入社手続き

入社手続きは、従業員が入社する際に必ず発生する手続きです。中でも、社会保険など公的な手続きは期限が定められている場合が多いため、迅速に対応しなければなりません。

そこで今回は、入社手続きに必要な書類や手続きの流れをまとめて解説します。この記事を読めば、準備が必要な書類や手続き方法がわかり、スムーズに入社手続きを行えるようになるでしょう。従業員がいつ入社しても対応できるように、手続きを確認しておきましょう。

入社前に会社側が送付する書類

まずは、入社前に会社側が送付する書類の例を4つ紹介します。

入社前に会社側が送付する書類

・内定通知書
・入社承諾書・誓約書
・雇用契約書
・労働条件通知書

4つ目の労働条件通知書に関しては法律で定められており、従業員に対して必ず提示する必要があります。その他の書類の送付は義務ではありませんが、会社の就業規則で定められている場合、送付が必要です。それぞれの書類の内容を確認していきましょう。

内定通知書

内定通知書とは、内定が決まったことを通知する書類のことです。内定通知書により、会社側の採用の意思を従業員に伝えます。内定通知書には、次の項目を記載することが一般的です。

  • 応募へのお礼
  • 採用が決定した旨
  • 入社日
  • 入社までに準備が必要な書類
  • 内定取り消し事由
  • 問い合わせ先
  • 内定承諾書の送付期限

会社によっては、勤務地や給与などの労働条件も記載します。

送付の目的は、入社して欲しい気持ちを示すことや、トラブルを避けることにあります。口頭で内定を出すと証拠が残りませんが、書面だと記録が残ります。そのため、内定通知書送付により、「内定を聞いていない」といったトラブルを未然に防ぐことが可能です。

内定通知書は法律で定められた書類ではないため、会社側に送付の義務はありません。

入社承諾書・誓約書

入社承諾書や誓約書は、求職者が入社を承諾する場合、企業に提出する書類です。書類の提出をもって、正式な入社受諾となります。

入社承諾書や誓約書の目的は、求職者に入社の意志を示してもらうことです。企業が内定を出しても求職者に入社する意思が無ければ、雇用契約は結べません。そのため、入社承諾書や誓約書によって、改めて入社の意志を確認した後に雇用契約を行います。

内定通知書に対する返事として提出してもらうため、内定通知書とともに送付するのが一般的です。この場合、書類とともに返送用封筒を封入しましょう。

雇用契約書

雇用契約書は、労働者と雇用主の労働契約の内容を明らかにする契約書です。雇用契約書には、次のような労働条件を記載します。

  • 給与
  • 就業場所
  • 業務内容
  • 勤務時間
  • 休日

契約した後で「聞いていた条件と違う」などのトラブルが起こらないように、具体的に記載しましょう。

雇用契約書は企業側と従業員側がお互いに内容を確認した上で署名捺印後、一部ずつ保管します。雇用契約書の送付は法律で定められていないため、会社側の義務ではありません。

労働条件通知書

労働条件通知書は、労働契約を結ぶときに企業が労働者に対して労働条件を示す書類です。労働条件通知書は労働基準法第十五条で定められており、必ず提示しなければなりません。

提示する労働条件には、必ず明示しなければならない事項と定めた場合に明示しなければならない事項の2種類があります。企業は明示しなければならない事項を提示しなかった場合、罰則の対象になります。

参照元:労働基準法第十五条(労働条件の明示)

具体的に提示が必要な労働条件については、「厚生労働省 労働基準法の基礎知識」をご確認ください。

原則として、労働条件通知書は書面で通知する必要があります。ただし、労働者が希望する場合は、電子メールなどでの通知が可能です。

参照元:厚生労働省 一般労働者用モデル労働条件通知書

入社手続きに必要な書類

社会保険の書類

入社手続きに必要な書類は、「従業員から回収する書類」と「会社側が準備する書類」の2種類に分類できます。必要な書類に抜け漏れがあると、入社手続きが進められない可能性があるため、確認しておきましょう。

従業員から回収する書類

入社手続きの際、従業員から回収する書類の例は次のとおりです。

従業員から回収する書類

・雇用保険被保険者証
・年金手帳
・源泉徴収票
・マイナンバー関連書類
・給与振込先の届出書
・健康診断書
・住民票記載事項証明書
・身元保証書
・通勤手当・住宅手当支給申請書
・資格の合格証明・免許証
・健康保険被扶養者(異動)届・国民年金第3号被保険者資格取得届(該当する家族がいる場合)
・卒業証明書

