従業員が入社する際の雇用保険手続きの必要書類

新たな従業員を雇い入れる際には、いくつかの正式な手続きを終えてから実際の業務に臨んでもらう必要があります。

特に、雇用保険手続きや各種税務手続きに関しては、従業員が用意するものや、会社が用意するものが別個に存在するため、あらかじめ確認の上混乱や手続きのミスを回避できるよう準備が必要です。

今回は、従業員が入社した際に必要な雇用保険手続きに注目しながら、必要書類や手続きの進め方について解説します。

入社前に必要な書類

入社前に必要な書類は、会社と従業員で異なるものを用意しなければなりません。それぞれで何が求められるのか確認しておきましょう。

会社が用意すべき書類

まずは、新たに従業員を雇う際に会社側で必要な書類について解説します。基本的に次のものをあらかじめ用意しておくことが求められます。

  • 採用通知書(内定通知書)
  • 入社承諾書・誓約書

採用通知書(内定通知書)

採用通知書は内定通知書とも呼ばれ、求職者に対して送付元の会社が入社を受け入れるということを伝えるための書類です。

採用通知書は、あくまで求職者を受け入れる意思があるということを伝えるだけの書類です。そのため、これを送ったからといって入社手続きが完了するわけでもなければ、その日から就業してもらえるわけでもありません。

採用通知書を送付して初めて入社に向けた手続きを進められます。

入社承諾書・誓約書

入社承諾書や誓約書は、採用通知書を送付した求職者に対して、入社の意思があるかどうかを確認するための書類です。

採用通知書を送るだけでは相手の意思を確認できず、タイミングによっては求職者が他の企業へ入社を決定することもあるでしょう。入社承諾書に署名と捺印を求職者からもらうことで、相手の入社意思を確認できます。

また、入社承諾の署名が書かれた返送の代わりに、内定の辞退を申し出る旨が書かれた返信が送られてくることもあります。正式な雇用契約を結ぶまでは求職者を労働者として管理することはできないため、採用活動を打ち切ってしまわないよう注意しましょう。

従業員が用意すべき書類

入社を予定している従業員側で用意すべき書類は、会社で用意するものより種類が多くなります。そのため、あらかじめ必要書類を採用通知書類と合わせてリストアップの上通知の上、漏れがないよう促す必要があります。

主な必要書類としては、次のものが挙げられます。

  • 雇用保険被保険者証
  • 年金手帳
  • マイナンバー
  • 源泉徴収票
  • 給与所得者の扶養控除等申告書
  • 給与振込先届出書
  • 各種手当支給届出書
  • 健康診断書
  • 資格免許証

まず、雇用保険被保険者証や年金手帳については必ず用意してもらう必要があります。雇用保険被保険者証は雇用保険への加入のため必要となり、年金手帳も会社側で保管する場合には手帳をそのまま送付してもらいます。

また、近年は各種保険手続きなどを行う際にマイナンバーを使って申請を進めるため、マイナンバーについても提出を求めます。求職者が以前に何らかの職に就いていた場合、前職での源泉徴収票も年末調整に必要であるため、提出してもらいます。

給与所得者の扶養控除等申告書も、社会保険や手当の計算に必要となるため、忘れずに求めましょう。給与振込先届出書は給与振込の手続きを進めるため、各種手当支給届出書は通勤手当や住居手当を支給するのに必要となります。

健康診断書については事前に準備してもらえれば負担は減りますが、用意できない場合には入社後3ヶ月以内に健康診断を受けてもらえばそれで問題はありません。

特殊な技能を持った求職者を雇う場合、その証明として各種免許証のコピーを提出してもらいましょう。

従業員の入社の際に必要な手続き

ここからは、従業員が入社した際に必要な手続きについて解説します。雇用契約の締結以外は各種手続きの優先度に大きな違いはないため、できるところから同時に進めていくと良いでしょう。

雇用契約書へのサイン

採用が決定した後、すぐ実施すべき雇用契約の締結です。雇用契約書を作成し、従業員と使用者の双方が署名・押印を行う必要があるので、事前に取り決めておいた労働条件に基づく契約を速やかに進めましょう。

雇用契約を締結して初めて、就業に向けた手続きを進めることができます。

保険関連の手続き

雇用契約を締結後、まず必要となるのが、保険関連の手続きです。入社時の保険の手続きは、次の2種類です。

  • 社会保険への加入
  • 雇用保険への加入

どちらも申請漏れがないよう、必要書類を用意の上進めましょう。詳しい手続きの進め方は後ほど紹介します。

税務関連の手続き

税務関連の手続きも、保険の手続きと併せて進める必要があります。入社時に必要な税務手続きは、次の2種類です。

  • 所得税関連の手続き
  • 住民税関連の手続き

これらの手続きについても、後ほど詳しく解説します。

従業員名簿・賃金台帳・出勤簿への記入

新たに社員が加わった際には、従業員名簿と賃金台帳、そして出勤簿という「法定三帳簿」への記入が必要です。

従業員の氏名や性別、業務の種類、入社時期、住所などが書かれた個人情報を記載して、厳重に保管しておきましょう。特に、賃金台帳と出勤簿への記入は全従業員が対象となるため、入社後の速やかな対応を心がけてください。

配置の決定

新たに入社した従業員をどの部門に配置するのかも入社後速やかに決定し、就業を促しましょう。新卒採用の場合は適性を考慮しながら検討することが多いものですが、中途採用の場合にはニーズが明確であるため、ここに多くの時間を割く必要はないでしょう。

