社員の残業代など)は、クラウド会計ソフトを導入し、経理業務を電子化することによる効率化で、その分の人件費がカバーできることになります。
長い目でみれば、クラウド会計ソフトを導入した方が、経費削減になると考えられています。また、クラウド会計ソフトを導入するときは、複数の商品の見積もりを取って比較し、会社にとってベストなものを選ぶと良いでしょう。
まとめ
経理業務の電子化とは、請求書等の紙ベースのものを、電子化してペーパーレス化するということです。
電子化ツールとしてクラウド管理のものを利用するパターンが多いと思いますが、クラウド管理をすることにより、場所や時間を選ばず、経理業務を行える環境ができることにより、業務効率化が進みます。さらに業務効率化も行うことができ、電子帳簿保存法にも対応できるため、経理業務は電子化すべきなのです。
ディップ株式会社では、日本を支える中小企業の皆様に向けて、ワンストップのDXサービスを提供しています。
DXの実践においては、人材確保や教育の壁、DXを前提とした組織改革の壁、そして予算の壁と、さまざまな課題が立ちはだかります。ディップが提案する「one-stop DX.」は、これらの問題を専属のカスタマーサクセスが並走しながら導入と運用をサポートいたします。DXに伴う現場の混乱やシステムの複雑化を回避可能です。
また、ディップではソリューションの提供にあたって、すべて自社のスタッフが顧客対応を行うダイレクトセールスを採用しています。営業とカスタマーサクセス、開発チームが密に連携を取っている営業スタッフが、顧客の潜在ニーズまでを丁寧に把握し、満足度の高いサービスの提供に努めます。
提供するDXソリューションは、バックオフィスとセールスの双方に適用可能です。DX推進を検討の際には、お気軽にご相談ください。