「健康保険被扶養者(異動)届」や「国民年金第3号被保険者資格取得届」は、従業員から回収した後、年金事務所に資格取得届とともに提出します。

入社する従業員が新卒かどうかや、就業規則によって回収する書類は異なります。自社に必要な手続きを確認し、必要な書類をピックアップしておきましょう。

会社側が準備する書類

従業員の入社時に、会社側が準備する書類は次のとおりです。それぞれ、社会保険や雇用保険、住民税の手続きに必要になります。

・健康保険・厚生年金被保険者資格取得届

・雇用保険被保険者資格取得届

・特別徴収切替届出(依頼)書

書類にはマイナンバーや基礎年金番号など、従業員の個人情報を記入するため、取扱いに十分注意しましょう。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の入社手続き

社会保険加入の際は、「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」を作成し、事務センターまたは管轄の年金事務所に提出します。

ただし、加入している健康保険が全国健康保険協会(協会けんぽ)以外の場合は、個別に手続きが必要です。加入している健康保険組合のホームページで、手続き書類や手順を確認しましょう。

「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」には基礎年金番号やマイナンバーを記載するため、基礎年金番号通知書や年金手帳またはマイナンバーカードが必要です。入社日に確認できるよう、従業員に準備してもらいましょう。

入社書類提出の期限は、資格取得日(従業員の入社日)から5日以内です。

従業員に扶養者がいる場合や配偶者が国民年金第3号被保険者の場合は、「健康保険被扶養者(異動)届・国民年金第3号被保険者資格取得・種別変更・種別確認(3号該当)届」を資格取得届とともに提出します。

参考:日本年金機構 第3号被保険者の種別確認の届出は、どのような場合に必要ですか。

社会保険の加入対象者は、70歳未満の正社員と、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上の短期労働者です。

また、上記の要件を満たさなくても、次の要件をすべて満たしている人は被保険者になります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上である
  • 雇用期間が2か月をこえると見込まれる
  • 賃金の月額が88,000円以上である
  • 学生でない

参考:日本年金機構 令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大

他にも、次の要件を満たす従業員は、70歳以上であっても社会保険に加入させる必要があります。

  • 過去に厚生年金保険の被保険者期間を有する
  • 厚生年金保険法第12条各号に定める者に該当しないもの

厚生年金保険法第12条は、こちらをご参照ください。社会保険の加入対象である従業員は、必ず社会保険に加入させなければなりません。

提出方法は窓口持参や郵送、電子申請などです。資本金の額が1億円を超えるなど一定の条件を満たす法人は、電子申請が義務となっています。

参照元:日本年金機構 電子申請の義務化

万が一届出を忘れた場合、資格取得日まで日付をさかのぼって保険料を支払うことになります。そのため、届出に漏れが無いように十分に注意しましょう。

雇用保険に関する入社手続き

雇用保険の加入の際には、事業所を管轄するハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。

今までに雇用保険に加入していたことのある人の場合、「雇用保険被保険者資格取得届」に雇用保険被保険者番号の記入が必要です。そのため、過去に雇用保険に加入していた従業員がいる場合は、入社時に回収した雇用保険被保険者証で番号を確認しましょう。

「雇用保険被保険者資格取得届」の提出時には労働者名簿やタイムカード、雇用契約書など、雇用を証明できるものの添付が必要です。書類の提出期限は、資格取得日(従業員の入社日)の翌月10日までです。

雇用保険の加入対象者は、次の要件を満たす従業員です。

  • 31日以上の雇用が見込まれる
  • 週の所定労働時間が週20時間以上

参照元:厚生労働省 雇用保険の被保険者について

上記の要件を満たす人は、雇用形態にかかわらず雇用保険加入が必要です。なお、日雇い労働者や役員などは原則として加入対象になりません。

雇用保険も社会保険と同様、一定の条件を満たす法人は電子申請が義務となっています。

次のいずれかを満たす法人は、電子申請が義務です。

  • 資本金、出資金または銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人
  • 相互会社
  • 投資法人
  • 特定目的会社