必要備品の準備

配置が決定した後、従業員が業務を開始するのに必要な備品の手配を行います。デスクやPC、ICカード、社用車といったハードはもちろん、暗証番号やメールアドレスなど、システム活用に必要な個人IDの提供も急ぎましょう。

社会保険の手続きの概要

続いては、従業員の入社時に必要な社会保険加入の進め方について解説します。社会保険は「厚生年金」と「健康保険」の2つの制度を指しており、正社員の雇用時には必ず手続きが必要です。

社会保険の加入条件

社会保険の加入条件は、正社員とパート・アルバイトの場合で異なります。

正社員の場合、70歳未満の従業員は全員社会保険への加入が必要です。雇用契約を結ぶ社員を対象とする場合、社会保険の加入は実質的に義務と考えておいて間違いありません。

パート・アルバイトを雇う場合、加入条件がやや複雑です。1ヶ月あたりの所定労働時間が一般従業員の3/4以上の場合や、契約期間が2ヶ月以上にのぼる場合などは、社会保険への加入が必要となるため、正社員同様の手続きを進めましょう。

また、たとえ従業員が試用期間であっても、社会保険の加入条件を満たしている場合には就業前に社会保険への加入が義務付けられているため、いかなる条件であれ入社後すぐに申請手続きを進める必要があります。

社会保険加入申請の進め方

社会保険の加入申請は「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」を用意・記入の上、最寄りの年金事務所または健康保険組合・厚生年金基金へ届け出ます。

申請手続きを終えた後は、全国健康保険協会より保険証が会社に送られます。実際に保険証が手元に届くまでには1週間〜2週間程度の日数を要します。

すぐにでも健康保険証が必要な場合には、最寄りの年金事務所に「健康保険被保険者資格証明書交付申請書」を届け出ることで、「健康保険被保険者資格証明書」をその日のうちに発行してもらえます。有効期間は発行から20日間であるため、保険証が届くまでのつなぎとして従業員に提供しておくと良いでしょう。

また、従業員に配偶者や子供がいる場合、「健康保険被扶養者(異動)届」も別途申請する必要があります。被扶養配偶者がいる従業員の場合には、「国民年金第3号被保険者関係届書」の提出が求められるため、これらの手続きを取り違えないよう注意が必要です。

これらの申請書類は、以下の日本年金機構ホームページからダウンロードすることができます。あらかじめ用意の上、申請手続きを進めましょう。

社会保険加入申請の期限

社会保険の加入申請には、期限が指定されています。いずれの手続きも雇用開始から5日以内と義務付けられているため、契約締結後すぐ、あるいは同時に手続きを進めるくらいの対応が望ましいといえます。

雇用保険の手続きの概要

続いて、雇用保険の手続きの進め方について解説します。雇用保険手続きも社会保険同様に、加入対象者や提出期限が定められています。そのため、社会保険と併せて速やかに手続きを進めましょう。

雇用保険の加入条件

雇用保険の加入条件は、次の2点です。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上の雇用見込みがある

正社員の場合にはほぼ確実にこれらの条件に当てはまるので、保険への加入は事実上の義務といえるでしょう。

また、雇用保険の申請手続きにあたっては、先ほど紹介した従業員名簿、賃金台帳、出勤簿「法定三帳簿」の添付が求められます。手続きを進める前にこちらを作成しておくことが大切です。

雇用保険加入申請の進め方

雇用保険の加入申請は、「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに届け出るというものです。届け出る従業員が前職で雇用保険に加入していた場合には、被保険者番号を確認するための「雇用保険被保険者証」が必要になります。

また、雇用保険の加入申請は紙ではなく、電子申請が可能となっています。以下のハローワーク公式サイトより手続きを進められるので、サービスを有効活用しましょう。

雇用保険加入申請の期限

社会保険同様に、雇用保険の加入申請にも期限が設けられています。期限は社会保険よりも遅く、対象者を雇用した月の翌月10日までとなっていますが、迅速な手続きが望ましい点は変わりません。

所得税・住民税手続きの概要

最後に、所得税と住民税の手続きについても解説します。

所得税に関する手続きの進め方

従業員の所得税の支払いは、従業員から給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出してもらい、給与から天引きする形で源泉徴収を行います。従業員には前職の勤め先で発行された源泉徴収票を提出してもらう必要があるため、忘れずに手続きを進めましょう。

住民税に関する手続きの進め方

住民税の徴収は、納税者である従業員が自ら税を納付する「普通徴収」と、会社が自ら給与から天引きを行う「特別徴収」の2種類があります。基本的には、「特別徴収」での納付が求められています。

従業員が中途入社の場合、前の職場から「特別徴収にかかる給与所得者異動届」を受け取っているため、必要事項を記入の上、提出してもらいます。その後、会社側でも記入を進め、市区町村に提出をすることで、納税通知書が後日会社へ送付されます。

「特別徴収にかかる給与所得者異動届」を従業員が前職から受け取っていない場合には、「特別徴収への切替依頼書」を市区町村に提出することで手続きを進められるため、早めに確認しておきましょう。

まとめ

入社時に発生する雇用保険や社会保険の手続きの進め方や条件について解説しました。新たに社員を雇い入れる場合、複数の手続きが発生するだけでなく、大量の提出書類が必要になるため、スムーズに各手続きを管理しながら進行する必要があります。

特に、各種保険の手続きには提出期限が設けられているため、うっかり提出が遅れてしまうとトラブルに発展する可能性があります。そのため、事前に手続きを円滑に処理するための準備を整えておくことが大切です。

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