参照元:厚生労働省 2020年4月から特定の法人について電子申請が義務化されます。

住民税に関する入社手続き

住民税は、入社する従業員が特別徴収を希望する場合のみ、手続きが必要です。

特別徴収とは、給与から税金分を天引きして、会社が従業員の代わりに納付手続きを行うことです。住民税は前年の所得に対して課税されるため、過去に所得の無い社員の場合は手続きが必要ありません。

従業員から希望があった場合、普通徴収から特別徴収に変更するため、「特別徴収切替届出(依頼)書」を各市区町村へ送付します。送付する市区町村は、従業員が当年1月1日に住んでいた市区町村です。

参照元:城陽市 住民税Q&A

1月1日以降に引っ越しがあった場合も、課税権は1月1日に住んでいた市区町村にあるため、引っ越し先の市区町村への連絡は必要ありません。

変更手続き後は会社に納税通知書が届くため、毎月従業員の給与から住民税分を控除して、各市区町村に納めます。この手続きを行わなかった場合、住民税の納税通知書は従業員に直接届きます。

源泉徴収票に関する入社手続き

源泉徴収票は、12月31日より前に入社し、前職で収入のある従業員から回収が必要です。具体的には1月1日から入社日までの間に、他社で収入がある従業員が対象です。1月1日から入社日までの間に収入がない場合は、必要ありません。

12月31日より前に入社する従業員は、年末調整の対象者になるからです。年末調整は1年間でいくら給与が支払われたか、いくら所得税を納めたかを確認するために行います。

年末調整の書類には前職の収入金額を記載する欄があるため、源泉徴収票が必要です。忘れないよう入社時に、必ず提出してもらいましょう。

その他の入社手続き

その他の入社手続きの例として、次のものがあげられます。

  • 法定三帳簿を作成する
  • 貸与品を準備する
  • 従業員情報を各システムに入力しておく

法定三帳簿とは、「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」のことです。法定三帳簿の作成は、労働者を雇用する会社の義務となっています。法令で記載する項目が定められており、作成後は一定期間の保存が義務付けられています。

また、従業員への貸与品の準備が必要です。貸与品には名刺や社員証、ノートパソコンなどがあります。

他にも、給与計算や経費精算などでシステムを利用している場合、各システムに従業員情報を入力する必要があります。企業ごとに必要な対応は異なるため、確認しておきましょう。

社会保険や雇用保険の手続きに不備があったときの対処法

年金手帳や雇用保険被保険者証を紛失してしまった場合、無料で再交付が可能です。

令和4年(2022年)4月から年金手帳は基礎年金番号通知書に切り替わったため、年金手帳を紛失した場合、基礎年金番号通知書が再発行されます。基礎年金番号通知書を再交付申請すると、原則として日本年金機構で管理している住所宛てに届きます。

本人が窓口で申請する場合は、申請者が本人だと確認できる身分証明書の提示が必要です。事業所が本人の代わりに申請することも可能ですが、申請書に個人番号または基礎年金番号を記載する必要があります。

参照元:日本年金機構 基礎年金番号通知書や年金手帳を紛失またはき損したとき

日本年金機構 年金手帳や基礎年金番号通知書をなくしたのですが、再発行はできますか。

雇用保険被保険者証を紛失した場合、ハローワークや電子申請、郵送で再発行申請が可能です。ただし、前職を退職後7年以上経過している場合、雇用保険の被保険者番号はハローワークのデータから消去されています。この場合、再発行の手続きはできないため、新たに発行の手続きを行います。

提出漏れがあった場合、資格取得届の提出を速やかに行います。通常の届出とは異なり、資格取得届とともにさかのぼる期間の賃金台帳や出勤簿が必要です。保険料は、資格取得日にさかのぼって支払うことになります。

雇用保険は原則2年までしかさかのぼれません。ただし、雇用保険料が給与から天引きされていたことが確認できる場合は、2年を超えた期間についても加入できます。

参照元:厚生労働省 ~雇用保険の加入手続き漏れの是正期間が変わります~

まとめ

入社手続きに必要な書類や手続きの流れについて解説しました。従業員が入社する場合、毎回入社手続きが必要です。

手続きが遅れたり、抜け漏れがあったりすると、従業員やその家族に迷惑がかかる可能性があります。そのため、あらかじめ必要な書類や手続きの手順を確認しておきましょう。

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  • 誓約書
  • 身元保証書
  • 内定通知書・内定承諾書
  • 従業員情報登録票
  • 給与振込口座申請書
  • 通勤手当申請書
  • 緊急連絡先届

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